Quantcast
Channel: 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・
Viewing all 323 articles
Browse latest View live

6月下旬特選映画【17】★映画のMIKATA「TAP」★映画をMITAKA

$
0
0




 

  6月下旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、今月6月は、自殺映画ちょっと今から仕事やめてくる』、映像詩のような味を醸している作品、『は、河瀬直美監督しか撮れない映像だなーと想わせました。期待を裏切らない山田洋次監督の喜劇映画『家族はつらいよ2』、能狂言のような『花戦さ』、韓国映画のリメイク版『22年目の告白-私が殺人犯です-』、シリーズの最終章ともいえる『LOGAN/ローガン』、人妻の不倫を流行語にまでした『昼顔』、タップダンスとショービジネスの光と影を映像にしたTAP THE LAST SHOW』…通算で8本を観賞しました。その中で、下旬に選んだ特選映画1本は、水谷豊監督&主演の『TAP THE LAST SHOW』でした。映画のラスト場面でのタップショーは、迫力のある舞台でした。あの数分間のタップショ―だけでも見る価値は有ります


今日6月23日は戦後72年、「沖縄慰霊の日」だった。この日には沖縄戦最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式が行なわれました。私も先ごろ観光旅行でしたが、「平和記念公園」に立ち寄りましたよ。沖縄県の翁長雄志知事は、辺野古阻止「不退転」の平和の誓いを読み上げました。それにしても、追悼式には、安倍晋三首相や衆参両院議長ら約4900人が出席して、犠牲になった約20万人の戦死者の冥福を祈り、1分間の黙とうを捧げました。どうせならば、沖縄だけの特別な休日「慰霊の日」にせずに、日本全国の「慰霊の日」の休日にすればいいのにーナ!!! でもね、安倍晋三の米軍基地の「負担軽減」に関する演説の中の、「確実に結果を出す決意だ」という言葉は、沖縄県民の心情と民意を蹂躪する白々しく厚顔無恥な言葉でしたーネ。


ニュース番組は、海老蔵の妻、小林麻央さん(享年34)が、がん闘病の末に亡くなった訃報を繰り返し報じ、特番キュメントとしても放送していますが、24万人の沖縄の戦死者の一人一人の「死」もまた忘れられてはいけないですーネ。米軍基地問題に取り組んだ沖縄県元知事大田 昌秀の意図も、沖縄戦で亡くなられた米軍兵士も含めて、全ての氏名を刻んだ「平和の礎」も、そんな平和への希望があったのではないのかーナ。

 
1


1995年、5件の連続殺人事件が起こったが、犯人は逮捕されることなく時効を迎え、手がかりもなく迷宮入りとなった。がある日、曾根崎雅人(藤原竜也)と名乗る男が、犯人しか知り得ない事件の真相を綴った手記「私が殺人犯です」を出版する。、時効が撤廃された日本の司法制度の邦画では、時効成立の「時間」と事件の発生した「時間」をめぐり…、残虐な殺人という罪が消える時効制度のからくりの理不尽さと矛盾に世間は非難を浴びせ、連続殺人犯を許せない事件被害者の神経を逆なぜし、尚更に犯人への憎悪と嘆きを募らせた。妹がその事件の被害者であり、事件捜査の途中で先輩刑事をむざむざ殺された担当刑事の牧村航(伊藤英明)と、警察関係者と、その殺人事件の記憶を共有する世間を巻き込んで、社会が騒然とすればするほど、本はベストセラーとなって売り上げを延ばしていった。事件はセンセ―ショナで奇妙な「空騒ぎ」となった。1本目の作品は、謎の先に意外などんでん返しの真犯人を暴くサスペンス映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』 (2017年、入江悠監督 )でした。


入江悠監督の作品の中で、私は日々ロック』(2014年公開)しか観賞してませんが、面白いと認める作品もこれしかありませんでした。それにしても、この「22年目の告白」は、ストーリも謎解きも伏線とドンデン返しもよく練れているので拍手したいくらいの傑作でした。ただ、映画そのものが韓国映画『殺人の告白 (2012年、チョン・ビョンギル監督&脚本)のリメイクだそうなので、私は韓国映画をレンタルショップで借りて見ました。確かに初めの画面は暗くカメラワークが巧くないです。また、連続殺人事件の犯人だと告白するイ・ドゥソク(パク・シフ)と、犯人をずっと追いかけているチェ刑事(チョン・ジェヨン)と、事件に絡む周辺の人間関係がストーリの進展を見てても、すっきりしないです…ね。白い仮面を被った真犯人の仮面をはいで、逃走する殺人犯を車で追いかけるカーチェイスは、やや漫画チックで幼稚でした。これを見ている日本人監督ならば、「私ならばもっとスリリングにサスペンス映画らしく、より傑作に制作できる」…と思うだろうーネ。ただ、韓国映画の特色は、やはり殺人や犯罪映画を撮らせたら韓国の監督の着想は非常に面白い、発想は超一流ですね。でも映画製作のスキルそのものがまだ未熟のような気がしました。リクメイク版とは言え、日本映画が勝っていました。でもねでも、こんな映画を原作脚本監督に至るまで、日本人スタッフでオリジナル制作であったらな…と残念に思いました…!!!

  

2

2本目は、数々の続編シリーズで映画化された米コミックのヒーロー「X-MEN」(2000年、ブライアン・シンガー監督)のその後の近未来のミュータントの最終章ともいえる『LOGAN/ローガン』 (2017年、ジェームズ・マンゴールド監督) でした。この作品では、遺伝子の突然変異により超人的パワーを持つミュータントの中でも肉体派の戦闘員ローガン「ウルヴァリン」(ヒュー・ジャックマン)は、人工的に実験室で製造されたミュータント「X-24」との戦いによって息の根を止められ、肉体組織の治癒能力も衰えて死亡する結末で終わった…。初めはよれよれの老いた酔っぱらいの姿で登場、メキシコの車泥棒を相手に殴られ倒され銃弾を受ける…。最早、ローガンは送迎ドライバーとしてミュータントが絶滅の危機に直面しする時代に、メキシコ国境近くの工場跡で生き残ったチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)とキャリバンたちと隠れてひっそりと暮らしていた。


25年が経った2029年に、ローガンと瓜二つの両手に爪を持つ実験室で遺伝子操作と人工授精によって誕生したローラ(ダフネ・キーン)という11歳の少女が、ノースダコタ州にある「エデン」まで送り届けて欲しいという、その研究室の看護師だった女性と共に助けを求めて現れる。チャールズはミュータントが生き残るための唯一の希望であると、ローラと研究室によっての誕生したミュータントの子どもたちの運命を托した。最後の力をふり絞ってローガンは、人間兵器として人工的にミュータントを製造する企業のザンダー・ライス博士 たちと戦う…。


ローラは、特殊な弾丸でX-24を射殺してローガンを窮地に追い込まれた戦いを終わらせた。が、致命傷を負ったローガンはその場で亡くなる。石を積み上げた墓標の前でローラは『シェーン』の一節を引用して弔辞を述べ、墓標の十字架を「X」の形に置き直して国境の山を超えてゆく…。「X-MEN」シリーズの中で一番見応えのある名作でした。


3

 

夫がいる身でありながら妻のいる東京理科大の講師・北野裕一郎(斎藤工)と惹(ひ)かれ合い、不倫関係に陥った笹本紗和(上戸彩)が主人公。不倫の結末は、二度と会わないという誓約書を交わして、佐和は北野と離れ夫とも別れて、杉崎尚人(平山浩行)が経営するレストランで見習い調理師として働く…。3本目は、ある日もはや記憶から忘れかけていた紗和の前に、公民館で蛍の講演に来た北野と再会、肉体の疼きと喜びが再燃する、TVドラマの続編で、不倫映画の代名詞のような『昼顔』(2017年年、西谷弘監督、井上由美脚本)でした。

 

私は正直言って、2014年7月17日~9月25日まで、フジテレビ系で放送されたTVドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(西谷弘演出、井上由美脚本、プロデューサー:三竿玲子、清水一幸、)を一度も見たことがなかったです。ひょっとしたら、人妻になった上戸彩のベットシーンと露骨な濡れ場が見れるのかな…といやらしい好奇心で見たのですが、二人の肉体が絡み合ったベットシーンは一回だけでした。映画は、TVドラマ11話で離婚した笹本紗和のその後のストーリから始まる。紗和も教師の北野裕一郎も同じ配役で、監督脚本も同じスタッフなので、TVドラマの続編であり、結末でもありました。エンディングストーリは、二人の不倫がめでたく結婚寸前へと近づいた時、裕一郎は、離婚届を手にして妻・乃里子(伊藤歩)と自動車ごと崖下へ転落して、紗和のいる白浜の盆踊りの夜に亡くなる…。


この映画を見ると「私も不倫したい!!!」と願望する男は多いかもしれませんーネ。危ないあぶない。これを読んでいる方に、今、人妻と不倫している男性はいますか???或は、一回の不倫で、その妻子ある男性を忘れられずに、思い出し疼き、体を熱くしている女性はいますか…???でもねこの映画は、不倫の末の幸福の刹那と、不幸な悲劇の終焉…、不倫は結局に悲劇の破綻で終わる、と言う教訓めいた戒めの結末を演出していましたーネ。

 

 4

 

晴れ舞台から落下する負傷事故で、大事な足に後遺症の残る怪我をして、今は足を引きずり酒におぼれる日々を送っていた、落ちぶれたが、しかし元は天才タップダンサーの渡真二郎(水谷豊)は、負債を抱えた旧い劇場支配人の毛利(岸部一徳)から「最後に最高のショー」を演出してくれと依頼された。4本目は、異色のタップダンス映画〚TAP THE LAST SHOW』(2017年年、水谷豊監督、両沢和幸 脚本、HIDEBOHダンス監修)でした。


最早『相棒』シリーズの杉下右京役に飽き飽きした私は、水谷豊が初監督と主演を務めた映画が公開されたというので、早速に見に行きました。どんな作品で水谷豊かなどんな役柄でどんな演技をするのかな…と、興味津々でした。


タップダンスをテーマにショウビジネス界の華やかさと厳しさ、それでもダンスに生活と生き甲斐と運命を賭ける若いダンサーたちの姿を描いた作品で、水谷自らが零落した天才タップダンサーを演じています。ただーネ、酒浸りになって「ジャックダニエル」の酒瓶をラッパ飲みする姿を、何度も何度も繰り返し映していたが、チョットあのシーンは余りに過剰でなかたかな…。でも、映画のラスト場面でのタップショーは、迫力のある舞台でした。あの数分間のタップショ―だけでも見る価値が有りましたでもね、ラストショーの後で一人劇場から外へ歩き、ベンチ劇場支配人の毛利と幻想的な会話を交わす一シーンは、やや演出し過ぎているのではないかな…。映画コンテでは、最後の一枚は絵になるのですが、映像にすると蛇足のように映りました。

 

あるインタビューで、映画にしたいと構想を長い間温めていたタップにひかれた理由について「…人をそこまで(魅了)させるものを持っているんです。普通、タップというと足の動きを想像されると思うのですが、この映画のように、あらゆる曲に対応できる動きがあり、別世界に連れて行かれてしまうようなショーにもなる。この作品でタップのイメージを変えられたら…」と、抱負を答えています。私も懐かしいジーン・ケリーとスタンリー・ドーネン監督によるミュージカル映画タップダンス映画の代表作『雨に唄えば』をもう一度見たくなりました。


この映画「TAP THE LAST SHOW」のロケ地は、東京・鶯谷にある「ダンスホール新世紀」の可能性が高いそうです。このホールは、1996年の映画「Shall we ダンス?」の舞台モデルになったロケ地だそうです。





 

下記addressは、毎週木曜日の夜20:30~20:56にひっそりと開かれる映画批評シアター、沖縄・那覇からFM電波で放送される「なーりーの星空シアター」のサイトです。映画で毎日の生活がよりキラキラと楽しいものになすように・・・と願いを込めた映画情報で、ポッドキャストでも聴けます。短い時間なので、ほっと一息する仕事の合間、休憩時間にスマホで聴くのにイイです…よ。

次回6/29は、太平洋戦争の沖縄戦、浦添城址の南東にある「前田高地」と呼ばれた日本軍陣地を題名とする映画『ハクソー・リッジ』のコメントが放送されます。残念ですが、この放送もこの回が最終回だそうです。沖縄の放送局らしい、しかも最終回らしい映画です。私は、映画の情報番組としてはイイトークだな…と思て応援していたのですが、重ね重ね残念ですーネ。もしも、「もっと放送を続けて…!!!」という声がメールでeiga@fmnaha.jp 宛にたくさん届いたら、継続されるかもしれませんよ。


http://www.fmnaha.jp/podcast_detail.php?program_id=68 




尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…


7月上旬特選映画【18】★映画のMIKATA「ハクソー・リッジ 」★映画をMITAKA

$
0
0

7月上旬の特選映画をアップロードします。今回3本を映画館で観賞、その中で選んだ特選映画1本は、メル・ギブソン監督の『ハクソー・リッジ  HACKSAW RIDGE』でした。一部にはこの作品に対して、…日本国内の宣伝では配給会社のキノフィルムズが『ハクソー・リッジ』が沖縄戦を描いた映画であることを巧妙に隠していた。…という批判もあります。でも、アメリカ人監督による対日戦争の激戦地の凄惨な地獄を描いたという視点、「良心的兵役拒否」しという戦争の新しいヒーロを描いたという視点から、私は、メル・ギブソン監督を評価したいです。





1

第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはいけないという「セブンスデー・アドベンチスト教会」の信仰に従って、ライフルを手にする軍隊の教練でも、決して「人を殺さない」という信念を頑として貫き、「良心的兵役拒否」変えようとしなかったです。彼は、人の命を奪う「人殺し」を禁ずる宗教の教えを守ろうとする。が、抵抗を守ろうとした先に最終的に軍法会議にかけられ、彼の戦争参加の唯一絶対の意志である衛生兵として戦場に赴くことさえ許されなかった。その上、休暇を取って妻(テリーサ・パーマー)となる看護師のドロシー・シュッテとの結婚式にも兵舎を出られなかった。しかし、第一次世界大戦に参戦し、過去の戦争体験のトラウマ、人を殺し人が死ぬことに悩んでいた父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、アメリカ合衆国憲法修正条項によりデズモンドの良心的兵役拒否は擁護され、武器の携行なしに激戦地・沖縄の戦場に向かうことが許可された…。非戦闘への軋轢も大きいが、流石に、南北戦争で自由を勝ち取った国家ですーネ。

1本目は、1945年5月、先発部隊が6回登って6回撃退された末に壊滅した沖縄の激戦地「ハクソー・リッジ(ノコギリ崖)」と呼ばれる断崖の先に広がる高地に衛生兵として第77師団と共に前線に上陸した衛生兵・デズモンドを主人公とする戦争映画『ハクソー・リッジ  HACKSAW RIDGE』(2016年、メル・ギブソン監督)でした。沖縄戦において、浦添城址の南東にある「前田高地」と呼ばれた日本軍陣地で、北側が15メートルの急峻な崖地となっているので、米軍がこの崖につけた呼称(Hacksaw=弓鋸)でした。彼はこの前線で瀕死の仲間を背負って崖を降り、15人の戦友の命を助けて、後日名誉勲章を授与されたという。

 

これは俳優としてもに近未来&アクション映画『マッドマックス』(1979年公開)や、刑事&アクション映画『リーサル・ウェポン』(1982年公開)シリーズなどに出演したメル・ギブソンの監督映画ですが、監督としても、アカデミー監督賞を受賞している『ブレイブハート』(1995年公開)や、私財30億を投じてイエス・キリストが張りつけになった原始キリスト教徒とその時代を描いた歴史&宗教映画『パッション』(2004年)を製作する実績も残している。その制作手法と歴史解釈と表現方法は大変意欲的で、独特の視点を持っているようだ…と、感じさせます。この「ハクソー・リッジ」も戦争映画としては、珍しい「良心的兵役拒否」の平凡なアメリカ青年の「非アメリカ人ヒーロー」と、沖縄描いたという点で、大変ユニークですーネ。彼自身も避妊や妊娠中絶反対を表明する熱心な「純潔運動家」として知られているカトリック教徒であるようです…。


ただね…、この映画はアメリカ人の視点で描かれた太平洋「戦争」であり、アメリカ人の視点で描かれた敗戦間近の激戦地「沖縄戦」の新しいアメリカの英雄の姿ですーネ!!!でも私は残念でたまりません…。この沖縄の戦場を、何故どうして?日本人監督が映画化できなかったのだろうかな…という、大きな疑問を持つからです。ベトナム戦争や中東戦争等々で直接に徴兵され、他国と戦い、肉身兄弟を戦地で亡くしたアメリカ人の方がリアルに「戦争」を映画化できるのかも知れませんし、更に、アメリカ人にとって個人の運命を左右する生き死の大きな問題であり、身近なテーマなっているのかもしれない。クリント・イーストウッド監督の父親たちの星条旗/FLAGS OF OUR FATHERS」(2006年)、「硫黄島からの手紙」 (2006年) は、終戦記念日に太平洋戦争の代表作として日本のTV上映されるくらいですからーネ、呆れます。今年2017年の8月15日にはどんな映画がTV放映されるだろうかな…。日本の軍国右傾化の指標として、私は注目しています。


岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」(1967年、)、そのリメイク版の原田眞人監督の「日本のいちばん長い日」(2015年)は旧作以上の斬新な解釈でした。軍部の財宝を隠匿する終戦の日本軍を描いた浅田次郎原作、佐々部清監督の「日輪の遺産」(2011年)も面白い戦争映画でした。フィリピンの前線を描いた敗戦色濃い東南アジア前線を描いた市川崑監督の「野火」(1959年)は、人肉映画としても話題作でした。そのリメイク版の塚本晋也監督の「野火」(2015年)も独特の傑作でした。原爆の広島を描いた佐々部清監督の「夕凪の街 桜の国」(2007年)も、また、故郷へ手足を失って帰京、村の軍神となった兵士を描いた若松孝二監督の「キャタピラー (2010年) も、戦争における軍隊と人間の歪み表現した名作として後世に残る作品でした。最近ヒットしたアニメの戦争映画が終戦記念日にTV放映されるかな…?


2

向井理の祖母・芦村朋子さんが亡き夫・吾郎(向井理)と苦難を過ごした戦中の中国と戦後の混乱期の日々と半生を書き残した「何日君再来」と題した手記を祖母はパソコンに残した。2本目は、深川栄洋監督がその手記を映画化した『いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~』(2017年、深川栄洋監督)でした。向井自身が祖父役と、大学生の孫役を演じ、若い時の祖母役・芦村朋子を尾野真千子が、81歳になった老いた母の姿を野際陽子が演じた。野際にとっては遺作となった作品でした。第二次世界大戦戦争を経験した日本の庶民の誰もが同じように経験して、同じ辛酸を舐め、「戦争はイヤだ」と同じように感じ、次の世代にその気持ちを是非とも残したいと思った、「庶民」の共通認識と歴史観に違いないーナ…。この映画を見て私は、そんなことを考えました。


 この作品で、明治の日本人との違を一番感じました。村に伝染病を蔓延させた責任を取って、祖先の墓の前で割腹自殺した吾郎の父、素封家の潔さ、「死」を持って償う姿勢は、さすがだな…と思いました。今の自民党の議員にそんな潔い人間がいないのは、世襲で2世のお坊ちゃん議員、各経済界の利益団体や地域の利益供与のために選出された国会議員が大半なのだから、当たり前か…???元々は、明治維新の立役者の薩摩長洲、特に山口県を祖先とする人々だがーネ。「武士」の潔さが亡くなったのかな…。安倍晋三総理よ、もしもあなたが少しでも日本を戦争に巻き込む政策の失敗をしたときに、祖先の墓の前で責任を取って死ぬ覚悟はありますか???


近頃日本の映画監督は、戦前の日清日露から太平洋戦争に至る富国強兵策と軍国化、侵略戦争への道程、軍国主義と広島長崎の原爆投下と焦土と化した、昭和の日本人が経験した戦後の混乱した日本を描か亡くなったーナ…。戦後生まれの社会科学者は、「世界」が歴史の変遷の中で受難した戦争による虐殺と、政治経済が無慈悲に「市民」を陥れる政治の力学と、それを抑制する平和の政治・社会理論を研究しなくなったーナ…。最早、日本人映画監督も学者も、若い戦争を世知らない世代も、世界のどこかで「戦争」が今現在も勃発し、防弾と銃器の炸裂する戦闘状態が続いていることを、そして、再び日本と周辺アジアで、激しい戦争が今現在起こることを忘れている人も多くなりました。或は、恰も痛みと血を伴わない仮想「ゲーム」のように、恰も空想と心情の中でだけしかとらえようとしなくなったーナ…。もっともっとリアルで血みどろの戦争映画が制作されるべきではないのかな。原爆と戦争のアニメが教科書から削除されるPTAの反対があるバックドラフトの平和の時代だからな…。


 

寧ろ邦画では、戦争アニメの方が話題を呼んでいます。例えば「火垂るの墓」(高畑勲監督、1988年)、「君の名は。」(新海誠監督、2016年)、『この世界の片隅に』(片渕須直、2016年)…等がすぐに思い浮びます。俳優と現実を舞台とするリアルな映画は、戦争のテーマ設定と時代背景と制作そのものもしにくくなっているのかもしれませんーネ。私は、井伏鱒二原作、今村正平監督の『黒い雨』がもう一度見たいです。

3

3本目は、病に侵されベットでベッドで養生する母と、かぎっ子のように食事を自分で作り、母の病気の面倒を見る孤独な13歳の少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)と母と別居中(父は離婚しているようだ)の父親と、母の祖母の3人と怪物の登場するファンタジー成長物語『怪物はささやく/A MONSTER CALLS』(2016年、A・バヨナ 監督)でした。


 

私との観賞途中の第一印象としては、これは…大変に難解な映画だな…と思いました。この映画のメインテーマは何なのか…???の疑問が持ち上がっていました。ある夜、彼の部屋の窓の外に、闇夜に蠢く樹木の姿をした大きな怪物が現われ、「わたしが三つの真実の物語を語り終えたら、四つ目の物語はお前が話せ」と告げ、夜な夜な怪物は現れるようになりました。コナーを訪れる幻想的なアニメの樹木の怪物が、コナーに謎を仕掛ける…。リアルな写実映画とアニメの怪物が登場するファンタジーめいた作品でした。子供から大人への少年が母の愛情の庇護から大人になる最後の謎は、病院で母の死を看取り、母の死によって母に甘えられない一人で生きること、つまり「独立心」へ導く謎でした…。子供が大人になる成長のきっかけは、父でもなく祖母の力でもなく、母の死という大きな母の愛情の喪失という怪物でした…。

 

私はアメリカの作家、パトリック・ネスの小説を今まで読んだことかありません、というよりも初めて知る名前でした。『怪物はささやく』も(池田真紀子訳、あすなろ書房、2011年出版)も既に日本語の翻訳があるようですーネ。その他、『心のナイフ』<上・下>『問う者、答える者』<上・下> (東京創元社、金原瑞人、樋渡正人訳)、 『まだなにかある』<上・下>(三辺律子訳<辰巳出版)…数多出版されているので、日本でも隠れた読者が沢山いるようです。活字を読むのが苦手になった私ですが、原作ぐらい是非読みたいです。




   

7月下旬特選映画【19】★映画のMIKATA「ザ・マミー」★映画をMITAKA

$
0
0










暑中お見舞い申し上げます。毎日暑いですね、もうじきお盆休みです、映画で暑さを忘れましょう…。私は高校野球の西東京大会決勝戦で、東海菅生と早実の試合を見ていて、余りにも「清宮がんばれ、キヨミヤキャー、打て
ホームラン」の応援に辟易しました。却って、テレビ観戦をしていて余計に熱くなりました…。期待が余りに大きすぎる、プロに入団しても途中でつぶれるのではないのかな…???

最近、映画の題名から、「その作品はどんな内容なのかな…???」と興味をそそられる映画の作品名が増えましたーネ。例えば、昨年公開された中野量太監督、宮沢りえ主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』など、まずは題名に魅かれました。先日レンタルショップで、その題名が目に留まって借りて見たDVD映画『走れ、絶望に追いつかれない速さで/TOKYO SUNRISE 』(2015年、中川龍太郎監督)も、内容以前にまずは題名がありました。まだ見てはいないのですが、現在公開中の作品で、川翔 監督、吉田智子脚本の『君の膵臓をたべたい』や、石井裕也監督&脚本、最果タヒ原作の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』なども、その題名に先ずは「何んの映像なのかな、どんな言葉が隠されているのかな…???」と、想像が刺激され、そそられます―ネ。私など、エ~人肉の怪奇映画だとか、ウーン北極のオーロラの風景を連想してしまいます。こりゃー、みな観なきゃソン損なのかな…。



映画コメントのブログにTVドラマやTV番組の話題を持ち込むのは、やや場違いでしょうかーネ。私は今、遊川和彦脚本、高畑充希主演、日本テレ放送の『過保護のかほこ』というTVドラマに嵌っています。流石に映画『恋妻家宮本』で面白い喜劇を見せてくれた脚本家だけある、ゲラゲラ笑わせてもらっています…。流石に演技上手の高畑充希です、万華鏡のようにクルクル変化する顔の表情と天真爛漫な言葉の連発は、見ていて楽しいですーネ。


もう一つTVドラマについてコメントを。超高層ビルの建つ近代都市の新宿の街だが、時代の流れから取り残された新宿の裏街に深夜に暖簾をだす食堂に、サラリーマンやOLや水商売の女たち、家出少女やヤクザやオカマ達が、深夜食堂のカウンターに座り、素朴な家庭料理や、酒肴の手軽な摘みに舌を喜ばせ、秘密の私情と隠したい心の悩みを抱えて、毎夜集まる食べもののドラマ「深夜食堂」…。そのドラマの中心にいるのが小林薫でした。連続TV番組としても、映画としても、食べものとカウンターを挟んで、狭い空間の中で人情ドラマが繰り広げられる何とも味のある番組でした。私も楽しませてもらいました。同じ食べもの番組でも、テレビ東京放送の重松豊主演の「孤独のグルメ」も平板な食べ物紹介に終わってはない。今新しくTBS系テレビで栗山圭介原作の、居酒屋ふじ」というTVドラマが始まった。一応売れない俳優の卵という永山絢斗演じる西尾を主人公に、毎回中目黒の居酒屋に役者たちが集まり、西尾の持ち込む悩みを酒のつまみに、いつもの常連が相談にのるストーリで終わる。このお店も洒落たビル街の裏通りに暖簾を下げているのだろう、昔のゴールデン街やのんべい横丁のような雰囲気です。今までの独身OLドラマとは一味違う、食のTVテレビドラマで、27歳の独身OL・臼井幸(谷村美月)「さちがうすい」が近所のお寺の僧侶「料理僧」に、精進料理を習うというストーリの『サチのお寺ごはん』もグルメ番組とはまた異なる面白い食の作品ですね。何故にこうも「食」のドラマが次々と制作され、面白いのだろうかーナ??? 「食」のドラマの面白さと、ドラマとしての可能性は何処にあるのだろうか…。私の独断で言えば、最早金儲けが第一主義になった無能な邦画の映画監督の作品の地平を一歩越えていますーネ。是非、読者の方にこの質問の答えを聞きたいです。

 

さて、7月下旬の特選映画をアップロードします。今月7月は上旬にハクソー・リッジ  HACKSAW RIDGE』、『いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~』、『怪物はささやく/A MONSTER CALLS』の3本、下旬で4本を鑑賞して、今月7月は通算で7本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、トムクルーズ主演の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』でした。ただ、エジプトを舞台としたワンパターンのホラー&アドベンチャ作品で、期待した以上の斬新な作品ではないかな…と思いました。



宇宙空間を舞台とした「ライフ」もまたワンパターンだな…と同じことが言えるのですがーネ。先日、公開中に見逃したインド映画「PKピーケイ」(ラージクマール・ヒラニ 監督)をDVDで見ましたが、黄色いヘルメットを被って大きなラジカセを持ち、神様を探してさまざまな宗教に問いかけ、もう一度円盤を呼ぶリモコン機器を探す為に、チラシを配布する裸の宇宙人は、ハチャメチャに面白いSFコメディー映画です。見事にハリウッド映画の地平を越えていました。同じ宇宙人のSFなのだが、ワンバターからはるか遠くに逸脱しているインド映画でしたネ。

 

1

男女6人の宇宙飛行士、医者のデビッド・ジョーダン(ジェイク・ギレンホール)、検疫官のミランダ・ノース(レベッカ・ファーガソン)、航空エンジニアのローリー・アダムス(ライアン・レイノルズ)、システム・エンジニアのショウ・ムラカミ(真田広之)、宇宙生物学者のヒュー・デリー(アリヨン・バカレ)、司令官のエカリーナ・“キャット”・ゴロフキナ(オルガ・ディホヴィチナヤ)が搭乗していた。彼らは国際宇宙ステーションに集結し、火星で採取された土壌から人間の起原さえ明かす地球外生命体の存在をを探っていた。がそこから、細胞めいた未知の地球外生命体の存在を、隔離した宇宙ステ―ションのラボで発見する。やがて、小さく無害で可愛らしい細胞は「カルビン」と命名され、次第に大きく成長し、攻撃性と知能を持つ存在へと進化した。未知の細胞は宇宙船内と船外の宇宙空間を逃げて、抹殺しようとする宇宙飛行士たちを翻弄しようとした。孤絶した宇宙で、完全に火星の生命体に宇宙ステーションを征服され、次第にクルーは未知の生命体の攻撃によって追い詰められ、残った二人の飛行士は、少なくても地球を滅ぼしかねないこの未知の生命体を地球へ持ち帰ってはならない…と、宇宙ステーションを捨てて脱出ポットで宇宙空間へ飛び立つ。 が、初めの計画では、最後に生き残った1人・デヴィットは宇宙空間へと「カルバン」を道連れにする…、もう一人ミランダは地球へとこの生命体を知らせるため脱出する予定だったのだが…。1本目は、未知の生命体と地球の危機を描いたSF映画『ライフ』(2017年、ダニエル・エスピノーサ監督)でした。


最後のシーンで、東南アジアの何処かの海に宇宙から落下して無事に着水したカプセルには、宇宙ステーションで進化した未確認生物「カルビン」と、デヴィットが乗っていた。海上でそのポットを確認した漁師は船で近寄り、直ぐに救助しようとするのだが、デヴィットは懸命に開けるなー、近寄るなーと叫ぶのだが゛理解されなかった…!!!またまた続編を期待させるクローズだな、と感じさせました。むしろそれを狙った制作を初めから企画しているのかもしれませんーネ。



2

殺し屋稼業から身を引いて静かに生活している主人公のジョン・ウィックを演じる身長186センチの二枚目俳優、『マトリックス』シリーズで人気を博したキアヌ・リーヴスの名前は、まるでフランス菓子のようなので仏蘭西人かと錯覚していたが、レバノン出生のカナダ国籍の俳優でした。

前作chapter1を鑑賞後に2015年10月下旬特選映画【32】で、私はこう書いてます。…ロシアン・マフィアの凄腕の殺し屋から足を洗い、愛妻との平穏と安らぎの毎日に満足しているジョン・ウィックは、妻を病気で喪い、悲しみに暮れる葬式の日に、マフィアのボス・ヴィゴの息子・ヨセフに、妻から贈られた子犬を殺され、愛車のムスタングを暴力で無理矢理に奪われる。…その安息を破られた復讐を誓い、コンクリートで固めて床下に封印していた殺人の武器と金貨を手に、殺しのスキルを再び惹起する。…邪魔する多勢の子分を次々に倒し、逃げ隠れていた息子のヨセフを仕留め、マフィアのボス・ヴィゴとの死闘を生き抜いた伝説の殺し屋ジョン・ウィックが、ラストシーンで、瀕死の傷口を手当てするために港付近の動物病院に侵入した後、愛犬に似た愛らしい犬を一匹連れて深夜の道路を去っていく場面には、凄惨な殺しを非情に続ける彼のヒロイックなアクションとのあまりの落差に、私は寧ろ滑稽さを感じてしまいました…。あれは脚色の失敗だーね。…と書きました。


2本目の『ジョン・ウィック:チャプター2(2017年、チャド・スタエルスキ監督)は、chapter1の続編なのだが、初めは、奪われたフォード・マスタングを取り戻すために盗難車専門のマフィアの自動車工場へ突撃するシーンから始まる。そこで再び愛車のマスタングの奪い合いで息子のヨセフと衝突する。

chapter1とストーリ設定と壮絶な復讐劇はchapter2でも同じなのですが、こんどの相手は、そのリベンジの5日後、ジョン・ウィックは闇社会のイタリアンマフィアのサンティーノ(リッカルド・スカマルチョ)から新たな殺人、彼の姉を暗殺してくれ、と依頼される。殺し屋稼業から足を洗い静かな生活を望むジョンは断るのだが、サンティーノによって終の棲家をバズーカ砲で木っ端みじんにされてしまう。愛車を奪われた復讐と同じく、サンティーノと対決するのだが、ジョン・ウィックには7億円の懸賞金がかけられ、殺し屋稼業全員のターゲットとなった…。エ~、ジョン・ウィックはどうなるんだ…と期待させ、続編がまた公開されそうな気がしますーネ。

 

率直に行って、芸のない映画を恥ずかしげもなく世界に向けて公開するものだな…と呆れました!!!二番煎じのコンコンチキの駄作でした。ただ、この毎日うだる暑さに、昼間の避暑地として私は映画館へ行くのですが、夏の一時の暑さを忘れさせてくれる惚れ惚れする格闘技と、見事な拳銃裁きの壮絶なアクション映画でした。同じアクション俳優でも、格闘映画を撮り慣れているリュック・ ベッソン監督ならば、リアム・ニーソンやジェイソン・ステイサム主演の類似作品ならば、もう少しまともに制作していたね。「ヒロイズム」の解釈が、ロマンティクで歪んでいるのかな…。


3

 

中東で戦闘に従事する、あわよくば古代の財宝を盗もうと狙うやや手癖の古いアメリカ軍人兵士の2人、ニック・モートン(トム・クルーズ)と相棒のクリス・ヴェイル(ジェイク・ジョンソン)は、イラクの反乱軍の街で危機一髪の所を空爆援護で救出された後、偶然にも古代エジプトの文字が刻まれたアマネット王女の墓と石棺が発見される。その発掘に居合わせたのが、考古学者のジェニー(アナベル・ウォーリス)で、優秀な医者であり科学者であり、自身の心に潜む邪悪な悪魔を取り除こうとするラッセル・クロウ演じるジキル博士が率いる悪魔研究の≪プロディジウム≫が出動、彼女と共に調査のために石棺をイギリスに飛行機で運ぶ。のだが途中墜落…。3本目は、イギリスの地下から発見された十字軍の棺と、皇位継承をめぐり、悪魔に魂を売り一族を皆殺しにして権力を手にしようとした古代エジプト女王・アマネットのストーリが絡むホラー&冒険アクション『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017年、アレックス・カーツマン監督)でした。

 

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』公開初日に見に行ったのだが、些か肩透かしにあった気がしました。と言うのは、古代エジプトを舞台にする作品ならば、既に1999年公開のスティーブン・ソマーズ監督・脚本のアドベンチャー映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都/The Mummy』と同工異曲だったからです。この作品自体が、そもそも1959年公開の『ミイラの幽霊』(テレンス・フィッシャー監督)、そのリメイク版の1932年公開の『ミイラ再生』(カール・フロイント監督)の、リメイクのリメイク版だったので、古代エジフトとピラミッドの呪いとミイラの登場する舞台とストーリは、新鮮味がなかったのですーネ。ただ唯一の特徴と魅力は、この作品の主演が、トム・クルーズだということです。彼の「ミッションインポッシブル」で見せたアクションと謎解きがあるのかな…という期待感が、少なくても私にはありました。もう一つの特徴は、この作品がユニバーサル・ピクチャーズが手掛ける「モンスター・ユニバース」の第1弾であることです。故に、ここに唐突にもジキル博士が登場するのです。

 


4


4本目は、共に小さな劇団で役者をする夫婦、夫のマッド・エテサミ(シャハブ・ホセイニ)と、妻のラナ・エテサミ(タラネ・アリドゥスティ)は、ちょうど劇作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演していました。マッドは教師として教壇に立ち、妻と共に劇団の仕事にも情熱を注いでいた。今まで住んでいた自宅が崩壊の危機のため建設工事する為に引越を余儀なくされました。たまたま引っ越し先の転居したばかりの家で、夫の帰りを待つ夜に浴室でシャワーを浴びていた時に、慣れないアパートなので、ドアーの鍵を解除したまま妻は何者かの侵入によって乱暴されレイプされてしまう、レイプ&犯罪映画『セールスマン/FORUSHANDE/THE SALESMAN 』(2016年、アスガー・ファルハディ監督)でした。


ただーネ、単純にレイプ&犯罪映画とだけ言えない作品です。アスガー・ファルハディはイラン・イスファハン出身の映画監督です。イランの映画は日本では未公開作品が多く、余りに馴染がありませんが、ナントなんと、『彼女が消えた浜辺』(2009年)ではベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀監督賞)に輝き、『別離』(2011年)では同映画祭の金熊賞を授与され、また同作品ではアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、イラン映画として初めてのオスカーを獲得した監督でした。この作品では、カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞し、2度目のアカデミー外国語映画賞を受賞した、最早イラン映画界ばかりでなく、世界の映画業界注目の監督です。尚且つ気骨もある。トランプ政権の移民政策等への反対を表明するためアカデミー外国語映画賞の授賞式をボイコットしました。


では何故、イラン人の制作する映画の何処に私たちの胸を打つのだろうか…ナ???文明と宗教と民族を越えて共感と感動の共時性は何処にあるのだろうか…???
夫のマッドは妻を怪我させた侵入者の正体を、乗り捨て逃げたトラックから探しあて、街のパン屋のオヤジを突き止め、店主の老人が妻をレープした犯人だと暴く。パン屋の店主は心臓が悪く、彼は、旧い引越前のアパートに彼を閉じ込め、報復のために家族に事情をぶちまけると脅す。その時、妻のラナは、こうこれ以上苦しめるならば、「もう私たち、終わりーネ…」と夫を攻めるのであった…この辺りは、私には予想外のラナの反応でした。ラナは、そこに夫マッドに残酷な暗い人間性を感じたのだろうな…。そこで、アーサー・ミラー原作の戯曲劇中劇『セールスマンの死/Death of a Salesman』とオーバーラップする。年老いた63歳のセールスマンと、ウィリィ・ローマンと、夫に献身的な妻のリンダとの間に流れる人間の絆に映像は重なるのでした…。恐らくラナには、舞台で演じているウィリィ・ローマンと妻のリンダの姿が、浴室に忍び込み乱暴しレイプしたパン屋の老いた年寄りと、彼の妻の献身的な愛情関係が重なって見えたのでしょうーネ。資本主義のアメリカの、当たり前の価値感と社会ルール、競争社会に敗れた人間は価値の低い人間、人間本来の「愛」は、金銭の価値よりも低く、セールスマンの敗残者としての「死」が、イスラム社会の監督によって再現されたのです。 





  

是非、コメントに一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)

8月上旬特選映画【20】★映画のMIKATA「少女ファニーと運命の旅」★映画をMITAKA

$
0
0



8月上旬の特選映画をアップロードします。今回なんとか4本を映画館で観賞、遅れて掲載します。8月は映画よりも間近に迫った設備管理試験のお勉強に専念していますので、あまり時間が取れませんでした。ギリギリ4本を観賞した中で、選んだ特選映画1本は、どれにしようかと迷った末にナチズムとホロコーストの映画の中で『少女ファニーと運命の旅』にしました。


久々に横浜市中区の伊勢佐木町近辺にある映画館「ジャク&ベティ―」で連続してまとまって3本見ました。と言うのも、丁度夏休みの時期なのでメジャーの映画館はお子ちゃま向けアニメと若年層に人気のあるアイドルイケメンが主演する初恋ドラマのような作品が多くて、おじさんたちには真顔ではとても観れませんでしたーネ。とは言え、後でDVDを借りて見るというよりも、スクリーンで観たい…と誘惑される魅力的な作品が少なかったです。今回「J&B」で観賞した「少女ファニーと運命の旅」「ハイドリヒを撃て」「ヒトラーへの285枚の葉書」のいずれもが、私が今ポツリポツリとブログに連載しているDVD特選映画のテーマ≪ナチズムとホロコースト≫に関係があるので、尚更に交通費を千円費やしても観たかったからです…。いつかその内に「アウシュヴッツ旅」へ行くぞ…と、私の終活旅プラン実現の一つに入れてます。


たまに行ってみたが、お盆休みのせいか、尚更にエレベータの上の二階入り口は相変わらず、入場券を買う列と、次の上映をドアへの前で待つ人々で、ラッシュアワー時のプラットホームのように狭い通路に人が入り乱れて混雑していました…。狭いスペースに揉み合うように立っていると、転倒事故でも起こるのではないかと、恐ろしくなります…!!!わざわざ遠く東京都内や、横浜市外の鎌倉や藤沢から観に来る人も居る映画館です。ボロボロの座席を新しく改装して、多少まともになりました。映画館の経営事情は分かりませんが、これだけごった返すほどの人気があるのだから、もう少し快適に鑑賞できるように、さらに、トイレや開演待ちのソファーなど改装してほしいものですーネ。映画館は特定建築物なのだから、スプリンクラーは設置してあるか、トイレの環境衛生や空調機器などはどうなってるかな…ナ、ついついキョロキョロ見回して気になってしまう私です。
 

それぞれ、類似の作品はあり、決して改めて≪ナチズムとホロコースト≫の斬新で新鮮な映画とは言えませんが、ヤハリ見逃せませんでした。例えば、敗戦して間もないドイツで、ナチスの幹部だったドイツ軍将校は戦争犯罪の審判を恐れて身を隠し、母はドイツ人への報復リンチを恐れ、14歳の長女ローレに預けて子供の元を去った。妹弟と共に長女ローレたち子供たちだけで南ドイツから900キロ離れたハンブルクの祖母の家へ頼れ…と、子供たちだけで帰省するように手放したさよなら、アドルフ」 (2012年公開、ケイト・ショートランド監督)がありました。 少年少女たちで旅をする点では、ユダヤ人の子供たちがナチの強制収容所送りから逃走するのと立場は違いますが、しかし「少女ファニーと運命の旅」と境遇は似通ったいます。不条理に戦争に容赦なく巻き込まれるのが子供たちの悲しい運命です。「ハイドリヒを撃て」は、ヒトラー暗殺計画を扱ったドイツ軍将校役のトムクルーズ主演のワルキューレ』(2008年公開、ブライアン・シンガー監督)がありました。家具職人ゲオルク・エルザーがビヤホールに爆弾を仕掛けてヒトラー暗殺を実行した『ヒトラー暗殺、13分の誤算』 (2015年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)  などを彷彿とさせます。戦争中は、個人の「死」さえも「国家」の管理に置かれ、肉身家族の命を平気に犠牲します。支配体制の政治家と軍人は、尊厳ある「命」を国家に奉仕させます。息子を戦争で失った機械工のオットーは、やるせない悲しみとヒトラーとナチスへの憎しみを募らせました。ナチズムの侵略戦争を告発する文書を街にばら撒くヒトラーへの285枚の葉書」は、反ナチス抵抗組織「白バラ」のメンバーで、ミュンヘン大学生が反戦争のビラを印刷配布して、結局、あどけない純正な学生が処刑される『白バラの祈り』(2005年公開、マルク・ローテムント監督)は、市民の抵抗運動として根は同じ反ナチの作品ですーネ。

  

それなりに3本とも見応えがあり、甲乙つけがたい作品でしたが、その中でも私は」『少女ファニーと運命の旅』を特選映画に選びました。国境に張りめぐされた鉄条網の破れた隙間をくぐり抜けて、スイス国境の先にある草原を走り抜ける最後のシーン、でも、一人だけ一番小さなあどけない女の子が転んで倒れている姿を見つけて、危険を承知でファニーがもう一度戻り、国境のバラ線の向こうからドイツ軍の銃口で撃たれながらも救うラストシーンは、転んだ幼子を抱き上げ、弾避けのバリケードへ無事に隠れた時には胸を撫で下ろしホットしました。 



1

スーパーライト級チャンピオンのロジャー・メイウェザーとの対戦に滅多打ちにされ、プロモーターから引退を勧告されるが、自惚れ屋でギャンブル好きのボクサー、ビニー・パジェンサ(マイルズ・テラー)、別名「パズマニア・デビル」は、大敗したままでは終わらなかった。彼は、ヘビー級のチャンピオンさえ育てたが、飲んだくれのダメトレーナー、ケビン・ルーニー(アーロン・エッカート)の元で再起をかけて練習を始める。体重と筋力から2つ上の階級で「ジュニアミドル級」で、フランス人ボクサーのジルベール・デュレに勝利して見事に世界ジュニアミドル級チャンピオンになる。その試合の直後、浮かれて喜び新車を購入して、直ぐにドライブの上に正面衝突の交通事故を起こす。首を骨折し瀕死の重傷を負ってしまう。医師は、二度と歩くことはできなくなる…と診断していた。脊椎を固定する手術を勧められるが、それを拒否。ボクシングのできない障害者になりたくない、ボクサーで再起デビューできる治療方法、半年間も頭の回りに金属の装具を付けて過ごす選択をする。事故から1年が過ぎた頃、改めてカンバックの試合をスーパーミドル級チャンピオンのロベルト・デュラン(エドウィン・ロドリゲス)に挑戦、再びリングに上る…。1本目は、ボクシング映画『ビニー/信じる男/BLEED FOR THIS 』((2016年、ベン・ヤンガー 監督)でした。


ボクシング映画の真価は、どんな世界タイトルをかけて、誰と対戦したか、リングの上でどんな試合をしたか…が全てです。後は、それを監督がどんな見せ場を作り、どんなシーンで撮影するか、主演がどんな演技をするかで作品の価値がきまってきます。心情としては、特選映画にこのボクシング映画
を推したかったのですが、だが、従来のスポーツ映画の秀作から比較すると、例えば、ディンゼルワシントン主演の『ザ・ハリケーン』、スタローン主演の『ロッキー』シリーズ、クリントイーストウッド監督で女性ボクサー誕生の『ミリオンダラーベイビー』、最近のジェイク・ギレンホー主演の『サウスポー』などから見たら、単に一つ、これがアメリカ人の不屈の精神だ…と言うことを強烈に主張しているだけが表に出過ぎてるナ…!!!殴られても倒れても立ち上がる、ダウンしない不屈のスポーツ精神がどうもイデアを持った≪ヒューマン≫なシーンとして表現されてないな、と感じました。邦画では、アニメの『あしたのジョー』と安藤サクラ主演の『百円の恋』は、邦画にしては面白いボクシング映画でした。

スポーツ映画も興奮しますが、ボクシングだけは、世界タイトルをかけた迫真の試合、リアルタイムで見る醍醐味に勝るものはないでしょうーネ。私は、WBA世界ミドル級 村田諒太vs エンダムの試合で、判定負け した村田諒太の再挑戦試合を是非今年の年末に見たいです。私もTVで観戦していて明らかに判定でも優性勝ちだと思っていたので、驚嘆しました。でも本当に有るのかな…???

2

1943年のナチス・ドイツ支配下のフランスで、ユダヤ人狩りから逃れるために、13歳のユダヤ人少女ファニーは幼い二人の妹と共にユダヤの子供たちを保護する児童施設に預けられ匿われていた。2本目は、逮捕されてナチの強制収容所へ送られ、ガス室で殺される運命と危機におわれ逃げ乍ら、協力者の施設から施設へ転々とナチスのユダヤ人狩りから逃走するのだが、最後には、引率者と逸れ、8人の子供たちだけでナチスドイツの支配下に置かれた仏蘭西からスイス国境まで山中を逃げ惑う逃避行映画『少女ファニーと運命の旅/Le voyage de Fanny』(2016年、ローラ・ドワイヨン監督)でした。


最近、「ホロコースト」で生き残りったマリオン氏を題材にした「マリオンの旅」というオンラインゲームを英国のカレドニアン大学の学生たちが開発したそうです。まだ、国内ではあまり話題になってませんーネ。恐らく、韓国朝鮮の戦争中の日本軍の支配体制は、このドイツ軍と同じ侵略国の「命」を踏みにじったていたのだろう・・・ナ。この映画は、実在した女性ファニー・ベン=アミの自伝を基にした映画でした。私は、ナチズムからの逃避行だと、ドイツからピレネー山脈を越えてスペインへ逃走する途中、逮捕を恐れて服毒自殺したといわれているベルターベンヤミンのことをどうしても思いおこします。ドイツフランクフルト大学を基盤に、哲学・社会学分野で、ヘーゲルの弁証法とフロイトの精神分析を融合させた独特な「批判理論」を確立したホルクハイマーやアドルなどの理論家たちの仲間の一人としてベルターベンヤミンも数えられています。特にアドルノが音楽に特化した芸術論的思考に対して、アメリカに亡命しアメリカへ精神分析を移入したE・フロムは社会論と心理学をミックスした独特な社会心理学を構想した「自由からの逃走」は代表作です。フロムもやはりフランクフルト学派の1人でした。ベンヤミンは文芸批評に特化した芸術論思考にユニークな論文を発表していた。中でも、特に、『複製技術時代の芸術』で構築された芸術理論で、作品の背後にある≪オーラ≫の概念は、印刷機の誕生によって「芸術」が複製される近代社会で量産される「文化」に対して、芸術作品の本物の価値を表現する概念として既に、私たちの現代的視点に定着しています。

 

3

ナチス高官ラインハルト・ハイドリヒは「金髪の野獣」と呼ばれ、ヒムラーに次ぐ親衛隊の実力者であり、虐殺の限りを尽くした残虐者でした。ユダヤ人問題の「最終的解決Die Endlösung der Judenfrage」、つまり、ユダヤ人種に対してヨーロッパに住む全てのユダヤ人を根絶させるホロコースト(大量虐殺)を行うナチスの計画は、1942年1月20日にベルリンのヴァン湖のほとりにあった、没収したユダヤ人富豪の別荘で「ヴァンゼー会議」が開かれ、そこでホロコーストが決定されました。その会議で、ナチスの高官がここに集まり、その一人としてラインハルト・ハイドリヒも参加していました。SSのナンバー2であるヘルマン・ゲーリングは、ハイドリヒに「ユダヤ人問題の最終的解決を望ましい形で実行するために必要な行政的なシステムと金銭的な方策の計画を可能な限りすぐ自分に提出するように」命令したと言われています。

戦争中はチェコ統治の責任者でした。イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府の指令で、ヨゼフ(キリアン・マーフィ)とヤン(ジェイミー・ドーナン)たち7人の暗殺部隊がチェコ領内に落下傘で潜入した。暗殺計画は移動中のハインリヒの車を襲撃して重傷を負わせた。この傷が元で彼が死亡した結果、現地のレジスタンスと無関係なボーランド市民への壮絶な報復が始まった。3本目は、ハイドリッヒ暗殺計画の顛末と最期を描いたナチズムの映画『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』(2016年、ショーン・エリス監督)でした。


ヒトラーを始め、ナチスの親衛隊への暗殺計画を扱った映画はいろいろありましたが、私は、ヒトラー爆殺を狙ったワルキューレ』(2008年公開、ブライアン・シンガー監督)や家具職人ゲオルク・エルザーがビヤホールで演説予定のヒトラーに対して爆弾を仕掛けて暗殺を実行した『ヒトラー暗殺、13分の誤算』 (2015年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)  などを彷彿とします

4


一人息子ハンスを戦死させ、悲しみに暮れた夫婦、オットー(ブレンダン・グリーソン)とアンナ(エマ・トンプソン)は、この戦争の無意味さとヒトラー政権の無謀な戦争を告発する文章を絵葉書の裏にペンで手書きして、街のあちこちの施設に置き、人から人の手を渡って流布させようとした。4本目は、ヒトラー批判を続けたナチスドイツへの抵抗活動の映画『ヒトラーへの285枚の葉書/ALONE IN BERLIN 』(2016年、ヴァンサン・ペレーズ監督)でした。


ペンと葉書を武器にナチス政権にささやかな抵抗をした夫婦は実話のようです。ドイツ人作家ハンス・ファラダがゲシュタポの残した記録から終戦直後に書き上げた遺作の小説「ベルリンに一人死す」をヴァンサン・ペレーズ監督が映画化したものでした。同じく、抵抗運動の末に処刑された学生たちを描いた白バラの祈り』(2005年公開、マルク・ローテムント監督)は余りに有名な作品ですが、ヨーロッパの多くの国家がドイツの支配下に置かれ、「ハイルヒトラー」と忠誠を誓っていた時代に、あちこちで強大な権力に立ち向かった普通の素朴な市民がたくさんいました…。その中の実話の一つですが、言論の自由がなく、政治批判さえできない時代に二度と生きたくはないですーネ。ただーネ、中国を始めだ北朝鮮など、残念ながら未だ独裁者の支配する独裁国家が地球のどこそこにあります。であるゆえに、暗く不自由時代に生きたくないな、そんな国家は許せない、存在してはならない…と、思う故に余計に感動しました。






 

是非、コメントに一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…

8月下旬特選映画【21】★映画のMIKATA「エル ELLE」★映画をMITAKA

$
0
0




8月上旬の特選映画をアップロードします。今月も掲載が少し遅れました。理由は国家試験のお勉強で映画を見る時間がなかったからです。なにせ、60歳を過ぎてから受験勉強のような問題集をコツコツやっているのですからーネ。官僚の高額待遇の民間天下りナンカ、羨ましいですーネ。


今回3本を映画館で観賞、今月8月は通算で7本、『ビニー/信じる男/BLEED FOR THIS 』『少女ファニーと運命の旅』『ハイドリヒを撃て』『ヒトラーへの285枚の葉書と、『ワンダーウーマン』『関ヶ原』『エル ELLE』を観賞しました。下期に選んだ特選映画1本は、『エル ELLE』でした。

今回も邦画は特に興味を魅かれる骨のある作品はありませんでした。 脱線しますがどうやら、大林宣彦監督が肺がん末期のようで、抗がん剤での治療をしながら、入院を辞退して戦争中の青春を描いた檀一雄原作『花筐 HANAGATAMI』を制作しているようです。今年冬12月16日公開を既に公表しています…。NHKドキュメントの「青春は戦争の消耗品ではない」を見て、余命半年と宣告され乍ら、映画製作に命を削って撮影現場に臨む、この映画を完成させなければ死ねない…その気迫の姿に圧倒されました。監督には太平洋戦争との深いつながりと理由があった。私はやや期待を膨らませて公開を待つています。





1

 

人間社会から孤立した孤島・セミシキラに女性だけが住むアマゾン一族のプリンセスとして生まれたダイアナが主人公のワンダーウーマン(ガル・ガドット)。王女として成長したダイアナは、女性だけの一族の女戦士として誰よりも強く逞しい戦闘能力をヒッポリタ女王の妹で、一族で最強の将軍・アンティオペによって鍛え上げられた。第二次世界戦争を想像させるフィクションナルな歴史を背景に、世界征服を企むドイツ・ナチズムもどきの「悪」と、アメリカイギリスなどの連合国もどきの「善」との激しい戦争が舞台。ある日、海岸上空で墜落事故を起こしたイギリス人スパイス、ティーブ・トレバー(クリス・パイン)が、毒ガスを開発しているドイツ軍の兵器工場からドクター・ポイズンの秘密の手帳を盗み、敵軍から飛行機で脱出するが、追っ手に撃墜されセミシキラ棟の沖合に墜落する。ダイアナはティーブ・トレバーを助け彼と共に「外」の世界・ロンドンに飛び出し、正義のために敵と戦う…。そのリアルな歴史ストーリに、本来のアメコミのワンダーウーマンのアマゾン族とギリシャ神話のストーリが合体して混ざっている。1本目は、誰よりも美しく超人間的な戦闘能力を持った女性戦士ダイアナが、ドイツの最前線に赴きドイツの毒ガス新兵器による大量虐殺を阻止するために戦う『ワンダーウーマン』(2017年、パティ・ジェンキンス 監督)でした。

 

≪アマゾーン≫の語源は、ギリシャ神話では軍神アレースとニュンペーのハルモニアーを祖とする女性だけの部族で、北方の未開地の黒海沿岸に住んでいたという。黒海はかつて「アマゾン海」と呼ばれ、実在した母系部族をギリシア人が誇張したといわれている。神話上の女性部族をスーパーウーマンとしてアメコミの主人公にして映画化したものです。

バットマンやスーパーマンなどアメコミ「DCコミックス」の中にする登場するスーパーヒーローたちの映画に、これまで時々姿を現したワンダーウーマンでしたが、今回の作品では「ワンダーウーマン」が、主人公になった。これまでは、TVシリーズで放映されてきたが、多分「ワンダーウーマン」を主人公とする映画は初めではなかろう…カナ。


私はもうスーパーヒーロなどアメコミ主人公の映画は観ないと思っていたのですが、ついついワンダーウーマン役のガル・ガドットのスタイルと美しさに見とれてしまいました。理屈抜きで、楽しめる映画でした。
 
2

2本目は、徳川家康(役所広司)を総大将とする東軍と、石田三成(岡田准一)率いる西軍が激突した1600年10月21日の、戦国時代を終わらせる天下分け目の合戦を描いた時代劇『関ヶ原』(2017年、原田眞人監督&脚本)でした。


昨今トンと本格的な時代劇がスクリーンに登場しないですが、久々に時代劇を見ました。司馬遼太郎原作の時代劇の映画化がどうして今頃映画になるのかな…と、興味津々の反面、些か胡乱にも思いました。が恐らく、NHKの大河ドラマの「女城主 直虎」の人気の影響なのか…ナ。諸国の武士軍団が群雄割拠して勢力争いをする戦国時代、勢力と武力と知力をかけて日本中で刀と血が乱れる戦国時代の始まりと時代背景を描いたNHKのTV時代劇なのだが、彦根藩の藩祖となった遠州井伊谷の女領主・井伊直虎(柴咲コウ)を主人公にして、そこには、乱世の名の通った戦国武将の今川義元、武田信玄、徳川家康等が登場する。


恥ずかしながら、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」などは学生の頃に夢中で読んだのですが、「関が原」はまだ読んでませんでした。改めて、この映画を理解する為にこの長編時代小説をこれから読もうかな…と思わせる作品でした。とりわけ、家康と石田三成のパーソナリティーは、司馬遼太郎独特の解釈があって、戦国武将にしては三成の天下国家の安泰を「善」とする志に対して、家康の政治権力を追求する貪欲な「悪」が、映画では対照的に描かれているナ、と感じました。これは原作者の人間像なのか、監督の人間観なのか、面白いですーネ。もしも原作を読んだ人がいれば、比較してお聞かせください。


特に忍びの犬である初芽(有村架純)が三成に寄せるうぶい恋心と、戦が終わったら諸国を共に旅しようと…と、初芽を女として扱う石田三成の恋心は、戦国時代劇にしては、面白い描き方ですーネ。これは原作にあるものなのか、映画で脚色されたものなのかな、と興味を持ちました。 



もう一つ、戦国武将が馬上で関ヶ原の決戦場を駆け巡る時に、母衣(ほろ)と言う、中に竹で編んだ駕籠のような骨組に赤や黄の布を被せ、背中全体で背負うような袋を乗せている姿を始めて見ました。この映画では、徳川家康も戦いの前にこの青色の布を被せた母衣の竹かごを自分で編んでいましたーネ。敵と味方を識別しやすいよう、或は、風で膨らんだ母衣は背後からの矢を防ぐ役割をしていた、といいます。


3


夜中に突然自宅へ侵入、顔をすっぽり隠したスキーマスクを被った覆面姿の、割礼した男性に暴行されレイプされたゲームソフト会社の女社長・ミシェル(イザベル・ユペール)のレイプ事件から始まる『エル ELLE』(2016年、ポール・ヴァーホーヴェン監督)でした。3本目は、殺人事件になるとか、警察の犯人捜査にもならず、しかしただ単にレイプ事件に終わらず、・ミシェルは警察に通報もせず、冷静に何も無かったかのようにテーブルから落ちて割れた割れたコーヒカップなどの掃除を始め、翌日直ぐに、撃退用の催涙スプレーを買い、ベットサイドに金槌や斧のような武器を準備したり、再びレイプ犯が侵入した時の対抗手段に拳銃まで備えた…。


原題の≪Elle≫は, フランス語で「彼女」を意味するようです。この映画が、何やらミステリアスでエロティックなサイコスリラーの雰囲気を持ったストーリが展開するのは、その被害者の彼女・ミシェルには過去に、彼女の父親が復活祭に近隣ストーリートの住人を軒並み襲撃して27人を殺害するという猟奇的な殺人事件を起こし、終身刑で未だ服役中で、幼少のミシェルはその現場に居合わせ、父親の隣にいた…という凄惨な幼児体験をトラウマに持ていたため、警察その物に嫌悪感を抱いていた。


レイプ犯人は、再びシェルの家に覆面男がふたたび侵入してきたが、ミシェルと揉み合いの最中に、息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)によって暖炉のマキで頭をたたき割られ撲殺される。マスクを剥ぎ取って、結局、レイプ犯は近所に住む金融関係に努めるトレイダー・パトリキだった。彼は信仰深いにもセックスの時には暴行をしていた異常性欲者だったようだ―ネ。


この作品は、フィリップ・ディジャンが2012年に上梓した小説『Oh...』を原作としている映画のようです。貧相な読書家である私は、初めて知る作家でした。最近文学の知識が貧弱になったなー。ただ、この作品の印象として、現実が、ゲームの中の虚構のように、誰かの見えない手で脆くも崩れたり、操られたりする…もの。それを再び強固にするのもまた強烈で強固な個性、あのミシェルの意志…ということなのかな…!!!「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督だから、エロスを武器に「戦う女」を描きたかったのかな・・・。


是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…

 

8月下旬特選映画【21】★映画のMIKATA「エル ELLE」★映画をMITAKA

$
0
0





8月上旬の特選映画をアップロードします。今月も掲載が少し遅れました。理由は国家試験のお勉強で映画を見る時間がなかったからです。なにせ、60歳を過ぎてから受験勉強のような問題集をコツコツやっているのですからーネ。官僚の高額待遇の民間天下りナンカ、羨ましいですーネ。

 

今回3本を映画館で観賞、今月8月は通算で7本、『ビニー/信じる男/BLEED FOR THIS 』『少女ファニーと運命の旅』『ハイドリヒを撃て』『ヒトラーへの285枚の葉書と、『ワンダーウーマン』『関ヶ原』『エル ELLE』を観賞しました。下期に選んだ特選映画1本は、『エル ELLE』でした。

今回も邦画は特に興味を魅かれる骨のある作品はありませんでした。 脱線しますがどうやら、大林宣彦監督が肺がん末期のようで、抗がん剤での治療をしながら、入院を辞退して戦争中の青春を描いた檀一雄原作『花筐 HANAGATAMI』を制作しているようです。今年冬12月16日公開を既に公表しています…。NHKドキュメントの「青春は戦争の消耗品ではない」を見て、余命半年と宣告され乍ら、映画製作に命を削って撮影現場に臨む、この映画を完成させなければ死ねない…その気迫の姿に圧倒されました。監督には太平洋戦争との深いつながりと理由があった。私はやや期待を膨らませて公開を待つています。




1

 

人間社会から孤立した孤島・セミシキラに女性だけが住むアマゾン一族のプリンセスとして生まれたダイアナが主人公のワンダーウーマン(ガル・ガドット)。王女として成長したダイアナは、女性だけの一族の女戦士として誰よりも強く逞しい戦闘能力をヒッポリタ女王の妹で、一族で最強の将軍・アンティオペによって鍛え上げられた。第二次世界戦争を想像させるフィクションナルな歴史を背景に、世界征服を企むドイツ・ナチズムもどきの「悪」と、アメリカイギリスなどの連合国もどきの「善」との激しい戦争が舞台。ある日、海岸上空で墜落事故を起こしたイギリス人スパイス、ティーブ・トレバー(クリス・パイン)が、毒ガスを開発しているドイツ軍の兵器工場からドクター・ポイズンの秘密の手帳を盗み、敵軍から飛行機で脱出するが、追っ手に撃墜されセミシキラ棟の沖合に墜落する。ダイアナはティーブ・トレバーを助け彼と共に「外」の世界・ロンドンに飛び出し、正義のために敵と戦う…。そのリアルな歴史ストーリに、本来のアメコミのワンダーウーマンのアマゾン族とギリシャ神話のストーリが合体して混ざっている。1本目は、誰よりも美しく超人間的な戦闘能力を持った女性戦士ダイアナが、ドイツの最前線に赴きドイツの毒ガス新兵器による大量虐殺を阻止するために戦う『ワンダーウーマン』(2017年、パティ・ジェンキンス 監督)でした。

 

≪アマゾーン≫の語源は、ギリシャ神話では軍神アレースとニュンペーのハルモニアーを祖とする女性だけの部族で、北方の未開地の黒海沿岸に住んでいたという。黒海はかつて「アマゾン海」と呼ばれ、実在した母系部族をギリシア人が誇張したといわれている。神話上の女性部族をスーパーウーマンとしてアメコミの主人公にして映画化したものです。

バットマンやスーパーマンなどアメコミ「DCコミックス」の中にする登場するスーパーヒーローたちの映画に、これまで時々姿を現したワンダーウーマンでしたが、今回の作品では「ワンダーウーマン」が、主人公になった。これまでは、TVシリーズで放映されてきたが、多分「ワンダーウーマン」を主人公とする映画は初めではなかろう…カナ。


私はもうスーパーヒーロなどアメコミ主人公の映画は観ないと思っていたのですが、ついついワンダーウーマン役のガル・ガドットのスタイルと美しさに見とれてしまいました。理屈抜きで、楽しめる映画でした。
 
2

2本目は、徳川家康(役所広司)を総大将とする東軍と、石田三成(岡田准一)率いる西軍が激突した1600年10月21日の、戦国時代を終わらせる天下分け目の合戦を描いた時代劇『関ヶ原』(2017年、原田眞人監督&脚本)でした。


昨今トンと本格的な時代劇がスクリーンに登場しないですが、久々に時代劇を見ました。司馬遼太郎原作の時代劇の映画化がどうして今頃映画になるのかな…と、興味津々の反面、些か胡乱にも思いました。が恐らく、NHKの大河ドラマの「女城主 直虎」の人気の影響なのか…ナ。諸国の武士軍団が群雄割拠して勢力争いをする戦国時代、勢力と武力と権謀術策をめぐらし、日本中で刀と血が乱れる戦国時代の始まりと時代背景を描いたNHKのTV時代劇なのだが、彦根藩の藩祖となった遠州井伊谷の女領主・井伊直虎(柴咲コウ)を主人公にして、そこには、乱世の名の通った戦国武将の今川義元、武田信玄、徳川家康等が登場する。「関ケ原」でも徳川四天王の一人として井伊直政が徳川方に出ています。 


 恥ずかしながら、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」などは学生の頃に夢中で読んだのですが、「関が原」はまだ読んでませんでした。改めて、この映画を理解する為にこの長編時代小説をこれから読もうかな…と思わせる作品でした。とりわけ、家康と石田三成のパーソナリティーは、司馬遼太郎独特の解釈があって、戦国武将にしては三成の天下国家の安泰を「善」とする志に対して、家康の政治権力を追求する貪欲な「悪」が、映画では対照的に描かれているナ、と感じました。これは原作者の人間像なのか、監督の人間観なのか、面白いですーネ。もしも原作を読んだ人がいれば、比較してお聞かせください。


特に忍びの犬である初芽(有村架純)が三成に寄せるうぶい恋心と、戦が終わったら諸国を共に旅しようと…と、初芽を女として扱う石田三成の恋心は、戦国時代劇にしては、面白い描き方ですーネ。これは原作にあるものなのか、映画で脚色されたものなのかな、と興味を持ちました。 



もう一つ、戦国武将が馬上で関ヶ原の決戦場を駆け巡る時に、母衣(ほろ)と言う、中に竹で編んだ駕籠のような骨組に赤や黄の布を被せ、背中全体で背負うような袋を乗せている姿を始めて見ました。この映画では、徳川家康も戦いの前にこの青色の布を被せた母衣の竹かごを自分で編んでいましたーネ。敵と味方を識別しやすいよう、或は、風で膨らんだ母衣は背後からの矢を防ぐ役割をしていた、といいます。


3


夜中に突然自宅へ侵入、顔をすっぽり隠したスキーマスクを被った覆面姿の、割礼した男性に暴行されレイプされたゲームソフト会社の女社長・ミシェル(イザベル・ユペール)のレイプ事件から始まる『エル ELLE』(2016年、ポール・ヴァーホーヴェン監督、フィリップ・ディジャン原作)でした。3本目は、殺人事件になるとか、警察の犯人捜査にもならず、しかしただ単にレイプ事件に終わらず、・ミシェルは警察に通報もせず、冷静に何も無かったかのようにテーブルから落ちて割れた割れたコーヒカップなどの掃除を始め、翌日直ぐに、撃退用の催涙スプレーを買い、ベットサイドに金槌や斧のような武器を準備したり、再びレイプ犯が侵入した時の対抗手段に拳銃まで備えた…。


原題の≪Elle≫は, フランス語で「彼女」を意味するようです。この映画が、何やらミステリアスでエロティックなサイコスリラーの雰囲気を持ったストーリが展開するのは、その被害者の彼女・ミシェルには過去に、彼女の父親が復活祭に近隣ストーリートの住人を軒並み襲撃して27人を殺害するという猟奇的な殺人事件を起こし、終身刑で未だ服役中で、幼少のミシェルはその現場に居合わせ、父親の隣にいた…という凄惨な幼児体験をトラウマに持ていたため、警察その物に嫌悪感を抱いていた。


覆面男のレイプ犯人は、再三の彼女の家に侵入してきたが、ミシェルと揉み合いの最中に、居合わせた息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)によって暖炉のマキで頭をたたき割られ撲殺される。マスクを剥ぎ取って、結局、レイプ犯は近所に住む金融関係に努めるトレイダー・パトリキだった。彼は信仰深い妻にもセックスの時には暴行を振るっていた異常性欲者だったようだ―ネ。


この作品は、フィリップ・ディジャンが2012年に上梓した小説『Oh...』を原作としている映画のようです。貧相な読書家である私は、ハヤカワ文庫から翻訳が何冊か出版されているにもかかわらず、初めて知る作家でした。最近文学の知識が貧弱になったなー。著者の作品は、映画公開作品としても過去に既に、『愛の犯罪者』(2013年公開、アルノー&ジャン=マリー・ラリユー兄弟監督)や『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(1986年、2012年にデジタル・リマスター版にてリバイバル日本初公開。ジャン=ジャック・ベネックス監督)が公開されています。ただ、この作品の印象として、現実がゲームの中の虚構のように、誰かの見えない手で脆くも崩れたり、操られたりするもの…、しかしそれを再び強固にするのもまた強烈な個性、あのミシェルの意志…、そこにミステリアスなエロスが絡んでいる…ということなのかな…と、感得しました。!!!「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督だから、エロスを武器に「戦う女」を描きたかったのかな・・・。



是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…

 

9月特選映画【22】★映画のMIKATA「ユリゴコロ」★映画をMITAKA

$
0
0






またまた掲載が遅れて申し訳ないです。漸く10月1日に設備管理関係の難しい試験の初体験も終わったので、ゆっくりと映画を見て、ブログを書くことができるようになりました。

 

さて、遅ればせながら9月の特選映画をアップロードします。どの作品も映画ファンにとって最早、新作とは言えないのかも知れませんが、9月はギリギリ、これは見逃せないという作品5本を忙しく夜遅く映画館で観賞しました。その中で選んだ9月の特選映画1本は、『ユリゴコロ』でした。映画宣伝をTVでも派手に紹介していないですが、出演者も吉高由里子、松山ケンイチ、松坂桃李たち一流キャストで、しかもストーリも面白いです。特に、吉高由里子はまだまだ魅力的な女優ですーネ!!!私は久々にこの邦画を傑作だと思います。


最近、自民党安倍政権の景気回復の経済政策を「アベノミクス」と呼んでいたが、それをモジッテ小池百合子都知事の立ち上げた新党「希望の党」の政策を捻って「ユリノミクス」と呼ぶらしいですーネ。ただ、私は小池さんの、総理の椅子を狙っているのかどうか、消費税増税をするのか、憲法9条改正をするつもりか…等々、心の中を私は「ユリゴコロ」と呼びたいですーネ!!!アレレレ、映画の題名になってしまったーナ。

まあーネ、法廷サスペンス映画『三度目の殺人』もありましたが、こんな裁判映画はもうカビ臭いのではないの…と、これが今の、現代社会の「刑事裁判」の問題点なの・・・???監督の社会感覚の古さに驚きました。弁護士役の福山雅治と吉田剛太郎の演技が鼻につきました。特に、吉田剛太郎はどの作品でも重々しいセリフのリズムと音程も、事ありげな顔の微妙な表情も細かい癖も一辺倒で、ある意味「剛太郎」節にもう見飽きた、飽き飽きしてきました…。もう一本の邦画、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」も、ホロリとこみ上げてくる、私もカタルシスを感じた人情映画でした。がただネー、演技上手とは言え、日本人のベテラン俳優は、樹木希林と西田敏行と役所広司しかいないのだろうか…と、ぼやきたくなります。それに、山田涼介村上虹郎寛一郎のアイドル3人組が余分で、作品を壊していました。洋画作品2本のリドリー・スコット監督もクリストファー・ノーラン監督も、流石ですーネ、時間を忘れさせる傑作でした…と、一応褒めておきます。


1

ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の町・ダンケルクに追い詰められた連合軍兵士たち、イギリス人とフランス人兵士が救出を求めて海岸沿いに逃げている戦場が舞台です。イギリスでは民間船に兵士救出のためにダンケルクへ向かうことが呼びかけられた。1本目は、その中でも、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ小さな船で向かうことを決意した航海が、映画の中心的なシーンとして映される。『ダンケルク』(2017年、クリストファー・ノーラン監督)でした。

欧州ではこの救出劇は有名らしいですが、『ダークナイト』(2008年、監督・脚本)、『インセプション/Inception』(2010年、監督・脚本)、『トランセンデンス/Transcendence』(2014年、製作指揮)など、SF映画に数多くの傑作を制作しているクリストファー・ノーラン監督が、まさか戦争映画を制作するとは思いませんでした。私には、この映画の見どころは、戦争映画なのだけれども、火薬と砲弾と、累々と横たわる血と死体の戦争風景ばかりでなく、戦争の激戦地の兵士の心を細かく描いた、心理劇仕立ては特徴かなー、ただその点だけでした。それ以上の破格な戦争映画の傑作では…ないな??? 


2

 

過去に殺人を犯し、服役後に食品会社で働いていた男が、現金窃盗がバレて解雇され、その恨みから工場の社長を河原で撲殺、さらに死体にガソリンをかけて火を付けた強盗計画殺人死体遺棄等の容疑で起訴され、犯行も自供していたので、容疑段階ですでに裁判員裁判で死刑が確実視されている殺人犯の三隅(役所広司)が主人公です。2本目は、彼の刑事裁判の弁護を引き受けた国選弁護人・重盛(福山雅治)が、何度か面会を重ねている内に、次第に殺人犯の容疑者へ、まず初めに犯行動機への疑念が生まれ、最後に本人が自供を翻して無罪を訴え、二転三転する三隅の犯行の供述に疑心暗鬼に陥るー、ある意味で結構リアルな法廷サスペンス映画『三度目の殺人』(2017年、是枝裕和監督&脚本)でした。


原作者がいる小説でなくて、是枝裕和監督が脚本家も兼ねているので、ストーリも監督の創作なのでしょうか…ネ。これまで是枝裕和が過去に監督した作品、『そして父になる』、『海よりもまだ深く』などは全て是枝裕和によるオリジナル脚本のようです。しかも、再びフォークアイドル・福山雅治を主人公にしているので、脚本創作の力量に自信を持っているのか…、それとも、映像を構成するのに製作しやすいのか…、俳優のキャラクターから言葉をひねり出しやすいのか…、俳優のセリフが光るシーンがあちこちにありましたーネ。


ただね、映画館で観賞している最中、浮かんだ初めの疑問は過去の一度の殺人事件は映画を見ていて分かるのですが、今回の殺人がどうして「三度目」なのかーナ、映画タイトルの意味がよく分からなかったです。三隅の「私は殺してはいない…」という無罪告白に対して、今更どうして自供を覆すのか、「面倒で厄介で困ったな…」という迷惑そうな顔で、検事たちが目くばせしながら再捜査再審理の出直し裁判に対して、裁判の効率を考えて、今まで通りの求刑で「やりましょう」というシーンがありました。

無罪の主張を無視した今の裁判制度の内幕といい加減さをあからさまに皮肉った映像でしたーネ。そこから想像できることは、「三度目の殺人」は国家による不条理な死刑判決による「殺人」なのかな…と推測しました。皆さんはこの私の解釈にどう思いますか???


3

 

2012年に、同じ児童養護施設で育った兄弟のような悪友たちが、東京に本社を持つ不動産投資会社「リトルドッグ」の女性社長が、施設を風俗に売却するといううわさを聞いて、見せしめのために強盗に押し入り、現金の入ったバッグを盗んて、悪事をした敦也(山田涼介)と村上虹郎(小林翔太)と幸平(寛一郎)の三人は、逃走の末に下町の古びた空き家「ナミヤ雑貨店」という看板のお店、たぶん何でも売っている万屋のような雑貨店に身を隠す。映画のストーリはここから始まりました。するとどうだろうか、3人が店の奥の畳の上で息を潜めて夜が明けるのを待っている内に、敦也は廃業しているはずの店の錆びたシャッターにある郵便受けから、封筒が投かんされるのを見る。


手紙は、32年の時間の壁を越えて1980年につながり、その手紙の文面は、その時代にもがき生活し、悩み苦しみを抱えていた人々と繋がった相談の手紙だった。次々に投函されて来た一通に、未来から経済や社会の動向や市場を予言したような返事を書いた。その返信を受け取った相手が、強盗に入った養護施設の理事だった「リトルドッグ」の女性社長・田村晴美(尾野真千子)であった。彼女は、アドバイス通りに不動産会社を立ち上げ、土地投機で大成功した。3本目は、単にタイムトラベルの伏線の中で描かれた人情劇物語『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2017年、廣気隆一監督、斉藤ひろし脚本、東野圭吾原作、)でした。

ストーリをあらまし書いてしまったので、もう書くことがなくなってしまいました。円環のように今の時間に生きる人間と昔の時間に生きていた人間が、雑貨店店主の西田敏行を中心にメヴィウムの輪のように連続する映画でした。


私は丁度上映館で9/23の初日公開の舞台挨拶の全国同時中継から見ましたが、出演俳優の挨拶ばかりで見る価値が有りませんでした。映画の中でギターを抱えた麦ちゃんの清楚な歌がありましたが、ただね、舞台挨拶の中で、山下達郎の主題歌「REBORN」を歌うセリ役の門脇麦の生の歌が聞きたかったですーネ。 海岸で踊っていた人は誰だったのかな???

4

 

冷凍休眠中の2千人の入植者と、1千体以上の人体卵「胎芽」を乗せ、惑星「オリガエ6」に向かって宇宙移住計画のために飛行中の「宇宙船コヴェナント号」は、宇宙空間に羽根を広げてエネルギー充電中に宇宙嵐「ニュートリノ」の衝撃波により大きなダメージを受け、船長ブランソンはカプセルの中で焼死するなど、船体と人員に大きな損害を受けた。4本目は、宇宙船の修復作業に、突然、雑音混じりの微かな信号、「カントリーロード」のような歌が受信され、発信先を解析すると、オリガエ6より近い惑星だと判明する。そこから、地球環境に近いこの謎の惑星へ進路と目的地を修正する『エイリアン:コヴェナント/ALIEN: COVENANT』(2017年、リドリー・スコット監督)でした。

「エイリアン」はこれまで、シリーズ第1作の エイリアン(監督: リドリー・スコット監督、1979年)、 第2作のエイリアン2(ジェームズ・キャメロン監督、1986年) 、第3作のエイリアン3(デヴィッド・フィンチャー監督、1992) 、第4作エイリアン4(ジャン=ピエール・ジュネ監督、1997年) が上映されています。今回公開の『エイリアン:コヴェナント』は、第5作目でした。


地球に帰還した宇宙船に残されたリブリーの体のDNAからからエイリアンを摘出し、養殖をはじめる。地球の平安のために自ら死を選んだリブリーだったが、それも無駄になった結末でした。私は、第4作目の続編として、エイリアンを宿して自殺したリプリーからエイリアンを摘出し、養殖、エイリアンを軍事利用しようとする軍隊が、エイリアンをどう利用とするのかを見たいなと思っていましたが…。エイリアンと人間の戦争のシーンが見られたら、さぞかし面白いだろうな…と期待してましたが、それに反して、第5作目は、シリーズ第1作を遡ったストーリになりました。謂わば、リドリー・スコット監督が第1作目で映像に残したかった部分なのだろう…カナ?。

 

5

 

山荘でレストランを経営する亮介(松坂桃李)は始めたばかりの仕事に忙しく働き、共に働く従業員の千絵(清野春菜)を婚約者として父親・洋介(松山ケンイチ)にも紹介する、順風満帆の私生活を送っていた。5本目は、ある日突然、その彼女が姿を消したところから始まるサスペンスともホラーともサイコ映画ともいえる『ユリゴコロ』(2017年、熊澤尚人監督&脚本、沼田まほかる原作)でした。

 

父がすい臓がん?によって残る短い余命と宣告されていた。さらに婚約者千絵は、漸く逃げた元暴力団の夫につきまとわれ、売春婦として監禁されていた。父の遺品の中から洋介は1冊の古いノート、「私のように平気で人を殺す人間は、 脳の仕組みがどこか普通とちがうのでしょうか」と書かれたノートを見つける。そこには人間の死でしか心を満たすことができない、「ユリゴコロ」と名付けられた精神疾患の女性の過去の秘密が書かれていました。亮介の母、父・洋介の妻・美紗子(吉高由里子)の衝撃的な告白が綴られていた。

久々に見た吉高由里子の演技がよかったです。もう少し千絵役の清野春菜の演技シーンが見たかったです。近頃の邦画としては出色の作品ではないかと思いました。単なる怖いだけのホラーでもない、単にグロテスクにナイフと殺人と暴力と血を見るだけのスリラーでもない、なんか邦画の新しい潮流を感じました。できたならば、原作に対して作者が脚本に参加して、もう少し脚本に工夫がほしかったな…。最後の重りの鉄をつけてダムに自殺させようとするシーンは、ややナンセンスで滑稽だよな。


いつの間にかめっきり涼しく秋めいてきました、「今はもう秋…」などと感傷的な気分になりそうです。でもそんな沈んでもいられないよな。一転、日本政治の混迷を思うと感傷どころではない、憂鬱になりそうです。私たち市民は、政治と経済によって掘られた社会制度の「溝」と、繰り返される政治家の口当たりのよい甘い「選挙演説」の中を、時に疑問と怒り、感傷と諦めの感情とともに昭和平成の大河の怒涛に翻弄されながら流されていく他はないのかな…?!


(是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)

10月DVD特選映画【23】★映画のMIKATA「ナチズムとホロコースト」★映画をMITAKA

$
0
0



皆さん、3連休をどのようにお過ごしですか…?私は昨夜、黒沢清監督の「散歩する侵略者」を見てきましたが、見るに堪えない大変な駄作でした。彼の製作した映画は以前より難解で映像そのものが抽象的で、シンボリックなショツトが多いな…、映画としての娯楽性を無視した作品が多いな…と思っていましたが、今回は誰のまねをしたのか、劇団上演作品を映画化したので、彼の良さが消えていて、滑稽で漫画チックな駄作に終わっていました。3連休には是非、家に閉じこもって、ここに挙げた「ナチズムとホロコースト」の作品をジックリ観賞してください。


(赤文字は既に映画館で鑑賞した作品と映画ブログで紹介した作品です)

①『ミケランジェロの暗号』(2011年公開、ヴォルフガング・ムルンベルガー 監督)
②『黄金のアデーレ 名画の帰還』(サイモン・カーティス監督、2015年公開)
③『ミケランジェロ・プロジェクト』(2013年公開、ジョージ・クルーニー監督。)
④『アドルフの画集』 (2002年公開、 メノ・メイエス監督)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⑤「顔のないヒットラーたち」 (2014年公開、ジュリオ・リッチャレッリ 監督)
⑥「スベャリスト/自覚なき殺戮者」(1999年公開、エイアル・シヴァン監督)
➆『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』(2015年公開、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督)
⑧『愛を読むひと』(2008年公開、スティーヴン・ダルドリー監督、ベルンハルト・シュリンク原作。デヴットヘア脚本)
⑨『ハンナアレント』(2012年公開、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⑩「黄色い星の子供たち」 (2010年公開、ローズ・ボッシュ監督)
⑪「サラの鍵」(2010年公開、ジル・パケ=ブランネール監督)

⑫「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998年、ロベルト・ベニーニ監督)
⑬「縞模様のパジャマの少年」(2008年、マーク・ハーマン監督)
⑭「さよなら、アドルフ」 (2012年公開、ケイト・ショートランド監督)
⑮「悪童日記」 (2013年、ヤーノシュ・サース監督)
⑯「バティニョールおじさん」 (2002年公開、ジェラール・ジュニョー 監督)

⑰『ソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⑱「あの日のように抱きしめて」 (2014年、クリスティアン・ペッツォルト監督)

⑲「シンドラーのリスト」 (1993年公開、スティーヴン・スピルバーグ 監督)
⑳「アンナとロッテ」 (2002年公開、ベン・ソムボハールト監督)

㉑「ヒトラーの贋札」 (2007年公開、ステファン・ルツォヴィツキー 監督)

㉒「ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼- (2002年公開、コスタ=ガヴラス監督)

㉓『ワルキューレ』(2008年公開、ブライアン・シンガー監督)

㉔『杉原千畝 スギハラチウネ』 (2015年公開、チェリン・グラック 監督)

㉕『ヒトラー暗殺、13分の誤算』 (2015年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)

㉖『帰ってきたヒトラー』 (2015年公開、ダーヴィト・ヴネント監督)

㉗『奇跡の教室/受け継ぐ者たちへ』 (2014年公開、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 監督)
㉘『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016年公開、スティーヴン・ホプキンス 監督

㉙『ソフィーの選択』(1982年公開、アラン・J・パクラ監督)

㉚『手紙は憶えている』 (2015年公開、アトム・エゴヤン監督)

㉛「わが教え子ヒトラー」(2007年公開、ダニー・レヴィ 監督)

㉜「ディファイアン」(2008年公開、エドワード・ズウィック 監督)
㉝「アイアン・スカイ」( 2012年公開、ティモ・ヴオレンソラ監督)

㉝「善き人」(2008年公開、ヴィセンテ・アモリン監督)

㉞「サウルの息子」 (2015年公開、ネメシュ・ラースロー監督)
㉟『戦場のピアニス2002年公開、ロマン・ポランスキー監督)
㊱『夜と霧』(1955年公開、アラン・レネ 監督)
㊲「灰の記憶」(2002年公開、ティム・ブレイク・ネルソン 監督)

㊳「謀議」 (2001年公開、フランク・ピアソン監督) 

㊴「ナチスが最も恐れた男」(2008年公開、エスペン・サンドベリヨアヒム・ローニング 監督)

㊵「囚われのサーカス」(2008年公開、ポール・シュレイダー監督)

㊷「アウシュヴッツ行最終列車~第三帝国ホロコースト」(2006年公開、 ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー監督)

㊸「消えたその声が、その名を呼ぶ」(2015年公開、ファティ・アキン 監督)
㊹『白バラの祈り』(2005年公開、マルク・ローテムント監督)

㊺「エリート養成機関 ナボラ」(2004年公開、デニス・ガンゼル監督)

㊻「ヒットラー最後の12日間」(2004年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル 監督)

㊼「カティンの森」(2007年公開、アンジェイ・ワイダ監督)

㊽「あの日あの時愛の記憶」(2011年、アンナ・ジャスティス監督)

㊾「誰がために」(2008年公開、オーレ・クリスチャン・マセン 監督

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

㊿「ブラックブック/ZWARTBOEK/BLACK BOOK」 (2006年、ポール・ヴァーホーヴェン監督)

 

51≫「アイヒマンの後継者/ミルグラム博士の恐るべき告発}(2015年、マイケル・アルメレイダ監督)

 

52≫「ナチス、偽りの楽園/ハリウッドに行かなかった天才」(2011年、マルコム・クラーク監督)」

 

53≫「愛の嵐」(1974年、リリアーナ・カヴァーニ監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回のDVD特選映画≪ナチズムとホロコースト≫は、最近観賞したDVD4本を追加掲載しました。そろそろこのテーマの≪ブックレビュー≫を掲載しないとな…と思うのですが、なかなか1冊目の本がきまりませんネ。全く根拠のないアーリア人の純潔性と優秀さを守るために、ユダヤ人弾圧の背景になった「人種偏見」の思想的背景を論破する、G・ルカーチの『理性の破壊』にしようかな、と思ったのですが、私の本棚からなかなか見つかりません。確か、白水社の著作集を買ってあった筈なのだがな…。
 

ブラックブック/ZWARTBOEK/BLACK BOOK』 (2006年、ポール・ヴァーホーヴェン監督)。

新作公開映画の紹介記事を「特選映画」に掲載していますが、9月掲載のブログにゲームソフト会社の女社長・ミシェル(イザベル・ユペール)のレイプ事件『エル ELLE』(フィリップ・ディジャン原作)でポール・ヴァーホーヴェン監督の作品をとりあげています。「ブラックブック」も彼の監督作品です。第二次世界大戦中のチス・ドイツ占領下のオランダを舞台に、ドイツ軍の統治が手薄な南オランダへ船で逃げる途中の、女性歌手ラヘルと裕福なユダヤ人家族が、逃亡中に裏切り者の密告でドイツ兵の襲撃を受け、ラヘル以外は皆殺しにされる物語でした。彼女は復讐を忘れずにユダヤ人であることを隠し、ドイツ軍の情報将校ムンツェ大尉の情婦のような役割で秘書になり、スパイ活動を始める。オランダ出身のポール・ヴァーホーヴェン監督ならではの、故郷オランダで制作した戦争&サスペンスです。


ポール・ヴァーホーヴェン監督は、この作品以前にハリウッドで、犯罪都市と化した近未来のデトロイトで、自動車産業で成功した巨大コングロマリット企業・オムニ社は、警察を民営化して、凶悪犯罪対策に、サイボーグ警官、ロボット警官を配属した『ロボコップ』(1975年公開)や、地球外の惑星を舞台にアーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション『トータルリコール』(1990年公開)や、シャロンストーン主演のエロティック・サスペンス『氷の微笑』(1992年公開)や、巨大化した昆虫と地球人との戦争を描いたSFアドベンチャー『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年公開)など、ハリウッドで次々ヒット作を公開していた。映画好きにはお馴染みの作品ばかりです。この「ブラックブック」は、監督が満を持して公開した力作です。


7才頃までオランダのハーグに住み、近くにナチスの軍事基地があったせいで連合軍の激しい空爆を受け、故郷の街の道端に戦争の爪あとそのものの悲惨な死体が転がるなど、戦場の生き死の凄惨な環境が生活の隣にあった影響か…、同じ≪ナチズムとホロコースト≫の作品でも、サスペンス色が濃厚で、ヤハリ監督独特の戦争作品のスタイルですーネ。

 

ユダヤ人であるにもかかわらず、名前をラヘルからエリスに変えて、ドイツ軍将校のムンツェ大尉の情婦になってスパイ活動を始める。アウシュヴィツに収容された女性には、ガス室に送られるか、女としての美貌と肉体がドイツ軍将校の目に留まり、事務室の秘書として生き延び、情婦になったユダヤ女性の悲哀のシーンが映画の中には数々ありました。中には、自ら自殺する女性もたくさんいました。私がすぐに挙げたい作品は、倒錯したエロス&サスペンス『愛の嵐』(1974年、リリアーナ・カヴァーニ監督)です。ウィーンのホテルにアメリカから有名なオペラ指揮者と妻・ルチアが訪れるが、そこには、戦時中はナチス親衛隊の将校で、今は素性を隠して、戦争犯罪者としての告発を恐れ乍ら夜間のフロント兼ポーターとして働いていたマクシミリアンがいた。ある日、ルチアは成熟した女性に成長して目の前に突然現れた。ルチアは、13年前に彼が強制収容所で性の玩具として弄んだユダヤ人の少女であった、というストーリでした。


51≫『ナチス、偽りの楽園/ハリウッドに行かなかった天才』(2011年、マルコム・クラーク監督)。1930年代にベルリンで俳優兼映画監督として人気を博したユダヤ系ドイツ人、クルト・ゲロンの生涯を描いた作品です。『嘆きの天使/DER BLAUE ENGEL』(1930年、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督)で、踊り子のローラ役にマレーネ・ディートリヒ。踊り子に惚れてメロメロになった教授にエミール・ヤニングス。クルト・ゲロンも俳優として出演しているのだが、地方巡業する劇団のデブの団長役の俳優かな?DVDで観賞しましたが、映画シーンの中ではハッキリ分からなったですーネ。


ナチズムとホロコースト≫との関係ですが、オランダでドイツ軍に捕えられ、収容された先は、プラハ北方56キロのところにある小さな要塞都市テレージエンシュタット(テレジーン)あるゲットーであった。国家保安本部長官であるラインハルト・ハイドリヒ親衛隊大将は、テレージエンシュタットに「特権的ドイツ系ユダヤ人」を移住させていった。「特権的ドイツ系ユダヤ人」とは、ドイツ系ユダヤ人のうち、ゲットーで安住することを許された者たちで、例えば、ユダヤ人組織の役員、名士、第一次世界大戦でドイツ軍やオーストリア軍に従軍して勲章を受けたか負傷をした者、非ユダヤ人と結婚している者、65歳以上の者などで、特権を与えられた者たちでした。ナチスドイツが強制収容所のユダヤ人が収容所で楽しく暮らしている姿を偽装しようと「楽園」と称して世界に宣伝した「テレージエンシュタット強制収容所」であった。そこでゲロンは「楽園」を演出したナチスの宣伝映画の監督を命じられたのだった…。しかし、「テレージエンシュタット」の実態は、伝染病が蔓延、後に容赦なくアウシュヴィッツ強制収容所へと移送されていった。オーストリアから送り込まれたユダヤ人は1万5000人、ドイツからテレージエンシュタットに送り込まれたユダヤ人の総計は4万2800人といわれています。クルト・ゲロンもまたアウシュヴィッツ強制収容所でなくなっています。


52≫『アイヒマンの後継者/ミルグラム博士の恐るべき告発』(2015年、マイケル・アルメレイダ監督)。ナチスドイツのアドルフ・アイヒマン裁判が始まった1961年に、社会心理学者スタンレー・ミルグラムは、ナチスドイツや強制収容所内で、「人間はなぜ権威へ服従してしまうのか…」を実証する実験、「電気ショック」を被験者に対して電圧を次第に上げていく「アイヒマン実験」で検証した。この作品は、ファシズムの権威に服従し、人間性を喪失し冷淡な殺戮マシーンに変貌する極限の人間の心理状況を実験した有名な「アイヒマン実験」の全貌を描く実録ドラマです。私も普通の市民が何故、どうして非人道的な殺戮の道具に変貌するのか…の疑問抱いていた一人です。『愛を読むひと』(2008年公開、スティーヴン・ダルドリー監督、ベルンハルト・シュリンク原作。デヴットヘア脚本)の作品や、ハイデガーの弟子で、アメリカに亡命したユダヤ人女性哲学者『ハンナアレント』(2012年公開、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)が出した結論は、第一次世界大戦後に『支配の社会学』(Soziologie der Herrschaft)でマックス・ウェーバーが発表した「官僚制」と「形式合理性」の非人間的な問題点と同じであった…。




10月上旬特選映画【24】★映画のMIKATA「アウトレイジ 最終章」★映画をMITAKA

$
0
0

 






2017年のノーベル文学賞を長崎県出身の日系イギリス人で作家のカズオ・イシグロさん(62歳)に授与されました。出版社だけが本を売るために村上春樹のノベル文学賞受賞を躍起になって画策宣伝している、マスコミ受けする流行作家でなくてよかったです。授賞式は12月10日にストックホルムで行われそうです。既に彼の文学作品、『日の名残り/ THE REMAINS OF THE DAY 』 (1993年公開、ジェームズ・アイヴォリー 監督)、『わたしを離さないで/  NEVER LET ME GO 』(2010年公開、マーク・ロマネク 監督)は映画化され、特に、「わたしを離さないで」は、私も彼の現実と未来、フィクションとリアリティーがグラデーションのように境目が分からなく霞んでいる不思議な世界に魅了されました。

 

10月上旬の特選映画をアップロードします。今回3本を映画館で観賞、今月上旬に選んだ特選映画1本は、『アウトレイジ 最終章』でした。


1

 

幼少期に脳性マヒを患い、クルマ椅子生活をする重度の身体障害者・クマ(リリー・フランキー)は、自身自身のセックスへの欲望をあからさまに率直に書き、障碍者の性的欲求を書いた本の出版記念会で講演していた。クマは、障害者の持つ性的欲求と願望への理解を訴えるための活動を続けていた。ある出版講演会で、クマ前に人格障がいを抱えた風俗嬢のミツ(清野菜名)が現れ、クマの「障害」を愛し、世話をするようになる。1本目は、障碍者でも蔑視と差別と厄介者の視線で見られることなく、幸せになるための愛の革命と称して偏見に挑んでいく、障碍者が主人公の映画〚レボリューション』(2017年松本准平監督&脚本)』です。

障害者の性の無理解を世間に訴え続ける活動家・熊篠慶彦の実話に基づく映画のようですーネ。彼は『たった5センチのハードル 誰も語らなかった身体障害者のセックス』(ワニブックス、2001年)、『身体障害者の性活動』(三輪書店、2012年)などを出版しています。これらの本は、松本准平監督の映画のバックボーンになていると推測します。私は過去にこのブログで、«障害者と映画»というテーマで関連する映画2本と2冊の本を紹介しています。

一本は、首から下が麻痺して動けない38歳の青年が、性を知らずに童貞のまま死ぬのは嫌だーと、セックスボランティアーの女性を相手に童貞を喪う『セッションズ/THE SESSIONS』 (2012年、ベン・リューイン監督)、一本は、障碍者相手に専門の出張ヘルス譲を描いた『暗闇から手をのばせ』 (2013年、戸田幸宏監督)でした。障碍者の性を理解したいという人は、是非この2本の作品も見る価値が有ります。さらに、一冊の本は 『癒しのセクシートリップ/わたしは車いすの私が好き!』(安積遊歩著、嶋田ゆかり編集、太郎次郎社、1993年)で、確かこの本の中にも熊篠慶彦のことが書かれていたと記憶します。もう一冊は、ルポライターの書いた『セックスボランティア』(河合香織著、新潮社、2004年)です。邦画の場合は、内容的には、障碍者でも性欲はある…という訴える作品でした。この「パーフェクト・レボリューション」もまた、その延長にありました。ただ、海外作品「セッションズ」では、障碍者の性欲を満足させるセックスボランティアの女性たちが、ヨーロッパの社会制度の中で組織化されている障害者の性が映画化されています。
松本准平監督がどうして障害者の「性」をとりあげる映画を製作したのか…、その制作意図を吐露したインタビューがないか探したのですが、チョット見つかりませんでした。見つけたら後で追加します。何方か知っている方がいましたら教えてください。監督の創作動機を探りたかったのですが、残念です。ひいて言えば、車いすに身を預けいたクマを海岸から海の中へ沈めようとしたミツが接近禁止になって、一年後に再びクマと会ったが、あれはその間、介護ヘルパー恵理(小池栄子)による精神保健福祉法29条の精神障害者を強制的に精神病院に幽閉する「措置入院」だったのでしょうかーネ。チョットそのあたりが映画ではよく分からなかったです…!!! 


2

関東の山王会と関西の花菱会の間で起きたヤクザの抗争から、大友組の大友(ビートたけし)は、戦後間もない上野の闇市と混乱時代に日本の裏社会を牛耳った韓国人の国際的なフィクサーである張会長(金田時男)の庇護の下で、韓国の済州島に身を潜めていた。ある時、韓国で女遊びをしていた花菱会の花田(ピエール瀧)が、売春婦と騒ぎを起こし、大友が仲介しナシを付けたが、部下を殺害された。この事件を発端に、大友は復讐のために日本に帰ってきた…。 2本目は、花菱会の組長・野村(大杉漣)を殺害して、ヤクザの抗争を完結する『アウトレイジ 最終章』(2017年、北野武監督)でした。

 

大友組会長を自ら演じる北野武主演&監督の「アウトレイジ」(2010年、プロデューサー: 森昌行 & 吉田多喜男 )、「アウトレイジ ビヨンド」(2012年)に続くシリーズ第3弾の「最終章」でした。TVで旧作の二作品とも放映がありましたので、ストーリの継続ははっきりしました。が、かなり続編の時間的空白がありましたーネ。拳銃がぶっ放され、やくざがバタバタ死んでいくバイオレンス・アクションに変わりはないのですが、最終章では、10月1日にアメリカのネバダ州ラスベガスで起きた無差別銃乱射事件で、59人が死亡した殺戮以上に、激しいバイレオンスでした。


もんもんを体中一面に彫った花菱会の花田役ピエール瀧と因縁を付け、「バカヤロー、ナメルンジヤーねえよ・・・!!」という啖呵をきるセリフに、漫才のセリフと同じだ…と、思わず笑ってしまいました。

 

ケチをつけるとすれば、巨大組織の暴力団が金儲けのために、繁華街の水商売や風俗からミカジメ料をかき集める、麻薬に手を出す、売春、企業恐喝以外に、もっと巧妙に株式投資先物取引や、土地投機地上げ屋など、悪らつな「経済」原理から金をひねり出す「経済ヤクザ」に様変わりした…とはよく言われますが、花菱会の内紛で本家会長・関内 役の北村総一朗に代わって、山王会本家会長に就任した大杉漣役の 花菱会長「野村」が娘婿で、元証券マンというストーリ設定は無理があるのではないのかな…。


「アウトレイジ」シリーズの次に何を撮るかな?どんなシーンで自作自演の映画に顔を出すのかな?チョット興味があります。私としては、ヤクザの反対側に位置する政治に関与する宗教団体、「政界」を操りうまい汁を吸う官僚組織、高齢化社会の金満家の財産を根こそぎ収奪する福祉企業の『介護団体』等々を舞台に映画を制作してほしいですーネ。


3

鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が、数日間行方不明になり、記憶喪失者のように朦朧とした意識でフラフラと帰宅する。顔は同じでも別人格の他人のような言葉使いに、医者に見せるが、診断は一時的な記憶喪失であった。片手に自宅に戻った制服姿の女子高校生が、母親を殺して異星人が憑依した血だらけの姿で街を朦朧とふらついていた。政府は原因不明の細菌による感染だという噂を流し、病院には痴ほう症のような症状の市民が溢れた…。

真治が明かすには、「地球を侵略しに来た異星人」と告白する。彼は地球人から次々に「自由」「仕事」「愛」だとか、人間の意識から≪概念≫を収奪する。すると、。概念を奪われた金魚を引きこもりの青年は、心の中の拘りと意識の縛りがなくなったと言って、却って感謝する。デザイナーの鳴海がデザイン会社の社長から短期間仕上げなくてはならない忙しい仕事を任されながら、新しいデザインを提出したところ、旧い作品の焼き直していいんだよ…、「君は仕事っというものを解ってないね、仕事って何だと思うんだ」となじられた迫られた時に、慎司が現れて社長から仕事の≪概念≫を意識からスポイルしてしまう。侵略者は人間の意識の中の様々な≪概念≫を集めることで地球征服の一歩とするようですーネ。

第3作目は、異星人に体を乗っ取られ朦朧とした記憶喪失のような症状を見せる市民が街に溢れ、不安と恐怖が町中に満ちるSF&ホラー映画『散歩する侵略者』(2017年、黒沢清監督)でした。

黒沢清監督の作品なので、これは見逃せないな…と思い急いで映画館へ行きましたが、率直に行って映像作品としては、何の感動も刺激も受けないバカげた作品のように見えました。劇作家・演出家の前川知大が結成した劇団イキウメの舞台を映画化した作品のようです。舞台の上で俳優が身体と言葉で表現する人間と地球の危機は、表現の臨場感があるのかもしれないが、元々、彼の製作する映画は以前より難解で映像そのものが抽象的で、シンボリックなシーンが多いな…、映画としての娯楽性を無視した作品が多いな…と思っていましたが、今回は誰のまねをしたのか、劇団上演作品を映画化したので、彼の映像の良さが消えていて、滑稽で漫画チックな駄作に終わっていました。

 


(是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)

11月下特選映画【25】★映画のMIKATA「猿の惑星:聖戦記」★映画をMITAKA

$
0
0






10月下旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、今月下旬に選んだ特選映画1本は、『猿の惑星:聖戦記』でした。 1968年のシリーズ第1作『猿の惑星』以来、人類の滅亡をメインテーマにシリーズが展開されてきましたが、依然人類は核戦争を廃絶できずに、最後に悪性ウィルスによって絶滅していくというのは、何かしら人類の終末を予言させますーネ。猿を全滅させようとする大佐も最愛の子供を猿ウィルスによって亡くした猿への憎悪であり、家族愛だったが、シーザの人間への復讐もまた子供の命を奪われた憎しみだった・・・。まるで現代の黙示録のような作品でした。邦画では、阪本順治監督の日系二世ボリビア人フレディ前村の激動の半生記を描いた『エルネスト』は、熱の入った秀作でした。私もキューバへ行ってみたくなりました。


1

 

1本目は、シリーズ第1作SF映画『猿の惑星』(1968年公開、フランクリン・J・シャフナー監督、ピエール・ブール原作)のリブート版(基本的要素は温存して、新しいストーリを展開する)の、『猿の惑星:創世記/ジェネシス』(2011年、ルパート・ワイアット 監督、リック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー 脚本)と『猿の惑星:新世紀/ライジング』(2014年、マット・リーヴス監督、リック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー&マーク・ボンバック脚本)に続く第3弾の『猿の惑星:聖戦記』(2017年、マット・リーヴス監督、マーク・ボンバック&マット・リーヴス脚本) でした。

シリーズ第1作のSF映画『猿の惑星』は、先日TVで初めの2作がまとめて放映されていたので、見ていて昔の懐かしい場面を思い出しました。猿が地球の主人公になって、猿が人間を奴隷にしている…というストーリは、人間文明の崩壊というパラドキシカルな映像としてはショッキングでした。リブート版、『猿の惑星:創世記/ジェネシス』では、元は老人の痴呆症を改善する開発中の新薬でしたが、ところが検体のチンパンジーに投与したところ、猿の知能が驚異的に発達、檻の中の実験中のチンパンジーが凶暴になり人を襲い、警備員は猿を射殺、開発は中止になる。ところが、射殺されたチンパンジーは赤ん坊「シーザー」を妊娠していた。研究員ウィルはその小猿を引き取り、我が子のように育てる…。ところが、隣人とのトラブルでシーザーは類人猿保護施設の檻の中に閉じ込められる…。


猿と人類との戦争がここから始まる。続編の猿の惑星:新世紀/ライジング』では、シーザーは猿の英雄となり、猿を率いて森の中に独自の文明を築き始める。人類は、悪性ウィルス「ALZ-113ウィルス感染症」(猿インフルエンザ)の蔓延によって90%が死滅してしまい、人間文明の滅亡の危機を迎えていた…。猿対人類の全面戦争という地球の終末事的事態で終わる。続編の『猿の惑星:聖戦記』では、人間並みの高度な知能と思考を持った猿と人類が全面戦争に突入してから2年後、猿の群れを率いるシーザーは、生き残った人間たちの奇襲を避けるために森の奥深くの洞窟に身を潜めて平和に暮らしていた。が依然、執拗に猿を攻撃する軍隊のリーダーであるマカロック大佐(ウディ・ハレルソン)が、森を襲撃して来た。森の奥は決してシーザー達にとっては安住の土地ではなかった。


猿の惑星:聖戦記』は、旧約聖書のようなエピソードと映像の連続でした。大佐との無激戦に勝ち、囚われた仲間の猿たちを解放して、シーザーは勝利を手にするが、人間の手先となって猿に鞭を振い、攻撃の手伝い役をする猿、コバ派の裏切り者の「エイプ」を殺したシーザーは、「汝、殺す無かれ」というモーゼの十戒に似た戒律「エイプはエイプを殺さない」を破り、それを最後まで悔み乍ら死んでいく・・・。高度な知能を持ったエイプたちの辿り着いた安住の地は、人間が近寄ることのない、水が満々と湧き出る砂漠の果ての静かな土地であった。猿ウィルスに免疫のある生き残った口のきけない聾唖者の少女は、新しい人類の「イブ」になるのかな…。この作品の全貌は映画館で実際に感動してください…。


2


1962年秋、授業料無

11月上旬特選映画【26】★映画のMIKATA「ドリーム」★映画をMITAKA

$
0
0




11月上旬の特選映画をアップロードします。今回、『女神の見えざる手』『ゲット・アウト』『ドリームブレードランナー 2049ナラタージ』の5本を映画館で観賞、11月は通算で5本を観賞しました。あれこれ迷った末に、アメリカらしい人種偏見にまともに挑戦した作品を選びました特選映画1本は、『ドリーム/HIDDEN IGURES』でした。そろそろ年末なのでオスカーのアカデミー賞作品賞を狙った傑作秀作映画が軒並み多数公開されています。『ゲット・アウト』はホラー&スリラー&犯罪映画がミックスされた作品でドキドキしました。これもある種の人種差別を題材とする映画でした。『女神の見えざる手』も銃規制法案を成立させるためのアメリカの現代的なテーマを題材としています。この作品も楽しめました。やはりハリウッドの映画人の関心はエネルギシュで活発で社会的ですーネ、常に映画のテーマは、片足は娯楽性を追求しながら、片足はアメリカの社会的問題を追求していますーネ、これは素晴らしいです。

 





1

1本目は、アメリカ議会の裏で政治家に圧力をかけて議会の政策を陰で動かす、巧妙で狡猾で緻密な頭脳を持つ女性ロビイスト、エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)が、銃所持を後押しする「全米ライフル協会」と大物上院議員からの依頼を断って、銃規制の法案を議会に通過させようとする小さな圧力団体に移る、サスペンスめいた社会派の政治映画『女神の見えざる手』(2016年、ジョン・マッデン 監督)でした。一言で言って、アメリカの銃社会の内実を抉るかなりリアルでジャーナリスティックな政治映画でした。


アメリカの銃社会ではこれまで数々の無差別銃乱射事件がありました。これらの銃乱射による凄惨な殺戮の歴史を見ると、当然アメリカ国内においても銃規制の法案の声は起こっています。つい先日、2017年10月1日にアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで発生した「ラスベガス・ストリップ銃乱射事件」はまだ記憶に新しい事件ですーネ。スティーブン・パドック犯人は、隣接する32階のホテルから、ラスベガス・ヴィレッジで開かれていた「カントリー・ミュージックフェスティバル会場」に向けて自動式拳銃で弾丸数千発砲を発射、546人が負傷、59名が死亡した。これはアメリカ史上最悪の無差別銃乱射事件でした。


次いで、2016年6月12日未明にアメリカ合衆国フロリダ州オーランドにある同性愛者が多数集うゲイナイトクラブ「パルス」で、イスラム主義武装グループのオマル・マティーンがAR-15シリーズの自動小銃を乱射した後、店内に立てこもった「フロリダ銃乱射事件」では50名が死亡した。


次いで、在米韓国人チョ・スンヒにより2007年4月アメリカ合衆国バージニア州のバージニア工科大学で発生した銃乱射事件では33名が死亡した「バージニア工科大学銃乱射事件」があった。

こんな銃乱射事件が起こるたびに「銃規制」の問題が声高に叫ばれるのだが、ラスベガスで起きた銃乱射事件にかんして、全米ライフル協会(NRA)の支持を受けるトランプ大統領は「銃規制」に言及していない…。だが、これまで銃規制に反対する立場を表明しているので、トランプ政権下で規制法案は成立しそうにないですかーネ。


銃規制に反対する主張、銃所持を擁護する論陣は、アメリカ合衆国憲法修正条項第2条に定められた「武器を所持して携帯する権利」を根拠にしている。それを支持する圧力団体がアメリカ合衆国の銃愛好家約400万人以上が登録する「全米ライフル協会」であり、武器メーカーからの潤沢な政治献金が政治家へ流れ、共和党保守層の支持は強力で堅いです。元々、北軍の将軍ジョージ・ウッド・ウィンゲートを中心に南北戦争に勝った北部出身者、銃販売業者や銃愛好家などにより設立された教会ですが、彼らは、「銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ」というオピニオンで反論している。だから、アメリカの拳銃所持の歴史は、一朝一夕でコンセンサスを得られるほど浅くはないです。協会には、元合衆国大統領のグラントやブッシュ、元会長の俳優チャールトン・ヘストンやチャック・ノリスなどが名を連ねています。

 

敏腕の女性ロビイスト、エリザベス・スローンが、銃所持規制法案を議会に通過させようと知力と策謀を尽くして対立する圧力団体(ロビイスト)の政治力学は、こんな背景を持っています…。その分厚い歴史と背景のイデオロギーを知れば知るほど、サスペンス&犯罪の絡む政治映画、アメリカに住んでいたならば傍観しできない、生活と密着した現実の政治テーマであり、リアルなドラマですーネ。


だが、最後の最後で公聴会で追い詰められたエリザベス・スローンが、先の先の一手を繰り出す場面ー、ゴキブリに仕掛けた隠しマイクが車の中の議長と上院議員の密談ー、賄賂と策略を暴く逆転シーンは、痛快でした―ネ。こんなに頭のいい女性が本当にいるのかな…と、恐ろしくなりました。でも色男をお金で買う性生活は、チョット悲しい私生活のようにも見えました。


そう言えば、エリザベス・スローンの片腕で銃乱射の生き残りの黒人女性はどんな乱射事件の生き残りだったのか、チョット私、聞き逃してしまいました、誰か教えてください!!! 


2

ニューヨークに住む黒人写真家・クリス(ダニエル・カルーヤ)は、キュートな白人の恋人ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家・アーミテージ家で週末を過ごす。精神分析医の両親からも歓待を受ける。二人の黒人使用人、一人は甲斐甲斐しく屋内で働く女中のジョージーナと、一人は庭の芝刈や薪わりなど外回りの労働をするウォルターとも挨拶する。が、二人の挙措振る舞いに違和感を覚える…。夜中に庭を疾走する管理人のウォルターや、窓に映った自分を凝視する家政婦のジョージーナに驚かされる。黒人の男に対して、相思相愛の仲睦まじい恋人同士を演技する白人のローズは、恋人にとして黒人青年クリスをアーミテージの実家に招待する。しかし、親しくなるうちに、ローズには過去に数々の黒人の恋人がいて、彼らはその家から何時しか何処かしらへ行方不明になっていたことが分かる。ローザの母は、娘が誘惑して連れてきた黒人青年に、いつの間にか催眠術を施し、父は脳外科手術を強制して、次々と奴隷のように白人サークルの虜にしていた。2本目は、いわば人種差別を核心に持ったスリラー&ホラー映画『ゲット・アウト』(2017年、ジョーダン・ピール監督)でした。

3

 

SF作家のフィリップ・K・ディックの原作小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、「ブレードランナー」の原作SF小説です。環境破壊が進んだ地球を捨て宇宙に移住した人間と、奴隷として働くレプリカントを主人公とする近未来社会を舞台に、リドリー・スコットが1982年に映画化したSF映画が往年の『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督、ハンプトン・ファンチャー&デヴィッド・ピープルズ脚本)でした。3本目の『ブレードランナー 2049/ BLADE RUNNER』(2017年、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、リドリー・スコット製作総指揮)は、35年の長い空白を置いて続編が制作された作品で、相当にこの作品に愛着を持っているのだろうかーネ。リドリー・スコットも製作総指揮として最新作で関わっています。続編制作の意図がどこにあるのか、私にはよく分かりませんが、R・スコットは続編の制作動機については、インタビューでは答えていません…。ネットをあれこれ探したのですが、それらしい記事は見つかりませんでした。もしあるとするならば、何方か教えてください。


フィリップ・K・ディックは、『トータル・リコール』(1990年公開ポール・バーホーベン監督)、『マイノリティ・リポート』(2002年公開スティーヴン・スピルバーグ監督)など、原作が映画化された有名なヒット作のSF作家です。どちらの作品も「ブレードランナー」同様、人間の近未来社会を描いています。フィリップ・K・ディックは「ブレードランナー」の公開を前に1982年3月に脳梗塞のため逝去しています。この作品は公開後にさまざまな編集の手が加わって編集されてます。監督のリドリー・スコット自身も1992年のディレクターズカット版及び2007年のファイナルカット版を制作、影像とストーリを一部修正しているようで、5つの編集バージョンがあるといわれています。フィリップ・K・ディック亡き後、映画の続編小説としてディックの友人の作家K・W・ジーターが小説3本を発表しています。


40年前に書かれた近未来小説は、地球と人間の未来像としてかなり社会性をもった現実味と、地球像の科学的なリアリティと人間の姿が描かれています。しかも、レプリカントを主人公とするハードボイルドなアクションも描かれているので、依然、監督にも映画ファンにも魅力を持っているのではないでしょうか…。従って、評価の高い映画で、その上何だか難解な作品なので、私は余りコメントを書きたくない映画でした。


映画の背景は、2019年の退廃した未来社会のロサンゼルスが舞台。有害な排気ガスや放射能汚染などによる環境破壊から、人間は宇宙空間に脱出、惑星に移住する。地球に残った一部の人間は、超高層ビル群が林立する人口過密の荒廃した街で生活をしていた。惑星では「レプリカント」と呼ばれる人造人間が、過酷な奴隷労働に従事していた。しかし、タイレル社によって製造された人工的なレプリカントに人間独特の感情が芽生え始め、人間に反乱を企てる事件が発生する。ある日、最新レプリカント「ネクサス6型」の男女4名(バッティ、リオン、ゾーラ、プリス)が人間を殺害し脱走、シャトルを奪い、密かに地球に帰還、タイレル社に押し入って身分を書き換えた。レプリカントに与えられた4年の寿命を「解任」する任務を遂行するのが警察の専任捜査官「ブレードランナー」であった。そこで、脱走し地球に潜伏したレプリカントを見つけ出すため、ロサンゼルス市警のブレードランナーリック・デッカード(ハリソン・フォード)が呼び戻される。


そして2049年の「ブレードランー」では、旧作でレプリカントを製造していたタイレル社は倒産し、実業家ウォレス(ジャレッド・レト)がそれを買収、従順な最新型レプリを開発した。人類は依然、寿命を不正延命改造した初期モデルの捕獲を続けていた。その追跡解体の任務に就いているのが、今はロス市警のK(ライアン・ゴズリング)であった。この作品では、昔レプリの女性と逃亡し、行方をくらました元ブレードランナー、デッカード(ハリソン・フォード)が登場する。ロス市警の「ブレードランナー」Kが発見したレプリカントの新しい兆候は、レプリカントの女性が「妊娠」して生命を誕生させた形跡であった…。これは、人間存在をレプリカントが超える独自の進化であった。レプリカントが出産した子供は何処にいる…をKは追跡する。2049年の「ブレードランナー」の新しい展開です。




4

4本目は、国家の威信をかけたソ連との宇宙開発競争が激しくなった1960年代の初頭、バージニア州にあるNASA(アメリカ航空宇宙局/National Aeronautics and Space Administration)では、ずば抜けた数学的才能をもつ3人の黒人女性、キャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)を主人公に、彼女らが宇宙開発に貢献したドキュメンタリー風の映画『ドリーム/HIDDEN IGURES』(2016年、セオドア・メルフィ監督)でした。

単に宇宙開発の苦労を描いた映画と言うよりも、科学の最先端の現場「NASA」でありながら、NASAで初めての女性スタッフ、しかし研究所内ではトイレさえ白人と黒人は区別され、しかも黒人専用のトイレが少なく、キャサリンは走って遠くまでは用を足していた。メアリーは上級の研究職の仕事をするために科学関係の工学講座の単位が必要だが、勉強をしたいが黒人は自由に学校へ入学ができなかった、黒人ゆえに管理職になれなかたドロシー、数学の天才的な黒人女性たちは、宇宙にロケットを飛ばすことを通して、人種的偏見と差別を乗り越えて、黒人の解放にも功績を残した、胸のすく黒人のサクセスストーリです。


これまで黒人の活躍する場は、主にスポーツ分野や音楽などの芸実分野が中心でしたが、数学にもこんな才能を持った黒人女性がいたなんて、映画化されなければ世界は知らなかったでしょうーネ。


5

 

いつもはパスしている恋愛映画ですが、私には以前から邦画の恋愛映画に一つの疑問がありました。ハリウッドの恋愛映画は「ロマンスと遊びの恋愛ゲーム」と言い換えたいですー。日本のそれとはナンカドコカ違う気がしました。違和感というよりも余りにもどうして恋愛映画は「初恋」と「不倫」しかないのかな…と思ています。ハリウッドの恋愛映画は、と恋の成就とハッピーエンドの明るさと、ナンカ恋の夢がありますね。が、邦画の恋愛劇は、初恋の青い未熟な性と、男女の不倫と背徳的な恋の映画しかない気がします。つまり、未だに前近代的な「家族関係」の男女の関係に縛られて、それをはみ出た恋愛は、不倫と背徳の暗い影を依然引きずっていますーネ、だから邦画の恋愛劇は暗く、重い心の影を持っています。どうせならば「家制度」の絆など突き抜けてしまった恋愛劇画みたいです。とすると、ナンカポルノになっちゃうんだよな。未だ日本の「恋愛」文化の未熟さそのものなのだろうかな…?!


今回取り上げる作品は、高校教師(松本潤)と高校生(有村架純)が、学校内の演劇サークルの中で出会い、卒業して大学生となってから再び劇団員の役者不足のサポートとしてまた出会う・・・、淡々とした恋愛&心理映画『ナラタージ』(2017年、行定勲 監督、堀泉杏脚本)でした。


 
不倫ドラマの「昼顔」は、流石に男と女の対話が真に迫ってしっとりしていますーね。「へー、女心って、そんなものかな…」と、私はたっぷり女心を勉強させてもらいました。

 

でも、久しぶりに淡白な恋愛映画を見ました。原作は女性作家の島本理生で、ポルノほどの濃厚なベットシーンやラブシーンはないが、でも、女高生と教師との間に断ち切れない記憶を・・・、作家本人の体験した情念のこもった私小説的な恋愛体験を書いものなのかな。まあ、昨今のアイドルを主演にした、淡く甘いラブストーリは、中年の私にはとても正視できないが、でもこの手の「不倫」映画は中高年の観賞対象ですーね。まあ、「不倫映画」といえば古くは編集者と人妻との間の不倫映画「失楽園」(1997年、渡辺淳一原作、森田芳光監督)がありました。あの映画は熱かったな…ナ。役所広司と黒木瞳との濃厚なセックスシーンに、私も興奮しました。
 

昨今、流行の人妻と高校教師との不倫の恋愛映画の古典的映画「昼顔」(2017年6月公開、西谷弘監督、井上由美子脚本) は、この映画ブログでも紹介しました。主演の女・木下紗和(上戸彩)の情念の芯がメラメラゆっくり燃えるような不倫劇で、ここまで熱くなると不倫も文化ですーネ。「ナラタージュ」は、「失楽園」とも「昼顔」ともやや似て非なる「不倫映画」でした。原作小説を、私、読んでいないので行定勲監督がどこに何に魅かれたのか知れませんが、監督が映画化を練って狙っていた作品のようです―ネ。

私は複雑な心理劇のようで面白かったです。これは従来の邦画の恋愛路線から、一歩踏み出した恋愛の心理劇で、チョット新鮮な恋愛映画でした。最後のシーン、演劇部の小野玲二(坂口健太郎)が作った革靴を脱いで、葉山のもとに裸足で歩いてゆく泉の健気な「愛」はジーンときましたーネ。でもねー、女性に対する独占欲所有欲が強い男ですーネ。男の愛情の行き着く先なのかな…???
 

是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)


11月下旬特選映画【27】★映画のMIKATA「米軍が最も恐れた男」★映画をMITAKA

$
0
0

 


11月下旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、今月11月は通算で8本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』でした。日本人が知らなかった沖縄の政治家を掘り起こしたTBSテレビのディレクターの佐古忠彦監督の功績だろうーネ。坂本龍馬も司馬遼太郎が小説に書かなければ幕末大政奉還と明治維新のヒーローではなく、歴史の中に埋もれて忘れられた土佐藩の脱藩下級侍だったろうね。


新作公開の映画ブログにTVドラマについて触れるのは、大きな寄り道ですが、テレビドラマならではの今現在の市民の心情をストレートに演出したチョット触れたいドラマがあります。それは、毎週月曜21時放送の篠原涼子主演のフジテレビ系の「民衆の敵/世の中、おかしくないですか」(草ケ谷大輔プロデュース、黒沢久子脚本)です。スタートの第一話は、主婦の佐藤智子役の篠原涼子と、失業中の夫の公平(田中圭)と保育園の息子・俊平(鳥越壮真)の3人家族があおば市内の団地に住んいるというごく平凡な家族設定です。俊平を乗せて通園する、坂道でもスイスイ登れる電動自転車が欲しい、ステーキの代わりに卵焼きで我慢させる食卓に、本物のステーキを皿の上に乗せて食べさせたい・・・、ささやかな生活の贅沢を抱いているごく平均的で、日本の庶民感情をそのままストレートに表現しています。職探しにパソコンを検索している内に議員が政治活動費を不正に流用している記事を読み、その高額な議員報酬に驚き羨望し、一念発起してあおばし市の議員に立候補する。「皆、幸福になりましょう…」と呼びかけて、政治に素人で子育て中の主婦が、ママ友たちの応援と支えで見事に当選する。一話一話の脚本も良く構成されています。高額の議員報酬を支給されながら議会で居眠りする議員、市議会なのに市長派と多数の議席を抱える犬崎派との対立、保育園やかぎっ子など、市民が生活の中で解決してほしい問題、政治にしか解決できないエピソードが織り込まれています。以前から、私など、街の政治は普通の主婦や退職したサラリーマンや、政治に関心のある学生・・・とかがなればいいと思っていましたので、このドラマのエピソードと佐藤議員の発言に拍手しています。議会など夜に開催すればいいのだーヨ。。「政治屋」が政治活動費を誤魔化して私用に使うニュースは昨今頻繁に起こります。市民のためと公言しながら企業からの政治献金のためにひも付き政策を決定する「政治屋」、企業の利益供与のために公共工事を利用する「政治屋」は、政治から手を引け・・・!!!と言いたいです。市民の幸福のための政治という視点がなければ、政治家ではなく「政治屋」ですーね。日本の政治とデモクラシーはまだ未成熟なのでしょうか…ネ。特に、松下政経塾出身の「政治屋」が多いですーネ!!!

米軍(アメリカ)が最も恐れた男、その名はカメジロー』は、既に8月26日に公開されているのですが、東京で唯一上映されている渋谷の「ユーロスペース」へ見に行く機会がなくて、延ばし延ばしで今になってしまいました…。映画と言うのは時間とお金とがかかるものですーネ。料理を通して日本の戦中の歴史を回顧する様な滝田洋二郎監督の戦争&料理映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』も良かったです。特にゼロ戦の特攻隊を賛美するような戦争映画『永遠の0 』(2013年公開、山崎貴監督、百田尚樹原作)が第38回日本アカデミー賞の最優秀作品賞等を受賞する邦画の世界だから、漸くやっと、邦画もハリウッド映画が描く太平洋戦争『硫黄島からの手紙』(2006年、クリント・イーストウッド監督)と朝鮮戦争、『ハクソー・リッジ』(2016年、メルギブソン監督)の作品水準を超えたか…と、私は安堵し喜んでいます。

1


1本目は、麒麟の舌と呼ばれる究極の味覚を持つ天皇陛下の料理番だったが、満州に派遣され、秦の宮廷料理「満漢全席」とフランスの宮廷料理を越える「大日本帝国食菜全席」のレシピを作る役目を関東軍から与えられる山形直太朗(西島秀俊)と、顧客が「人生最後に食べたい料理」の味を再現、懐かしい味を料理して高収入を得ていた、やはり絶対味覚を持つ味覚の天才・佐々木充(二宮和也)を主人公に、日本軍が満州に「五族協和」「王道楽土」をスローガンに満州を建国した戦中の哈爾濱(ハルピン)と戦後を舞台に、料理映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』(2017年、滝田洋二郎監督、田中経一原作)です。


日中戦争のボッ勃発前に中国侵略のきっかけを作るための謀略であった、天皇陛下の満州視察の歓待の食席のために準備した「大日本帝国食菜全席」のレシピは、清朝宣統帝・溥儀を陥れる準備工作だと知り、全席のレシピを焼き捨てた反抗のために三宅(竹野内豊)によって射殺される。山形直太朗の妻・千鶴(宮崎あおい)が嬰児を出産して幼い子供を一人抱えて満州に残され、敗戦後にソ連人民解放軍の攻めてくる満州の混乱から帰国船で日本に帰国する。その千鶴の子供が孤児院で育った佐々木充(二宮和也)であた・・・、あ~、ストーリを教えてしまった。私も映画を見乍らウスウスそんな結末を途中から予感していたが、「ヤッパリーか」、してやられたな…と、ジーンとくる感動に「これはもう2018年の日本アカデミー賞」ものかな…とも思いました。


「料理番組」というよりも、料理ドラマと映画はなんでこうも次々に制作されるのかな???料理人が主役で、料理のメニューとか味覚は脇役なのかな、邦画の場合、板場の味の伝統とかキッチンに立つコックの人間関係とかレストランの生き残り競争がドラマ化されるストーリと設定が多いのかな…。私はTVドラマでは特に、料理番組と医療ドラマに日本人の国民性と文化の特徴が一番良く表現されている、と思っています。


映画の最後に流れるタイトルロールの中に、企画担当の秋元康の名前を見たときに、またしても秋元の掌の中で心を転がされたか…してやられたな…と思いました。戦中戦後に生きる料理の二人の天才が、異なる時代に運命的に出会い、一つの物語になる。既知であった原作者の田中経一とマルチプロデューサの秋元康の出会いが、このストーリをより面白いドラマに仕上げたようです。流石に年収50億以上の銭儲けの巧いプロジューサだな。

2

2本目は、1990年のメイン州デリーの田舎町で児童が行方不明になる事件が相次ぐ中、おとなしいビルの弟・ジョージイは兄が作ってくれた紙の舟を大雨の日に道路の側溝に浮かべて遊んでいたが、下水溝に落としてしまった。その下水の下から顔を白くドーランで化粧した赤髪赤鼻赤い唇のピエロ「ペニーワイズ」が顔をのぞかせてさらっていく、子供の行方不明のシーンから始まるアドベンチャー&ホラー映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』(2017年、アンデ年公開ィ・ムスキエティ監督)でした。


英語で「IT」は鬼ごっこの「鬼」の意味のようですね。英和辞典を調べると後ろの方に載ってました。過去にもビルの住むデリーに「それ」が27年周期で現れ、その都度事故や天災に見せかけては住人を襲っていた街の忌まわしい伝説が残されていた。ビルの弟・ジョージイの行方不明以前にも、変幻自在のピエロの姿をした「それ」の恐怖に襲われ、児童が次々に行方不明になった事件が起きていた。自分を責め、悲しみにくれるどもりのビルの前にも「それ」が現れた、ピエロを目撃して以来、彼も「それ」の恐怖にとり憑かれてしまう。しかし、同じく「それ」に遭遇したデブのベン、過保護でマザコンのエディー、新聞配達の貧しい黒人少年・マイクなど少年たちは、父親から性的な虐待を受けている女の子・ベバリーがピエロの「ペニーワイズ」に誘拐されたのをきっかけに、ビルたちは街に残された古い廃屋に突撃、そのピエロの「ペニーワイズ」の正体とベバリーを探し、「恐怖」と戦う為に冒険する…。

「IT/それ」と一体全体、何を象徴するのだろうかーナ、何だったのだろうか…ナ?。鉄道事故で死んだ死体を少年だけで探しに行く幼少時代の肝試しの冒険のストーリという点では、スティーヴン・キング原作の既に映画化されている『スタンド・バイ・ミー』(1986年公開、ロブ・ライナー監督)と同じで、少年時代独特の心の「恐怖」と「弱さ」にうち勝つ青春ものである、と言える。ピエロは、少年たちの心の弱さの隙間に忍び込み、恐ろしいピエロの姿に変態していた…。マザコンでデブで吃音の少年たちは、ピエロと戦うことで少年時代の壁を乗り越えていった。けれども、メイン州デリーの田舎町に住む大人たち、少年たちの親もまた内面の弱さを乗り越えることをせずに、心の弱さを抱えたままで大人になったの・・・カナ???


十分恐怖心を感じました『MAMA』の(2008年発表、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮)アンディ・ムスキエティ監督が再び、映画化しました。既に『IT/それ』は1990年に公開、トミー・リー・ウォーレス監督によって制作された旧作がありました。1990年に映像化されたスティーヴン・キングのホラー小説を、これは私もDVDで観賞してました。熱心な映画ファンは旧作とリメイク版と比較しても面白いですーネ。


元々原作の「IT/それ」は、少年に性的暴行を加えたうえで殺害して、1972年~1978年の間に、少年を含む33名を殺害し後で、その遺体を自宅の地下や近くの川に遺棄したジョン・ウェイン・ゲイシー の連続猟奇殺人事件を、スティーヴン・キングは小説の素材の元にしているようです。パーティなどでピエロに扮することが多かったことから「キラー・クラウン」の異名を持つ殺人鬼であったという。日本の無差別大量殺人は、戦後間もない混乱期頃を除いて、戦後最大と言って良い凶悪な大事件です。日本の小説かも触手を伸ばしているかな…。でもーネ問題の元凶は、個人を取り巻く社会環境と政治でしょうね…。

すでにスティーヴン・キングの『ダーク・タワー』の予告編が日本のスクリーンでも上映され始めました、日本公開は来年1月27日のようです、私もスティーヴン・キングのホラー映画ファンなので、待ち遠しいです。でも、「IT」に続いてこうも次々とスティーヴン・キングが映画化されるは、何故でしょうかネ…?現実がホラー映画を越えて恐怖に満ちているからかーナ。逆にホラー映画が娯楽のように恐怖もなく構えず気楽に見れる作品になったからかーナ。それとも、スティーヴン・キング人気がリバイバルのように再評価されたからでしょうかーネ。

3

 

3本目は、オーストラリアの新鋭監督、ジェームズ・ワンとリー・ワネルのコンビが2004年に『ソウ』 を制作、『ソウ』(2005年)の2弾、3弾(2006年)、4弾(2007年)、5弾(2008年)、6弾(2009年)、7弾の「ザ・ファイナル」(2010年)と 続編が制作された、逃げ場のない場所に監禁され、不条理に拘束された者が、凶悪殺人鬼犯「ジグソウ」の仕掛けた殺戮マシンによって確実な死を招く凄惨なゲームに翻弄されるホラー&サスペンス映画『ジグソウ:ソウ・レガシー』(2017年、マイケル・スピエリッグ&ピーター・スピエリッグ監督)でした。シリーズの映画は必ず死の恐怖を体感しながら惨殺される共通要素の不条理な恐怖ストーリが繰り返される。

現実がホラーを追い越した時、ホラー映画は現実の恐怖の中で薄ぼんやりと色あせてしまった…ナ。チョット脱線しますが・・・。障碍者の喉をナイフで抉り、幼気な少女を催眠薬で眠らせもがく手足を拘束して、ロープでロフトからつりさげて窒息死させ、遺体をばらした・・・。この悍ましい猟奇大量殺人は最早、ホラー映画を通り越しています。神奈川県座間市緑ケ丘の当時27歳の男が住むアパート室内のアパートから9人のバラバラ遺体が見つかった事件は、Twitterを利用して自殺願望を持つ女性たちの関心を誘い交流を始め、今年の8月22日から10月30日までの短期間で、白石のアパートの一室で行われたとみられている。殺害された若い女性、その中には中学生の少女まで含まれていたという。逮捕後の尋問で、27歳の殺人鬼・白石隆浩は被害者の年齢層を10代後半4人、20歳くらい4人、20代後半1人・・・と自白したという。殺人鬼・白石は、Twitterのメッセージで女性らを自宅に誘い、睡眠薬や酒を飲ませた後に、抵抗する女性を結束バンドなどで拘束してロフトから垂らしたローブで首を絞めたという。室内にはクーラーボックスや大型の収納箱など計8つの箱の中に、9人の頭部と約240本の骨などバラバラに解体さした腐乱した遺体が入っていたという。こんな事件は、私など現実の恐怖がホラー映画を超越した・・・と思えました。

更に脱線しますが・・・。この事件以前にも昨年、26歳の元施設職員の殺人鬼・植松聖が知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」に侵入して、刃物で園内の19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせた大量殺人事件、相模原障害者施設殺傷事件がありました。白石隆浩の事件はSNSを使って不特定多数の自殺志願の少女を誘惑した大量殺人事件で社会に衝撃を与えましたが、元施設職員の植松聖の事件は、殺害相手が障害者であったことが、社会に恐怖を与えました。国内だけでももっともっと恐ろしい異常心理による猟奇殺人事件があります。例えば、1938年に岡山県の西加茂村(現在、津山市加茂町行重)で一夜にして30人の村人を虐殺した当時21歳の都井睦雄がいました。この大量殺人事件を分析した著書(筑波昭「津山30人殺し」思草社)さえ出版されています。視野を世界の異常心理による大量殺人事件まで広げると、例えば全米17州で300人を殺した連続大殺人犯のヘンリー・リー・ルーカスなどがいました。

 

単純にホラー映画として『ジグソウ:ソウ・レガシー』をコメントするならば、シリーズ全編を通してストーリが不条理な殺人の連続で、もはや連続殺人のシーンだけでは、身も竦む恐ろしい事件などではなく、退屈な作品なのでした。

 

4

4本目は、本土復帰前に敗戦後の沖縄が米軍支配の様々な矛盾と問題に蹂躪され、それに徹底的に抗議して占領軍と米軍統治と戦った、日本人が忘れた沖縄の政治家・瀬長亀次郎の活躍を描いたドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男、その名はカメジロー』(2017年、佐古忠彦監督)でした。


皆さんは瀬長亀次郎という政治家を知っていましたか???私はこの映画で初めて知りました。一遍でその沖縄を愛する熱情と何物にも恐れないその政治家魂と拳をふるい乍ら民衆に主張するその演説の温かさと批判力の虜になりました。瀬長亀次郎が政治家として登場したのは、本土復帰前、米政府による非民主的な統治に徹底的に抵抗、本土復帰を要求した政治家でした。大政奉還と明治維新のヒーロー坂本龍馬も、司馬遼太郎が小説に書かなければ歴史の中に埋もれて忘れられた下級侍だったろう―ネ。


沖縄県の知事を現職まで並べて見ます…・と、やはり瀬長亀次郎の名前はありません。復帰前に、那覇市長、立法院議員、国政参加選挙で衆議院議員、本土復帰後には、衆議院議員として映画では佐藤栄作総理と国会で議論している姿が売っていました。本土復帰前に活躍し平成13年に亡くなった政治家です。本土に住む人間には、沖縄が本土に復帰した後の県知事でさえ知らない政治家が多いですーネ。私が知っているのは大田昌秀知事か、辺野古移転問題で自民党の基地移転の強制工事に反対している翁長雄志知事ぐらいか…ナ。大田昌秀知事は、今の沖縄の争点である「辺野古への移転」の原点である、1996年の普天間基地移設問題では県外移設を強硬に主張した沖縄県知事として覚えています。基地周辺は住宅が密集して頻繁に米軍機が民間の住宅地に墜落して、死傷者もでる沖縄でも世界一危険な基地と言われています。この普天間基地をどこに移転するかーという問題は長年にわたって議論されてました。稲嶺恵一知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を1999年に知事として容認、移転容認の条件だった使用期限や軍民共用等がいつの間にか有耶無耶に消えて、安倍自民党政権が出した結論は、「辺野古」移転の無条件容認を踏襲しています。 稲嶺の次に知事になった仲井眞弘多が名護市辺野古移設の手始めである埋め立てを承認したことが今また尾を引いた問題となっています。「県外移設」を公約にして当選した仲井真弘多知事が2013年、辺野古の埋め立てを認めたため「嘘つき」批判が集まり、14年の知事選では辺野古移設反対を唱えた翁長雄志氏に敗れました。政府は依然「辺野古が唯一の解決策」という政府見解を譲らずに激しい反対抵抗にあっています。私はもしももしも・・・瀬長亀次郎が沖縄県知事になっていたら、どんな見解と運動をするだろうかな…と思いました。

1 屋良朝苗 1972年(昭和47年)5月15日~1976年(昭和51年)
2 平良幸市 1976年(昭和51年)6月25日~1978年(昭和53年)
3 西銘順治 1978年(昭和53年)12月13日~1990年(平成2年)
4 大田昌秀 1990年(平成2年)12月10日~1998年(平成10年)
5 稲嶺惠一 1998年(平成10年)12月10日~2006年(平成18年)
6 仲井眞弘多 2006年(平成18年)12月10日~2014年(平成26年)
7 翁長雄志 2014年(平成26年)12月10日~現職


太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)4月1日、米軍は沖縄本島に上陸、海上の戦艦から集中攻撃の砲弾を浴びながら最後まで降伏することなく、沖縄戦において第32軍を指揮してた日本軍の最高司令官・牛島 満が摩文仁洞窟の司令部壕で切腹した6月23日に沖縄戦は敗戦しました。米軍の攻撃が激しくなった時に陸軍司令部が首里城から移された場所で、牛島が自刃した洞窟の奥を私も見学したことがあります。米軍と日本軍との激戦では非戦闘員の沖縄住民の多くが戦争に巻き込まれて亡くなりました。一番の悲劇は学徒動員されていた『ひめゆりの塔』の少女たちの戦死だろうーナ。沖縄県援護課発表では日本人18万8,136人が戦火で亡くなりました、その内の12万2,228人が沖縄県出身者(一般人9万4,000人、軍人・軍属2万8,228人)でした。

日本の敗戦後に、日本を占領したGHQが本土を統治した。とは言え、議会も内閣も日本人の手で構成された間接統治でしたが、それに対して、沖縄は占領軍が直接統治する政治形態が続きました。日本人が沖縄へ行くにも、沖縄人が日本へ渡るのもパスポートが必要な外国でした。昭和25年(1950年)、米軍統治はGHQの最高司令官を長官にした、後に「琉球列島高等弁務官」が統治する「琉球列島米国民政府(USCAR)」を設立しました。沖縄人のための「琉球政府」が成立しました。が、「行政主席」はアメリカ軍が任命するという非民主的な統治制度でした。1950年に勃発した朝鮮戦争、その後のベトナム戦争によてますます米軍の沖縄基地は重要視され、今日に至っています。1965年、佐藤栄作首相が戦後初めて沖縄を訪問し「沖縄の祖国復帰なくして、日本の戦後は終わらない」と返還交渉に意欲をみせ、1971年、沖縄返還協定が調印されて、翌72年5月15日、沖縄の本土復帰が実現しました。がでも、沖縄県民にとっての屈辱は、今迄の私有地が強制的に接収されたままで、米軍地内は治外法権でした。尚且つ、米兵が沖縄の女性をレイプしたり強姦したり、米軍の飛行機が頻繁に墜落して死者が出たりしても、しかも米兵の犯罪者さえ日本の法律で罪を問えない、裁けない屈辱を受けていることです。未だ都内には先ほど来日したトランプ大統領の大統領機が着陸した広大な立川基地があり、神奈川県内には、厚木基地座間基地瀬谷の通信隊など広大な土地が首都圏の開発を妨害するほど米軍基地が広大な土地を未だ占有しています。憲法9条を改憲して、自衛隊を軍隊に言い換えても、核の傘に守られている限り米軍は日本の基地を退去しないでしょうーネ。その先に行き着くのは、日本の軍隊が核保有し、徴兵制と軍拡です。


私たちの日本は未だに米軍の占領下に置かれているのですーネ。日本の自民党政権の不甲斐無い汚点ですーヨ。佐藤栄作がノーベル平和賞を胸に飾るのは早いのです。沖縄と本土が完全返還され、米軍が日本から撤退しない限り、日本の戦後は本当に終わっていないのですーヨ…。



是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)


 

12月上旬特選映画【28】★映画のMIKATA「探偵はBARにいる3」★映画をMITAKA

$
0
0

 


12月上旬の特選映画をアップロードします。今回5本を映画館で観賞、今月12月上旬は今の所5本を観賞しました。又吉直樹の芥川賞受賞作「火花」を、板尾創路が監督を務めた作品『火花』も良かったですが、吉本のお笑い芸人作家・又吉が「お笑い」世界から視線と想像力を移して、別の世界を描いたとしたならば、私は評価したいです。でもね、お笑い芸人が「笑い」の世界を描いたとしても、クリエイティブな才能をあまり褒めたくないです。

映画にとっての、映画としての「コメディー」の役割と意味・・・、そんなことを考えたい時代ですーネ。笑いは「キラー細胞」を活発にする…、いやそんなことを言いたいわけではありません。笑いが世の中を包む時代は、本当に幸福な時代と社会なのかな…???幼気ない少女たちの自殺志願者が性的暴行を受け、首を無理やりつられて殺される異常な日本…、「誘蛾灯」のSNSに誘惑されて殺される時代、国民に将来を与えられない希望なき社会と政治は、どこん間違っていますーネ。それは「SNS」を取り締まって終わる問題でもない気がします。私は『泥棒役者』からコメディーについて・・・思索したくなる魅力的な作品でした。そう言えば、チャプリンのコメディーがアメリカで人気を博したアメリカ社会はどんな時代だったかな…???


公開初日に、私は待ちに待って「探偵はBARにいる3」を見てきましたが、weekdayなので、館内はさほど盛況ではありませんでした。未だ映画化される前の東直己原作小説を読んだことがありました。でも、その時の感想は、「ハードボイルな小説なのに、何度も視線を止めるギクシャクした文章の下手な、癖のある作品なのかな…」と思いました。それが映画化されると見違えるように魅力的な作品で、面白かったです。ヤハリ、脚本家と監督の力量なのですーネ。そこで、選んだ特選映画1本は、「探偵はBARにいる3」でした。今回の「探偵はBARにいる3」はシリーズの中でも一番面白かったです。


 

1

1本目は、不運な足の負傷でアメフト選手のトレードの夢を諦めたジミー(チャニング・テイタム)は、カーレース「NASCAR」が開催されるサーキット場の金庫から大金を強奪する強盗を計画、しかも片腕を失った元軍人の弟クライド(アダム・ドライヴァー)と、カーマニアの妹メリー(ライリー・キーオ)と、爆破のプロで今は服役中のジョー(ダニエル・クレイグ)を仲間に引き入れて現金強奪を計る犯罪コメディー映画『ローガン・ラッキー』(2017年、スティーヴン・ソダーバーグ監督)でした。

スティーヴン・ソダーバーグ監督には、現金強盗の人気シリーズの映画『オーシャンズ11 Ocean's Eleven』(2001年)、『オーシャンズ12 Ocean's Twelve』 (2004年)、『オーシャンズ13 Ocean's Thirteen』 (2007年)の延長にある大胆な現金強奪のコメディー風犯罪映画で、映画の中でも「オーシャンズ13」と表示されている通り、刑務所に服役中の弟クライドと爆弾担当のジョーを脱獄させて、アリバイ作りに刑務所を利用する手口は、「オーシャンズ11」そのものでした。 ラストシーンで一部の現金を返して犯罪を誤魔化し、一部を仲間にも隠して後後で分配する、最期のハッピーエンドは、愉快なコメディー映画でした。


娯楽映画として十分楽しめる作品でした。暇なとき、最近どうも笑うような楽しいことがないなーと、憂鬱な日常を一時忘れたい人は、見る価値が有りますーヨ。


2


舞台は架空の東京の離島、美浜島の中学生・信之(井浦新)

は付き合っている同級生美花(長谷川京子)が森の中で島の男に犯され喘いでいる声と向郷している光景を見て、「殺して」という美花にうながされて、その男を殺害する。その場にいたのは信之に懐いでいた幼い輔(瑛太)だけで、殺害現場をカメラで撮っていた。翌日、島を襲った大地震と津波で島は壊滅、住人は全滅になった。この島は小笠原諸島を暗示しているのだろうかーナ。2本目は、その後二十五年経ち、大人になった3人と、幼い頃に輔に対して虐待を繰り返した漁師の父親(平田満)が突然現れ、信之の妻(橋本マナミ)と不倫する輔が工場労働者の姿で加わり、舞台は神奈川県川崎市の小杉に移り、再び5人の間で愛好憎悪が絡み合い、再び殺人が起こる犯罪&サスペンス映画『』(2017年、大森立嗣 監督&脚本、三浦しをん原作)でした。


輔が病死を装って父親を殺害、島での殺人現場の写真で恐喝していた輔を信之が殺し、その死体を輔の住んでいた安アパートの1階の床下に埋める…。ラストシーンで、このアパートの死体から、捩じれた島の樹木「ガジュマル」が床下からアパートの部屋全体に枝を伸ばして生い茂る。恰も島の歪んだ情念の象徴のような「ガジュマル」は、津波に飲みこまれた島の神話的な時間と空間を表しているかのようでした。原作は読んでないので分かりませんが、原作者の三浦しをんは舞台設定に、巧みに「津波」「島」「樹木」など神話的要素を組み込んでいます。この作品の一番衝撃的なシーンと脚色ではないかな…。私は、それ以外は単純で平凡な殺人事件映画と思いました。

3

 

泥棒だった過去を恋人・藤岡美沙(高畑充希)に隠し、ハッピーに同棲する溶接工員の大貫はじめ(丸山隆平)は美沙の誕生日祝いにレストランで食事でも・・・と街中で待ち合わせをしたが、昔、泥棒で「練鑑ネリカン」(少年院)で一緒だった畠山則男(宮川大輔)に出会ってしまい、せっかく真面目に生きようと決めていたのに、もう一度空き巣泥棒をしようと、無理矢理誘われ脅されて、とうとうカギをこじ開ける泥棒仲間になってしまう。大貫の忍び込んだ絵本作家の前園俊太郎 (市村正親)の住む豪邸に見事に侵入したの誰毛ども、そこに新米の編集者、奥江里子「奥さん」( 石橋杏奈)が原稿を取りに来訪、絵画の教材販売のセールスマン(ユースケ・サンタマリア)が突然前園家を訪れ、てんやわんやのドタバタを演じる。3本目は、泥棒と原稿取りと訪問販売員との絵本作家が演じるコメディー映画泥棒役者』(2017年、西田征史監督&脚本)でした。


「泥棒」を主人公にしたコメディー風の邦画は、これまで数多く製作されました。『鍵泥棒のメソッド』(2012年公開、内田けんじ監督)は、第36回日本アカデミー賞・最優秀脚本賞を受賞している代表作だろうか。『泥棒役者』も、過去の泥棒映画に互角に並ぶ面白い映画でした。大貫はじめ役の丸山隆平は、ジャニーズ事務所所属のグループの「関ジャニ∞」の一人である。3人脱退したSMAPと同じく、メンバー7人、横山裕、渋谷すばる、村上信五、丸山隆平、安田章大、錦戸亮、大倉忠義がそれぞれ俳優として映画に出演し、ソロ歌手として歌っている、SMAP級の役者ぞろいです。大貫はじめ役の丸山隆平でのコメ―ディー風のとぼけた演技も中々堂に行ってました。

 

泥棒役者』の見どころは丸山隆平の演技に尽きるでしょうーネ。もう一つ、吉本興業所属のお笑いコメディアンの宮川大輔の強面のヤクザぽい演技も、演技と言うよりも眼鏡を外した宮川大輔の少しヤサグレた彼の素顔がよく表現されていました。前園俊太郎役市村正親の喜劇っぽい演技は、初めて観ました。なんかこの映画ではずいぶん肥っている体格だナーと感じました。あれは厚着した演出なのでしょうかーネ。3人の俳優に比べて、演技力抜群の高畑充希の出演する機会が少なかったですーネ。もう少し彼女の登場する役割を増やしてもいいのではないのかな…!ラストシーンは、高畑充希と丸山隆平の場面でなくて、「あいつの秘密を教えてやるよ、あいつ昔泥棒の善かがあるんだぞー」位の、宮川大輔との絡みの場面があったら、傑作コメディーになっていたよーナ。


4


4本目は、吉本のお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹の芥川賞受賞作「火花」を、吉本のお笑い芸人の板尾創路が監督を務めた作品『火花』(2017年、板尾創路監督)でした。そもそも、この作品は
初めネットサービスの「NETFLIX」がオリジナルドラマとして2016年6月に配信されました。その後それが、2017年2月26日にNHK総合で連続10回で放送されました。私はチョット観て冗長なストーリ展開なので、つまらない退屈だな…と思い少しも観ませんでした。又吉直樹と吉本興業は「火花」の一粒で三度「うまみ」を味わったことになる。一作品で3回も金儲けした小説は空前絶後ですーネ。

徳永(菅田将暉)と相方・山下(川谷修士)とお笑いコンビ「スパークス」としてデビューを果たすものの、テレビに映らない芸人に人気タレントのように「爆笑」など湧かない。一向に鳴かず飛ばずの売れない芸人、でも人気者芸人を夢見る野心はあった。ある日、地方営業の熱海の花火大会で舞台を暴走族に冷やかされ邪魔された。その時、笑いコンビ「あほんだら」としてステージに上がっていた4歳年上の神谷(桐谷健太)と相棒の大林(三浦誠己)と知り合う。徳永は帰りに神谷から「一杯飲んでいこうや」と誘われ、神谷がお笑い芸人として舞台で見せた型破りな漫才に衝撃を受け、酒場で神谷に弟子入りをする……。

 

ラストシーンで相方の山下に子供が生まれる…ので、お笑い芸人から生活の安定した仕事に就きたいとコンビ解散、お笑い芸人の引退を告げられる。徳永は芸人から不動産会社の営業マンとして働く姿に転職する。吉本興業でも何千人何万人と言う一攫千金の「人気芸人」を夢見ながら、一向に売れない貧しい生活に耐え、アルバイトをしながら舞台から姿を消した漫才は数多居るでしょうーネ。テレビで拍手を浴びる漫才はほんの一握りです。そんな漫才芸人の浮き沈み、無名で消えたお笑い芸人の喜びと哀しみを描いたエレジー(哀歌)でした。お笑い芸は伝統的な「芸術」というよりも、大衆芸能的なやや一段低い見方をこれまでされていました。そうしたこれまでの世間の視線、大衆芸能に対する又吉直樹の「叛骨」がこの作品では良く表現されていました。

 

2016年配信の「NETFLIX」のオリジナルドラマは、廣木隆一監督で、徳永役を演じたのは林遣都、神谷役を演じたのは波岡一喜でした。笑いのツボを知っている板尾創路監督作品の方が、お笑い部隊が格段に面白かったです。やはり、コメディー映画、と言うよりも「お笑い」映画は、お笑いの芸そのものが映画の中で観客が笑えなければ、作品の魅力は半減するのではないでしょうか…ネ。

5


ある日、いつもススキノのバー「キラーオオハタ」に燻っている探偵(大泉洋)と相棒の高田(松田龍平)のもとに、高田の後輩が、彼の恋人・麗子(前田敦子)の行方を捜してほしいと、捜索話を持ち込んでくる。調査を進めていくと、麗子のバイト先でモデル事務所を装った風俗店に辿り着き、そこのモデル事務所の美人オーナー・マリ(北川景子)が現れる。5本目は、何時ものストーリのように謎が殺人を生み、簡単な捜査が札幌の裏社会の厄介な犯罪に巻き込まれていくハードボイルド&ミステリー映画『探偵はBARにいる3』(2017年、吉田照幸監督、古沢良太脚本)でした。今回は、ハードボイルドだけでなくて、牧場主のマリの家族の一家自殺と、妊娠したマリの赤ちゃんのことでは泣かせましたーネ。

2017年年内ぎりぎりの12月末の公開です、これは日本アカデミー賞狙いの映画だな・・・と、誰しも思います。シリーズの中で、私は一番の傑作だと思いました。


2011年のシリーズ『探偵はバーにいる』の第1弾は、橋本一監督、東直己原作 『バーにかかってきた電話』(ハヤカワ文庫刊)、古沢良太 &須藤泰司脚本。探偵役に大泉洋、探偵の相棒の高田役に松田龍平、ヒロインの沙織役に小雪。ハードボイルド&ミステリーの舞台の定番は北海道札幌、いつもカウンターに座るBARの黒電話にさまざまな探偵依頼が舞い込む。2013年の第2弾「探偵はBARにいる2/ススキノ大交差点」は橋本一監督、原作は東直己(『探偵はひとりぼっち』ハヤカワ文庫)、古沢良太 &須藤泰司脚本。探偵役大泉洋、探偵の相棒役高田役に松田龍平は定番の配役、ヒロインの河島弓子役に尾野真千子、そして、今回の第3弾の探偵役は定番の大泉洋、相棒役に松田龍平、ヒロインのマリ役に北川景子が演じました。シリーズ各編は、ヒロインの女優を替えてます。北川景子は、結婚してから演技が変わったーネ、女優らしくなった。今回はもう一人のヒロインの麗子役に前田敦子が出演しているのが異例です。ズームアップした前田敦子の顔を見たとき、エ~昔のアイドルが老いているる・・・、でももう26才だものーナと感じました。


 

(是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)



 

12月中旬特選映画【29】★映画のMIKATA「否定と肯定」★映画をMITAKA

$
0
0





12月中旬の特選映画をアップロードします。今回3本を映画館で観賞、今月12月は通算で8本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、『否定と肯定』です。がしかし、3作品ともいずれも洋画ですが、21世紀を総括する、恐らく後世に残る名作傑作の味わい深い映画でした。ホロコースト否定論は日本でも海外の否定論に便乗して、チクロンBによる毒ガスでユダヤ人が虐殺されたのではなくて、収容所の中で疫病「チフス」が蔓延して大量死したもの…とか、映画で描かれている類似のホロコースト否定論が、興味本位に或はセンセーショナルな関心を惹くために時々日本でも噴出した歴史が数々あります。

近近では、国会議員の有田芳生氏が批判の発端となって、高須クリニックの高須 克弥医院長が過去の数々のナチス礼賛に賛同した発言に対して、アメリカに拠点を置く人権団体「サイモンウィーゼンタールセンター」によって、「ナチス礼賛」や「南京虐殺の否定」を理由に、高須院長のアメリカ美容外科学会からの追放(会員剥奪)を呼びかけた…という。更に過去に遡ると、1995年2月に文藝春秋が刊行していた雑誌『マルコポーロ』に、内科医西岡昌紀が寄稿した強制収容所のガス室によるユダヤ人虐殺の死体はねつ造である…と、ホロコーストを否定する内容の記事が掲載された。これに対して、同じく人権団体の「サイモンウィーゼンタールセンター」からの抗議があって、当時の社長と雑誌編集長の花田紀凱が辞任廃刊されました。でも、こんな古いことを知る人も少ないでしょうーネ!?




1

アメリカ・フロリダ州タンパの港町で、7歳の数学の天才少女で、姪のメアリー(マッケンナ・グレイス)を引き取り、片目の猫フレッドと共に平和に過ごしていた独身の叔父・フランク(クリス・エヴァンス)のもとに、ある日、自身も元数学者だっ彼の母エブリン(リンゼイ・ダンカン)がイギリスから訪ねてきた。1本目は、メアリーが生まれながら持つ驚異的な数学的能力を伸ばすため、孫を引きとり英才教育「ギフテッド教育」を受けさせたいと、メアリーの親権争いを廻る裁判映画いや、教育映画、いやヒューマン映画『gifted/ギフテッド』(2017年、マーク・ウェブ監督)でした。

 

この映画には一つ、アメリカの「サイエンス」に対する社会事情の背景がありました。アメリカとソ連の宇宙開発競争で1957年にソ連がアメリカに先立って世界で初めて宇宙ロケットを打ち上げる有人ロケットの開発に成功、ソ連に追い抜かれ負けた科学技術が、アメリカに「スプートニク・ショック」を起こした。それが引き金となって、アメリカは数学や科学分野における優秀な生徒の育成に緊急に取り組み、才能ある子どもに特別な能力を伸ばす幼児教育を与える「ギフテッド教育」を国家戦略に位置付けた。この映画ブログで以前に、『ドリーム』(2017年、セオドア・メルフィ監督)を案内しましたが、あの作品こそこの映画の背景にある社会事情です。米バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所に、ロケットの打ち上げに必要不可欠な計算を担当する数学的才能を持った黒人女性グループ三人の活躍によって、地球から成層圏をぬけて宇宙に飛び立つロケットの軌道計算に成功した作品でした。黒人女性が宇宙開発の影の貢献を果たした物語でした。以来アメリカでは、「ギフテッド教育」への関心が高まり、科学分野への幼児教育の天才開発が盛んとなった…。

メアリーを弟フランクに預けて自殺した母は、実は天才数学者としてミレニアム問題「ナビエ–ストークス方程式」を一生の課題として取り組んでいた。《ミレニアム懸賞問題》という数学の7つの難問がある。➀ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題、②リーマン予想、③P≠NP予想、④ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ、⑤ホッジ予想、⑥ポアンカレ予想、⑦バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想があり、今の所、⑥「ポアンカレ予想」だけが唯一、リゴリー・ペレルマンにより解決され、6つが未解決として残されていた。これを解くことが、数学者のノーベル賞のようなものでした。


そのため、恋も母に諦めさせられ、ひたすら抽象的で難解な高等数学の問題に向い、恐らく解明するだろうと将来を嘱望されていた著名な数学者ダイアン・アドラーであった。彼女は実は、自殺する前に弟フランクへ…、今は港のボートを修理して生計を立てているが、元々は大学で哲学を教える準教授であったフランクへ、普通の女の子のように友だちと楽しく遊ぶ生活が送れるように育ててほしい…と預け、自殺する前に「ナビエ–ストークス方程式」を解いた論文を死後に発表してほしい、と残していた。と言うのも、数学一筋にすべてを捨てて英才教育に縛られた生活、それを強いた母に対する娘ダイアン・アドラーの反抗でもあり、メアリーをそんな不自由な環境に置きたくないーと言う後悔でもあったのだろうーネ。


メアリーは7歳まで自宅にこもり、勿論、数学の勉強も家庭教師につくわけでもなく、独学で勝手に難しい数学の本を読んでいた。映画はメアリーが初めてスクールバスに乗り小学校へ通う朝からスタートした。ところがメアリーは学校へ行くのをムズがっていた。いざ、算数の授業では簡単すぎる足し算にイラつき、担任の先生のボニー(ジェニー・スレイト)が試しに出した暗算の難問を次々と簡単に解いてしまう。そこには、フランクがメアリーへ教えた「トランクテンバーズ暗算法」があったのだった。これはフランクがメアリーに教えた暗算方法のようで、ユダヤ人強制収容所内で、ロシア系ユダヤ人エンジニアのJakow Trachtenberによって開発された計算

方法(https://en.wikipedia.org/wiki/Trachtenberg_system 参照)で、非常に特殊な暗算方法のようです。


昨今、日本でもTV番組でオリンピックの金メダリスト獲得の有望な選手を育成するために、スポーツの英才教育をし、幼い選手を褒めたたえ、チェスや将棋やオセロで世界一のチャンピオンになる「天才」キッズをクローズアップしているが、果たしてこれは親の「エゴ」ではないのか…ナ、或は、大人の世界、資本主義の鋳型に子供を作る「大人子供」の歪な教育だとは思いませんかーネ???幼児が難しい漢字を読み書きして、世界の国旗と首都をすらすら答える子供の姿に、私は親の歪んだ「エゴ」を見てしまいます。子供には子供の世界の蹂躪できないがあり、それを発見したのはフランスのルソーでした。こんな教育と才能と人間としての「幸福」の否定と肯定のせめぎ合いの映画でした。この作品の孕んでいるもう一つのテーマ…、生まれながらの数学の天才少女に「普通の暮らし」をさせたいという、「幸福」とは何か、特に幼児にとって英才教育による特殊な才能は「幸福」につながるものなのか…という哲学的な価値観をはらんでいるのではないかーネ。




2


アメリカのトランプ大統領政策の功罪の中で、大きな失政と汚点が今世界情勢を騒然とさせています。一つは「中東・アフリカ」からの6~7か国の移民の入国を禁止した大統領令移民政策です。一つは「COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)」「パリ協定」からの離脱。一つはドナルド・トランプ米大統領が12月6日に、「エルサレムをイスラエルの首都と認定する」と発表、アメリカ大使館をエルサレムに移転することを表明しました…。これは一歩間違えれば再び中東戦争の火種になりそうな政策決定ですーネ。トランプのこの決定は、中東に駐在するアメリカの外交官と民間人へのテロを誘発し、安全を間違いなく脅す…。パレスチナでは既に「怒りの日」と名付けた3日間の抗議行動が二ュースで流れており、ヨルダン川西岸とガザ地区では暴力的な抗議行動が吹き荒れ始めています。

エネルギーの脱炭素化社会、低炭素化経済を実現する為に、2015年11月30日から、フランス・パリで開催されていた「COP21」が、12月12日、地球環境に大きな危機をもたらす温暖化現象を食い止めるために、2020年以降の温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』、世界の平均気温上昇を2度未満に抑え、(リスク削減に大きく貢献する1.5度に抑えることも奨励)」、21世紀後半には、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていく方向を正式に採択、現在、147カ国・地域が合意しています。この地球の温暖化現象と脱炭素化への対応策の趨勢に対して、アメリカのトランプ大統領が「地球の温暖化現象」に疑念を挟み、協定批准から離脱しました。アメリカ尻尾を振る安倍政権の日本は1997年の「京都議定書」に続いてパリ協定を批准し、「2050年度80%削減」という不可能に近い目標を、ドンキホーテのように掲げています。2本目は、地球環境問題に警鐘を鳴らすアル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領が2006年公開の『不都合な真実』の続編で、あれから10年以上過ぎた現在、依然、地球温暖化現象はさらに深刻な危機を迎え、地球環境崩壊の映像と、講演会で訴えているゴアの姿を追いかけたドキュメンタリー風の映画不都合な真実2:放置された地球/AN INCONVENIENT SEQUEL: TRUTH TO POWER』(2017年、ボニー・コーエンジョン・シェンク監督)でした。


私はもう一度DVD「不都合な真実1」を見ましたが、率直に行って、パート2よりも低炭素社会を実現する為に、地球温暖化を加速化するアメリカのガソリンに支えられた社会と産業を強烈に批判する映像の姿に、政治家としてのエネルギーが感じられました。特にアメリカ議会内で、「地球温暖化」などは、非科学的で捏造だ…と攻撃されながらも、それでも温暖化のもたらす気候変動の現象によって反論しながら、脱ガソリン社会を提唱する姿にエネルギッシュな力を感じました。part2の特徴は、脱炭素社会実現のために「自然再生エネルギー」への転嫁を提唱して、一歩踏み込んでいる点だろう。でもその前に、ガソリンに依存する炭素エネルギー社会の現状、21世紀の政治経済産業が執拗に固めるアメリカの「利害」を果敢に批判する姿に、私は温暖化現象を強調する著書「不都合に真実1&2」の写真集よりも、『理性の奪還』(ランダムハウス講談社)の論調をお勧めしたいです。日本の現状に多分に当てはまる内容ですーネ。





3


ホロコースト研究家のアメリカのユダヤ人歴史学者、デボラ・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)教授は、著書『ホロコーストの真実』の中で、 イギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)が唱えるホロコースト否定論を攻撃したが、それに対してアーヴィングは、彼女の著作の中で自分をホロコースト否定論者と呼んだことに対してリップシュタットと、その出版社・ペンギン出版を相手取り、名誉毀損訴訟を起こした。アーヴィングはイギリスの司法制度の名誉毀損訴訟では、誉毀損を訴えられた被告側が、ホロコーストの真実、即ち、殺害された人数がニュルンベルク裁判に認定された600万人いた…、アウシュヴッツ強制収容所にガス室があった…、ホロコーストはユダヤ人による捏造である…、虐殺の指示はヒトラーによるもの・・・等々のホロコーストの立証責任を負うものであった。3本目は、刊行したペンギン出版と協議した末、事務弁護士のアンソニー・ジュリウス(アンソニー・スコット)、法廷弁護士のリチャード・ランプトン(トム・ウィルキンソン)が率いるリップシュタット側の法廷チームはイギリス人大弁護団で、ホロコースト裁判に臨む法廷映画否定と肯定/DENIAL』(2016年、ミック・ジャクソン監督)でした。


「ナチズムとホロコースト」に関心のあるものならば、この映画は待ちに待った作品であり、一見の価値が有ります。ナチスドイツとホロコーストをめぐる実際の裁判を基に描かれた法廷映画で、映画の中では「シンドラーのリスト」を制作したユダヤ系アメリカ人のスピルバーグがこの裁判費用を援助したことなどが述べられていました。


でも依然として、一部の日本人に「ナチス礼賛者」がいるとは驚きですーネ。原爆被爆国日本の「戦後」なのに、戦争を憎み平和を願う.意識はすでに薄れ、まだ戦中戦後の清算は終わってないな…、日本の戦後処理さえ未処理で中途半端なものだな!!!と実感します。ホロコースト否定に対して、ドイツ、フランス、オーストリアなどでは「ナチスの犯罪」を否定したりする者や、ヘイトスピーチする者に対して刑事罰が適用される法律が制定されているようですーヨ。




是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)

12月下旬特選映画【30】★映画のMIKATA「ユダヤ人を救った動物園」★映画をMITAKA

$
0
0

 

12月下旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、今月12月は通算で13本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、『ユダヤ人を救った動物園』でした。ユダヤ人の「アウシュヴッツ」強制収容所行から救出したエピソードを映画化した名作傑作は数々あります。その他、ドイツ人実業家が兵器工場にユダヤ人を作業員として雇い保護した、スティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』や、ユダや人にビザを発給した外交官杉原千畝を映画化したチェリン・グラック監督の 『杉原千畝/スギハラチウネ』 (2015) は有名ですーネ。NHKBSのドキュメンタリーで放送された『戦火のマエストロ・近衛秀麿―ユダヤ人の命を救った音楽家』は、未だ映画化されてませんが、余りこれまで知られてないエピソードですーネ。『スター・ウォーズ8/最後のジェダイ』もなかなかの魅力的な作品でしたが、実際アイルランドに存在する「スケリッグ・マイケル島」をロケ舞台にした、荒涼とした無人島で暮らしている伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーとレイとのシーンは、本当に劇的で見事で演出ですーネ。



残念ながら、今月も特選映画として紹介したい邦画がありませんでした。ただ、大林宣彦監督の作品を熱心に見た経験がないせいもあるのですが、戦争前夜の唐津を描いた青春映画『花筐/HANAGATAMI』を正しく評価できなくて、余り耽美な作品の雰囲気に没入できませんでした。


1


父も祖父も同じ家に代々住んだ、根からの鎌倉の住人、ミステリー作家・一色正和(堺雅人)は、出版社のアルバイトだった妻・亜紀子(高畑充希)に惚れて愛して結婚した。1本目は、仲睦まじい新婚旅行から帰り、一色とともに嫁いできた鎌倉の初日から、次々と怪奇現象が起こる妖怪映画、と言うよりも肉体を離脱した妻の魂を黄泉の国まで引き戻しに行く愛妻映画と言うべきかナ…『DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017年、山崎貴監督)でした。鎌倉の作家宅の周辺には、霊界に逝った幽霊や黄泉の国にいる物の怪、死神や貧乏神までが路地をウロウロする歴史の町、黄泉の国に死者を乗せて運ぶ列車が走り、生者と死者と魔物が交錯する古都でした。一色自身も心霊が絡んだ犯罪捜査に鎌倉警察に協力する妖怪怪奇の仕業の謎を解く名探偵でもあった。鎌倉発霊界列車に乗って、黄泉の国へ妻の魂を奪還しに行く戦いは、ナンカ、旧い中国の古典を見ているようでした。

 

まあ、演技上手の堺雅人と高畑充希が主演しているので、娯楽映画として楽しい作品でした。今日も疲れたなー、憂鬱な一日だったーとぼやいているサラリーマンや主婦には、よく効くトランキライザーになるでしょう。高畑充希の鼻にかかった甘えた声は、男の心を快く擽り、独特ですーネ。 


私は漫画の愛好者ではないので、人気漫画についてはよく知りません。ただ、この映画の原作は、西岸良平の人気コミックのようです―ネ。近頃、映画がコミック誌の原作が多くなりましたーネ。日本文化の特色の一部となっていて、最早コミックを低俗文化とか大衆芸術とか子供の娯楽…とか軽視出来なくなりました。ただ一言、映画の原作だと、多分原画がそのままフィルムの一コマになるので、製作しやすいのかも知れませんが、余りにコミック原作の作品が多すぎます。小説と違って、コミックは剽窃とか盗作とか言われませんよね。例えば、このコミックはまるで「孫悟空」ではないのかな…と批評しても、コミックは許されそうな気がします。いやや、私は「コミック」否定派ではないのですーヨ。ただ、最早今更「マガジン」や「サンデー」や週刊コミック誌に夢中になる年でもないよーナと思います。これだけは言えますーネ、コミック作家は時代を捉える視点と現代人の心を映像化するプリズムを持っている…といえます。

 

2
 

2本目は、1941年春、美しい叔母(常盤貴子)が生活している佐賀・唐津の豪邸に移り住み、17歳の俊彦(窪塚俊介)は新学期から、何処か窓から海と孤島の見える海辺に面した大学予備校に通い、同窓生と共に戦時下の青春を過ごす…、唐津の4人の若者は、杖を突いた足の悪い拗ねたニヒリストの吉良(長塚圭史)、喫煙さえ憧れマネするハンサム美少年の鵜飼(満島真之介)、剽軽でお調子者の阿蘇(柄本時生)を主役に、叔母と共に豪邸に住む肺病を患み学校を休んでいる従妹美那(矢作穂香)、その親友のあきね(山崎紘菜)、友達の千歳(門脇麦)が、戦争が迫る唐津を描いた『花筐/HANAGATAMI』(2017年、大林宣彦監督、檀一雄原作)でした。


癌に侵され余命宣告を受けた79歳の大林宣彦監督が、「映画人生76年の集大成的作品」としていった作品が、とうとうクランクアブしたので、公開初日に見に行きました。どんな作品かな…、予想し期待したような戦争映画と言うよりも、英語教師が兵隊として出征するシーンなど、大戦の足音が近づいた「唐津」で青春を謳歌する映画かな…と思いました。 

敢えて特徴を挙げるとすれば、肺病に病んだ喀血する美那に顔を寄せながら口づけする叔母の鮮血にまみれた唇と鮮血は、エロチックな場面でした。私にはこのシーンだけが印象的でしたーね。もう一つ、巨大な山車を曳き回す唐津の祭り「唐津くんち」は、流石に唐津シネマ、唐津商工会議所、観光協会などが参加した「唐津映画製作推進委員会」が全面化協力しているだけあって、唐津観光を紹介する本格的なフィルムのようで、迫力一ありました。 


3

 

1939年、ポーランド・ワルシャワで動物園を営んでいたヤンとアントニーナ夫妻は、第二次世界大戦勃発でドイツがポーランドに侵攻し、動物と散歩する平和で長閑な動物園は、動物に与える餌がないーという理由で檻の中の動物たちも次々に殺された。街は、ドイツ兵によってユダヤ人が理由もなく殺され、空爆で檻の柵も破壊され、町中を動物が徘徊する危険な戦場となった。3本目は、廃園となった動物園の地下を隠れ家に、強制居住区域「ゲットー」のユダヤ人の子供たちをゲットーから廃棄される残飯を回収する時に、養豚の餌の中に紛れ込ませて次々に救出するナチズムとホロコーストの映画『ユダヤ人を救った動物園/アントニーナが愛した命/原題:The Zookeeper's Wife』(2017年、ニキ・カーロ監督、アンジェラ・ワークマン脚本。D・アッカーマン原作)でした。戦争が激しくなるつれて1940年以後、ポーランドの地下組織の放送は、ヒムラーのユダヤ人殲滅を放送した。町を占領したドイツ軍兵士によってまだ幼い少女がレイプされて呆然自失している姿を見たヤンは、少女を動物園へ保護するシーンがありました。ゲットーからアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所へ輸送される貨物列車へ、ユダヤ人家族たち詰め込まれていった。映画ではコルチャック先生も孤児院の子供たちと共に列車に乗り込む姿があった…。

«ナチズムとホロコースト»の映画は、数々の名作傑作があります。このテーマに関して、これは観賞してほしい作品をそれぞれ状況ごとに、私がDVDで見た限りで一部簡単にご紹介は、ゲットーから抜け出したユダヤ人を地下道のマンホールに匿った映画にソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)がありました。ラストでソ連軍の戦車がドイツ軍のいなくなった町を制圧した時にマンホールの蓋から首を覗かせたシーンは感動的でしたね...。もう一作。第二次世界大戦中、やはりナチスの占領下にあったポーランドのユダヤ人居住区「ゲットー」内の不自由で、いつ殺されるかもしれない不安は「聖なる嘘つき」(1999年ピーター・カソヴィッツ監督)でよく描かれています。有刺鉄線と柵で囲まれたゲット内に強制収容されていた元パン職人のジェイコブは、風に舞う新聞を追いかけている夜間に、外出禁止時間の夜8時を過ぎていると咎められ、ドイツ軍の監視兵によって司令部への士官室へ連行される。その場に流れていた部屋のラジオ放送を偶然耳にする。そのラジオは、ソ連軍の攻撃でドイツ軍の戦況が不利になってることを伝えるものだった。そのジェイコブの小耳にはさんだことが、ゲット内に解放が近い朗報として広がり、噂はより大きな期待を膨らませ、ゲットー内に希望を与えたと同時に、不確かな伝聞は「聖なる嘘」としてユダヤ人の大胆な行動さえ誘発した。ユーモとはまた違うな…、緊迫した状況では「嘘」さえ希望の光となる…ゲットーの極限の悲喜劇とでも言おうかーナ。もう一作。アウシュヴィッツ強制収容所へ移送される貨物列車のユダヤ人家族たちの恐怖は、映画アウシュヴッツ行最終列車~第三帝国ホロコースト』(2006年公開、 ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー監督)は、列車の止まる行着く先がガス室の「死」である戦慄をまじまじと描いているので、ホロコーストがどれほど残酷な過去の歴史かがよく分かります。私は最早、生き残りの証言者が少なくなっている現在、この作品に正確なリアリティーと過剰な演出を求めるのは、エセ映画批評家の戯言でしょうーヨ。私自身は、DVDを見ている途中でもその先の映像の結末が怖くて、一時画像を止めたくらいの戦慄でした。


私もこの映画ブログでコメントを前回載せたホロコーストの映画「否定と肯定」(2016年、ミック・ジャクソン監督)がありました。「アウシュヴッツ」のユダヤ人虐殺はなかった…というこの裁判映画とともにホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼-…ナチスのために水の殺菌駆除と騙されて障害者絶滅計画T4に使う青酸毒ガス「チクロンB」の開発に携わり、ドイツ軍の親衛隊中尉でもあった衛生学の権威者のクルト・ゲルシュタインを主人公に、可愛がっていたダウン症の姪をガス室で殺され、さらに、強制収容所でその毒ガスがユダヤ人を殺戮するガス室に撒かれるのを目撃したことで衝撃を受け、 ゲルシュタインと共にこのホロコーストをカトリック教会や教皇など、ナチスと対立する国際社会にこの犯罪を告発しようと試みるホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼-現代」 (2002年、コスタ=ガヴラス監督)は、是非見てほしい作品ですーネ。教皇庁の秘書官の息子リカルドは、ローマ法王にユダヤ人の惨状を訴えたが、世界平和を表明するだけで、ホロコーストを阻止する声明にはならずに絶望して、自らアウシュヴッツ行きの移送列車に同乗して、ユダヤ人と共にガス室に消えていった。


ヨーロッパでもアメリカでも日本でも≪ネオナチ≫や«白人至上主義≫や人種差別の「ヘイトスピーチ」が横行するの昨今です。尚更に、こんな「ホロコースト」映画の価値が光ってくる21世紀なのでしょうーネ。

 

4

4本目は、『スター・ウォーズ』シリーズの新たな3部作の第2章で、『スター・ウォーズ8/最後のジェダイ』(2017年、ライアン・ジョンソン監督、ジョージ・ルーカス&キャリー・フィッシャー脚本)でした。シリーズ第8弾は、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』後のストーリーが展開する。ルーク(マーク・ハミル)の弟子としてジェダイの教えを受けていたハン・ソロとレイアの息子であるカイロ・レン(アダム・ドライバー)は、ある夜ルークがベンの強力な暗黒面を感じ、寝込みを襲おうする。ベンはルークの殺意にショックを受け、彼の元を逃げ、自ら暗黒面に歩みはじめる。黒いマント姿の暗黒のヒーロー、「ダス・ベーダ―」の誕生秘話です。自分が原因となってベンを暗黒へ追い詰めたことを後悔したルークは身を隠したのでした。アイルランドの「スケリッグ・マイケル島」を舞台にした無人島で暮らしている伝説のジェダイこと、ルーク・スカイウォーカーをついに探し出し、ライトセーバーを差し出したレイ(デイジー・リドリー)の二人の角逐から始まる。

 

シリーズ全体のを理解する為にやや復習します。帝国軍と反乱軍の戦いを描いた1977年の第1作「スター・ウォーズ」は、ジョージ・ルーカス監督&脚本の初めての作品です。帝国に捕らえられた反乱軍のリーダー・レイア姫(キャリー・フィッシャー)を救出する為に、C-3POとR2-D2のロボット、少年ルーク・スカイウォーカーなどと共に攻撃要塞デス・スターの破壊へと旅立つストーリは、デモクラシーと独裁国家の政治的対立のメッセージがありました。そこには、帝国と反乱軍の「善と悪」の戦争という銀河のロマンがありました。でねーネ、私の率直な感想としては、エピソードを重さねるごとに分かり難くなりました。まして、「スターウォーズ」の製作が、ジョージ・ルーカス制作の第6作『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(リチャード・マーカンド監督、1983年)から、第7作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(J・J・エイブラムス監督、2015年)になると制作プロダクションがディズニーに移転することとなり、尚更にストーリが枝葉に分かれてわかり難くなりました。「スターウォーズ」はとうとう金儲けのための「打出の小槌」、宇宙のロマンをディズニーは金儲けの道具として、エンドレス・ストーリなのか、と錯覚しそうな続編続編です…。私はもうこんな「スター・ウォーズ」シリーズは二度と見たくない、と思っていたのですが、ついつい無視できなくて今回も見てしまいました。

ただ、『スター・ウォーズ』シリーズの新たな作品『最後のジェダイ』の人気はどうなんだろうか…と、公開初日にららぽーと横浜のTOHOに私は行きましたが、上映前の9時前に既に観賞券は完売という盛況でした。私は「エーウァ~」と驚きました。この異常な人気は何なのだろうかーナ???『最後のジェダイ』の米国での興行収入は、公開後3日間に2億2000万ドルを稼ぎ、『フォースの覚醒』に次ぐ史上第2位の記録となったそうです。様々なトランプ政権の大統領令や政策に対して、米国内では市民に不満と対立と抵抗をもたらしています。この不穏な政治情勢を反映して、「帝国軍」は白人至上主義の政治勢力、トランプ大統領さえ人種差別と貧困と金融資本主義の悪幣を象徴する「ダス・ベーダ―」とダブらせている投影させている側面があるのかも知れませんーネ。




 

是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…


12月DVD特選映画【31】★映画のMIKATA「ナチズムとホロコースト」★映画をMITAKA

$
0
0




(赤文字は既に映画館で、その他はDVDで観賞した作品と映画ブログで紹介した作品です。が、記入忘ればかりで申し訳ありません。映画ブログの中で必ず取り上げています。)

①『ミケランジェロの暗号』(2011年公開、ヴォルフガング・ムルンベルガー 監督)
②『黄金のアデーレ 名画の帰還』(サイモン・カーティス監督、2015年公開)
③『ミケランジェロ・プロジェクト』(2013年公開、ジョージ・クルーニー監督。)
④『アドルフの画集』 (2002年公開、 メノ・メイエス監督)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・映画ブログに掲載

⑤「顔のないヒットラーたち」 (2014年公開、ジュリオ・リッチャレッリ 監督)
⑥「スベャリスト/自覚なき殺戮者」(1999年公開、エイアル・シヴァン監督)
➆『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』(2015年公開、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督)
⑧『愛を読むひと』(2008年公開、スティーヴン・ダルドリー監督、ベルンハルト・シュリンク原作。デヴットヘア脚本)
⑨『ハンナアレント』(2012年公開、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・映画ブログに掲載

星の子供たち」 (2010年公開、ローズ・ボッシュ監督)
⑪「サラの鍵」(2010年公開、ジル・パケ=ブランネール監督)

⑫「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998年、ロベルト・ベニーニ監督)
⑬「縞模様のパジャマの少年」(2008年、マーク・ハーマン監督)
⑭「さよなら、アドルフ」 (2012年公開、ケイト・ショートランド監督)
⑮「悪童日記」 (2013年、ヤーノシュ・サース監督)
⑯「バティニョールおじさん」 (2002年公開、ジェラール・ジュニョー 監督)

⑰『ソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・映画ブログに掲載

⑱「あの日のように抱きしめて」 (2014年、クリスティアン・ペッツォルト監督)

⑲「シンドラーのリスト」 (1993年公開、スティーヴン・スピルバーグ 監督)
⑳「アンナとロッテ」 (2002年公開、ベン・ソムボハールト監督)

㉑「ヒトラーの贋札」 (2007年公開、ステファン・ルツォヴィツキー 監督)

㉒「ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼- (2002年公開、コスタ=ガヴラス監督)

㉓『ワルキューレ』(2008年公開、ブライアン・シンガー監督)

㉔『杉原千畝 スギハラチウネ』 (2015年公開、チェリン・グラック 監督)

㉕『ヒトラー暗殺、13分の誤算』 (2015年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)

㉖『帰ってきたヒトラー』 (2015年公開、ダーヴィト・ヴネント監督)

㉗『奇跡の教室/受け継ぐ者たちへ』 (2014年公開、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 監督)
㉘『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016年公開、スティーヴン・ホプキンス 監督

㉙『ソフィーの選択』(1982年公開、アラン・J・パクラ監督)

㉚『手紙は憶えている』 (2015年公開、アトム・エゴヤン監督)

㉛「わが教え子ヒトラー」(2007年公開、ダニー・レヴィ 監督)

㉜「ディファイアン」(2008年公開、エドワード・ズウィック 監督)
㉝「アイアン・スカイ」( 2012年公開、ティモ・ヴオレンソラ監督)

㉝「善き人」(2008年公開、ヴィセンテ・アモリン監督)

㉞「サウルの息子」 (2015年公開、ネメシュ・ラースロー監督)
㉟『戦場のピアニス2002年公開、ロマン・ポランスキー監督)
㊱『夜と霧』(1955年公開、アラン・レネ 監督)
㊲「灰の記憶」(2002年公開、ティム・ブレイク・ネルソン 監督)

㊳「謀議」 (2001年公開、フランク・ピアソン監督) 

㊴「ナチスが最も恐れた男」(2008年公開、エスペン・サンドベリヨアヒム・ローニング 監督)

㊵「囚われのサーカス」(2008年公開、ポール・シュレイダー監督)

㊷「アウシュヴッツ行最終列車~第三帝国ホロコースト」(2006年公開、 ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー監督)

㊸「消えたその声が、その名を呼ぶ」(2015年公開、ファティ・アキン 監督)
㊹『白バラの祈り』(2005年公開、マルク・ローテムント監督)

㊺「エリート養成機関 ナボラ」(2004年公開、デニス・ガンゼル監督)

㊻「ヒットラー最後の12日間」(2004年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル 監督)

㊼「カティンの森」(2007年公開、アンジェイ・ワイダ監督)

㊽「あの日あの時愛の記憶」(2011年、アンナ・ジャスティス監督)

㊾「誰がために」(2008年公開、オーレ・クリスチャン・マセン 監督

㊿「ブラックブック/ZWARTBOEK/BLACK BOOK」 (2006年、ポール・ヴァーホーヴェン監督)

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

51≫「アイヒマンの後継者/ミルグラム博士の恐るべき告発}(2015年マイケル・アルメレイダ監督)

52≫「ナチス、偽りの楽園/ハリウッドに行かなかった天才」(2011年マルコム・クラーク監督)」

53≫「愛の嵐」(1974年、リリアーナ・カヴァーニ監督)

54≫ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』(2016年、ショーン・エリス監督)

55≫少女ファニーと運命の旅』((2016年、ローラ・ドワイヨン監督)

56≫ヒトラーへの285枚の葉書』(2016年、ヴァンサン・ペレーズ監督)

57≫「ローゼンシュトラック」(2003年マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)

58≫「敵こそ、我がとも~戦犯クラウス・バルビー」(2007年ケヴィン・マクドナルド&ケヴィン・マクドナルド  )
59≫「ナチスの犬」(2012年ルドルフ・ファン・デン・ベル&ルドルフ・ヴァン・デン・ベル監督)
60≫「聖なる嘘つき」(1999年ピーター・カソヴィッツ監督)
61≫「マラソンマン」(1976年ジョン・シュレシンジャー監督)
62≫「偽りの忠誠 ナチスが愛した女」(2017年、デビッド・ルボー監督)
63≫「やさしい本泥棒」(2013年ブライアン・パーシヴァ監督)
65≫「狼少女ミーシャミーシャ/ホロコーストと白い狼」(2007年ヴェラ・ベルモン監督)
66≫「シャトーブリアンからの手紙」(2011年フォルカー・シュレンドルフ監督)

67≫否定と肯定』(2016年、ミック・ジャクソン監督)

68≫ユダヤ人を救った動物園(2017年、ニキ・カーロ監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この映画ブログで前回「ユダヤ人を救った動物園』(2017年、ニキ・カーロ監督)をご案内しました。他にもポーランド内でもドイツが侵略した町で、ユダヤ人を擁護した人たちを作品にした映画は数々あります。映画ブログでも、少し敷衍して関連作品をご案内したのですが、あれもこれも言及したくなり、長くなるので断念しました。例えば「シンドラーのリスト」 (1993年、スティーヴン・スピルバーグ 監督) や『杉原千畝 スギハラチウネ』 (2015年、チェリン・グラック 監督)がよく話題にされる代表作でしょうーネ。でも余り紹介されている名作傑作もたくさんありますから、もう少し視点を広げて、≪ナチズムとホロコースト≫の映画を、これは観賞してほしい作品を、それぞれ状況ごとに私がDVDや映画館で見た限りで一部簡単にご紹介します。以前このブログでコメントを掲載したものと重複します。





私がこのテーマに拘泥する理由は、一つは、ヨーロッパでもアメリカでも日本でも≪ネオナチ≫や≪白人至上主義≫や人種差別の「ヘイトスピーチ」が横行する昨今だからです。尚更に、こんな「ホロコースト」映画の価値が光ってくる21世紀だからなのでしょうーネ。もう一つは、昨今の邦画に名作傑作が少なく、金儲けのやっつけ仕事の作品が多いからです…!!!テーマにしても、人間の本質を抉る映画、幸福とか平和とかに正面から向き合う作品が少ないからです。勿論私は、映画の娯楽性も了解してますーヨ。ナンセンスのギャクや喜劇ストーリに大笑いして終わる映画、ストレスが消えて満足する映画、勿論、エロい場面に性的興奮する映画でも、名作は見終わって何かを考えさせる作品ですからーネ。 




 
ユダヤ人を匿った映画は、その他にもたくさんあります。ゲットーから抜け出したユダヤ人を地下道のマンホールに匿った映画に「ソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)がありました。ラストでソ連軍の戦車がドイツ軍のいなくなった町を制圧した時にマンホールの蓋から首を覗かせたシーンは感動的でした...ネ。初めは金儲けのためがユダヤ人の命を救う使命に燃えてくる…。





ドイツ系ユダヤ人で、オランダ劇場支配人のウォルター・ススキンド(ユルン・スピッツエンベルハー)の劇場は、ドイツ軍によってユダヤ人500人を収容する待機場所に接収、ドイツに侵略されたオランダ国内15万人のユダヤ人リストを作り、ナチスの軍人の手先のようにユダヤ人移送の管理を任され、『ナチスの犬』(2012年、ルドルフ・ファン・デン・ベル&ルドルフ・ヴァン・デン・ベル監督)とも誹られる。しかし、ユダヤ人輸送先が収容所の毒ガス室だと知った彼は、同胞の子供たちを救おうと、移送のリストの人数と移送者の数を騙して、子供を地下や物置に隠したりなど、ドイツ将校に高級なお酒を贈って機嫌をとりながら画策するのだが…。無理矢理に子供から引き剥がされ母が、子供を返して…と屋根に上り瓦を下のドイツ将校に投げつけて抗議する、最後に屋根から身を投げるシーンは、無惨ですーネ。余りネットで解説されませんが、これも実話に基づいた実在の人物で、1000人の同胞の命を救ったようですよ。





もう一作。第二次世界大戦中、やはりナチスの占領下にあったポーランドのユダヤ人居住区「ゲットー」内の不自由で、いつ殺されるかもしれない不安は「聖なる嘘つき」(1999年ピーター・カソヴィッツ監督)でよく描かれています。有刺鉄線と柵で囲まれたゲット内に強制収容されていた元パン職人のジェイコブは、風に舞う新聞を追いかけている夜間に、外出禁止時間の夜8時を過ぎていると咎められ、ドイツ軍の監視兵によって司令部の士官室へ連行される。その場に流れていた部屋のラジオ放送を偶然耳にする。そのラジオは、ソ連軍の攻撃でドイツ軍の戦況が不利になってることを伝えるものだった。そのジェイコブの小耳にはさんだニュースが、ゲット内に解放が近い朗報として広がり、噂はより大きな期待を膨らませ、ゲットー内に希望を与えたと同時に、不確かな伝聞は「聖なる嘘」としてユダヤ人の大胆な行動さえ誘発した。ユーモとはまた違うな…ナ、緊迫した状況では「嘘」さえ希望の光となる…ゲットーの極限の悲喜劇とでも言おうかーナ。




 
次の一作。アウシュヴィッツ強制収容所へ移送される貨物列車のユダヤ人家族たちの恐怖は、『アウシュヴッツ行最終列車~第三帝国ホロコースト』(2006年公開、 ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー監督)で、列車の止まる行着く先がガス室の「死」である戦慄をまじまじと描いてます。この作品だけで、ホロコーストがどれほど残酷な過去の歴史かがよく分かります。私は最早、生き残りの証言者が少なくなっている現在、この作品に正確なリアリティーと過剰な演出を求めるのは、エセ映画批評家の戯言でしょうーヨ。特に、水がなくて身につけている宝飾と交換に停車駅でホースで浴びせられる水に群がる姿や、列車の床に穴をあけて、途中駅に停車した時にそこから子供たちを森に逃がすシーンは 、私自身は、DVDを見ている途中でもその先の映像の結末が怖くて、一時画像を止めたくらいの戦慄でした。

この映画ブログでコメントを前回載せたホロコーストの映画「否定と肯定」(2016年、ミック・ジャクソン監督) がありました。「アウシュヴッツ」のユダヤ人虐殺はなかった…というこの裁判映画とともに、「ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼-」 (2002年、コスタ=ガヴラス監督)…即ち、ナチスのために水の殺菌駆除と騙されて障害者絶滅計画T4に使う青酸毒ガス「チクロンB」の開発に携わり、ドイツ軍の親衛隊中尉でもあった衛生学の権威者のクルト・ゲルシュタインを主人公に、可愛がっていたダウン症の姪をガス室で殺され、さらに、強制収容所でその毒ガスがユダヤ人を殺戮するガス室に撒かれるのを目撃したことに衝撃を受け、 リカルド神父と共にこのホロコーストをカトリック教会や教皇など、ナチスと対立する国際社会にこの犯罪を告発しようと試みる…この映画は、是非見てほしい作品ですーネ。教皇庁の秘書官の息子リカルドは、ローマ法王にユダヤ人の惨状を訴えたが、世界のクリスチャンに向けたクリスマスの講話は、世界平和を表明するだけで、ナチのユダヤ人虐殺に一言半句も触れず、ドイツ軍の蛮行を阻止する声明さえしなかった。信仰に絶望して、自らアウシュヴッツ行きの移送列車に同乗して、ユダヤ人と共にガス室に消えていった。





ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼-」 でクルト・ゲルシュタインの上司としてたびたび戦況を計算しながら、冷めたナチスとしてファシズム体制を巧みに泳いでいた得体のしれない親衛隊の医学者は、ドイツ軍の敗戦が濃厚となった時に教皇庁の枢機卿の手引きで、南米へと逃亡するする為にカトリックを訪れていた…。実は、ナチズムの逃走を助けていたのは、カトリックの教皇庁であったという歴史があった。この問題に関して下記サイト≪ナチスとバチカン≫をご覧ください…。「キリスト教という宗教的な厚い土壌があったからこそ、ヒトラーの反ユダヤ主義は、枯れ野に火を放ったように爆発的に広がり、根づいていったのである。」「バチカンとナチスの関係は戦後もひそかに続いていた。戦犯ナチスの逃亡をバチカン組織が助け、アメリカや南米に送った。」という、大変優れたサイトです。

http://inri.client.jp/hexagon/floorA6F_hb/a6fhb400.html#05

 




ナチスの親衛隊に所属し、フランスのリヨン市の治安責任者となり、そこで数々の共産主義者やユダヤ人に対して残酷非道な行為を行い「リヨンの虐殺者」と呼ばれる22歳の若いクラウス・バルビーという男がいた。彼もまた、ナチスの戦犯でありながら不思議にもドイツが敗戦した時に裁かれることなく、立場を隠し巧みに逃亡した一人でした。彼の戦後はある時は、アメリカ陸軍情報部のために情報部の保護のもと対ソ連のスパイ活動を行ったエージェント・バルビーの姿に変身、米国陸軍の反共産運動専門の工作員として暗躍する。またある時は、南米ボリビアで軍事独裁政権の誕生に関わったクラウス・アルトマンとして、歴史の影で暗躍を続けたバルビーの姿もあった。 転々とした3つの変身した姿で人生を生きたバルビーのドキュメンタリー風の映画「敵こそ、我がとも~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生」(2007年ケヴィン・マクドナルド&ケヴィン・マクドナルド  )は、「ナチズムとホロコースト」の戦犯を告発する作品でした。1983年に、フランス領ギアナでフランス当局に逮捕され、1987年に、戦時中の17におよぶ人道に対する罪で終身禁固刑を宣告され、1991年に病死した。





もう一作。ナチス高官ラインハルト・ハイドリヒは「金髪の野獣」と呼ばれ、ヒムラーに次ぐ親衛隊の実力者であり、虐殺の限りを尽くした残虐者でした。ユダヤ人問題の「最終的解決Die Endlösung der Judenfrage」、つまり、ユダヤ人種に対してヨーロッパに住む全てのユダヤ人を根絶させるホロコースト(大量虐殺)を行うナチスの計画は、1942年1月20日にベルリンのヴァン湖のほとりーの、没収したユダヤ人富豪の別荘で「ヴァンゼー会議」が開かれ、そこでホロコーストが決定されました。2001年にアメリカ合衆国のケーブルテレビ局・HBOが歴史映画として、『謀議/Conspiracy』(フランク・ピアソン監督、ロリング・マンデル脚本)というタイトルで公開しています。その会議で、ナチスの高官がここに集まり、その一人としてラインハルト・ハイドリヒも参加していました。SSのナンバー2であるヘルマン・ゲーリングは、ハイドリヒに「ユダヤ人問題の最終的解決を望ましい形で実行するために必要な行政的なシステムと金銭的な方策の計画を可能な限りすぐ自分に提出するように」命令したと言われています。






ラインハルト・ハイドリヒは、戦争中にチェコ統治の責任者でした。イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府の指令で、ヨゼフとヤンたち7人の暗殺部隊が彼を葬るためにチェコ領内に落下傘で潜入した。暗殺計画は移動中のハインリヒの車を襲撃して重傷を負わせた。この傷が元で彼が死亡した結果、現地のレジスタンスと無関係なボーランド市民への壮絶な報復が始まった。ハイドリッヒ暗殺計画の顛末と最期を描いたナチズムの映画『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』(2016年、ショーン・エリス監督)という作品がありました。





ポーランドのゲットーから、、欧州各地からトラックに押し込められ、貨物列車にすし詰め状態で載せられ、ほとんど飲まず食わずでアウシュヴッツ収容所に集められた。ナチス ・ドイツの占領下にあったヴィシー政権下のフランスでユダヤ系フランス人を迫害した映画に『サラの鍵』(2010年公開、ジル・パケ=ブランネール監督)という名作映画がありました。1942年の「ヴェル・ディヴ事件」で大量検挙されナチスに引き渡され、ユダヤ人をガス室に送ったフランスのこの歴史は、フランスの恥部としてフランス史に未だ残っています。ドイツに侵略されたイタリアでのユダヤ系イタリア人への迫害を描いた『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998年、ロベルト・ベニーニ監督)は、悲劇を残酷なシーンばかりで映すのではなくて、イタリア人らしい少しのユーモラスと陽気な気質を表現した作品です。子煩悩で楽天的で愉快な性格のグイドは、母と引き離される息子・ジョズエに対して「…これはゲームなんだ。いい子にしていれば、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ…」と、嘘をつく。ナチスの撤退後の朝に、ゴミ箱に隠れていたジョズエが出てくると、収容所を開放する連合軍の戦車が現われ、若い兵士がジョズエを戦車に乗せて、ジョズエを抱きかかうえヘルメットをかぶせて凱旋してくれる…というストーリでした。もう一作。ナチス・ドイツの占領下ベルギーのユダヤ人迫害を映画化した『狼少女ミーシャミーシャ/ホロコーストと白い狼』(2007年ヴェラ・ベルモン監督) は、恰も狼に育てられた少女のような狼と少女の物語でした。8歳の幼いミーシャの両親はユダヤ人であることを隠し、支援者の屋根裏部屋に潜んでいたが、ある日一斉検挙で連行された。彼女だけは森に逃げて、 たった一人でベルギーから実家のおじいちゃんの居るウクライナまで、3000マイルもの旅を続ける。幼いミーシャが寒さで雪の中で動けなくなり倒れていると、飢えと寒さを救ったのは、 昔、実家の田舎で買っていた白くて大きい犬に似た一匹の白い狼「ママ・リタ」でした。イノシシやウサギの生肉をかじり飢えをしのぎながらウクライナまで歩き続ける、以外に名作でした。


 昔私が学生の頃、アルバイト先でフランクルの体験記を読んでいたら、その本の挿絵写真の中の一枚にあった、女性たちが全裸で収容所の広場を走っている姿を見て、その場にいたある男がそれを盗み見て、「勿体ないな…」と感嘆していました。恐らくその意味は、グラマーな女性の裸を見て愛撫もせずセックスもせずにムザムザ殺すなんて、「勿体ないな…」という感想なのでしょうーネ。今私は、みすず書房の新版「夜と霧」(池田香代子訳、2002年発行)を再び買って手にしてます。以前の霜山徳爾訳の「夜と霧」はボロボロだったので、引っ越しの時に捨ててしまいました。でもね、その旧訳本の裏表紙と本文の間には、アウシュヴッツ内の写真が数枚挿入されていました。が新版には全て削除されていました。あーと驚き、女性翻訳者の細やかな配慮なのかなーと思いました。でも私はその挿入の写真を残しておいてほしかったですーネ。その写真は、生産で残酷なシーンばかりです。でも、ドイツ兵によって男も女も子供も老人も非人間的に、毒ガスの充満するガス室で、苦しみもがき無差別に殺された証でもありますからーネ。私は日本人ならば、広島長崎の原爆資料館を一度は社会見学に行くべきだと思っています。中学高校でも卒業旅行や修学旅行に学校で、文部省が義務教育の必須課程に組み込んで旅費を無料で提供して、先生が引率すべき場所ではないのかナ…!!!と思っています。


少なくても大学生は、理系も文系でもポーランドの「アウシュヴッツ」の紀行文と感想を卒論の課題に含ませるべきだと思っていすます。だから、世界史の教科書にもホロコーストの写真を掲載して、国語の教科書からも広島長崎の被爆者の証言と物語は削除してはいけないのです、歴史の「残酷さ」から目を背けてはいけないのですーヨネ。…!!!

欧州各国から貨物列車に載せられて事務的にリストに従って移送されアウシュビッツ強制収容所内に収容され、害虫を消毒するためのシャワー室と騙されてガス室に送られるまでの機械的で淡々とした様子、ゾンダーコマンドたちの指示でガス室の扉の前で服を脱がされ、身につけた時計や宝飾品を外させ、ガス室で殺され死体になるまでの阿鼻叫喚の姿、それがドイツ兵ではなくて同じユダヤ人の同胞たちの手でガス室から運び出され、中を清掃し焼却炉に投げこみ処理して灰となた遺体のシーン…、銃殺されそのまま地面の穴に投げこまれた死体…の凄惨な姿は、「サウルの息子」 (2015年公開、ネメてシュ・ラースロー監督) と「灰の記憶」(2002年公開、ティム・ブレイク・ネルソン 監督)と『夜と霧』(1955年公開、アラン・レネ 監督)を見ていただければ、随所でそんなシーンが映されています。


サウルの息子」でゾンダーコマンドのサウルは、ガス室で死んだ少年が息子のように思え、ユダヤ人の牧師によってユダヤ人葬儀に則って弔いをしようと死体を布にくるんで担いで逃げる…。「灰の記憶」では同じゾンダーコマンドのホフマンは、ガス室で死体処理中に、奇蹟的にまだ息のある少女を発見、収容所内のユダヤ人医師の手当で一命を取り留め、その少女を匿うのだった…。「夜と霧」の原作者フランクルは、アウシュヴッツから生き残って生還した心理学者です。間近な「死」を待っている収容所という絶望的な環境の中で希望を失わなかった人たちが生き残った…という言葉は、絶望の中で最後まで人間の持つ「希望」の意義を考えさせました。福祉切り捨て、社会保障削減の生き甲斐のない安倍自民党政権に生活している皆さんー、絶望の時代にせめて「希望」を捨てないで2018年の日本の残酷政治に沈まずに生き残りましょう…!!!


是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…
 

  








 

 

12月特選映画【32】★映画のMIKATA「第41回日本アカデミー賞」★映画をMITAKA

$
0
0

今年も国内の邦画に対して監督賞、作品賞、脚本賞、主演男優賞・女優賞、助演男優・助演女優賞などが授与される、第41回日本アカデミー賞の授賞式が、2018年3月2日(金)、グランドプリンスホテル新高輪「国際館パミール」で行われる予定です。各部門から5つの中から最優秀賞が選ばれます。既にインターネットでは、予想が盛んにおこなわれています。昨年の受賞は、・・・・最優秀作品賞に「シン・ゴジラ」、最優秀アニメーション作品賞に「この世界の片隅に」  、最優秀監督賞に庵野秀明&樋口真嗣の 「シン・ゴジラ」、最優秀脚本賞は新海誠の「君の名は。」、最優秀主演男優賞は佐藤浩市の「64 ロクヨン 前編」 、最優秀主演女優賞は宮沢りえの「湯を沸かすほどの熱い愛」 、最優秀助演男優賞は妻夫木聡の「怒り」 、最優秀助演女優賞は杉咲花の「湯を沸かすほどの熱い愛」 となっています。


2017年の総括として私も、観賞した映画の中から、「日本アカデミー賞」の最優秀作品賞を予想したいと思っています。見逃した作品も数多くありますが、可能な限り年末にリリースされたDVDで観賞、ベストにて15を選び、その中からベスト5でプラス2★★、ベスト3王冠1を、あくまで私の視点と好き嫌いで選び、簡単なコメントを既に掲載した映画ブログの中から再掲載しました。


私にはアカデミー賞に関して一つの疑問と、要望があります。今年私は佐古忠彦監督のドキュメンタリー映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男、その名はカメジロー」という沖縄政治家「瀬長亀次郎」の生涯をドキュメンタリー風に制作した作品でした。何故協会のサイト「日本映画一覧」のリストの中にこの作品のタイトルが入ってないのかな?…と疑問に思いました。しばし考えて漸くわかりました、「ドキュメンタリー賞」の優秀賞部門が作られていないからです…ヨ。これは日本アカデミー賞の中に置くべきジャンルではないでしょうかーネ!!!早急に検討して来年あたりにでも「ドキュメンタリー」部門の最優秀賞を設置すべきだと思いました。


 尚、*は見逃した作品なのでレンタルショップで借りて、DVDを自宅で鑑賞しました。

 

2017-01-14  本能寺ホテル*
2017-01-21  新宿スワンII
王冠12017-01-28  恋妻家宮本
2017-02-11  相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人!
2017-02-11  サバイバルファミリー

 2017-02-18  愚行録  

王冠12017-02-25  彼らが本気で編むときは、

 2017-03-04  しゃぼん玉 *

 2017-03-11チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇

2017-04-29  帝一の國
2017-04-29  無限の住人

2017-05-06  追憶

2017-05-13  映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ *
2017-05-27  家族はつらいよ2
王冠12017-05-27  ちょっと今から仕事やめてくる
 

2017-05-27  光
2017-05-20  たたら侍*

2017-06-03  海辺のリア*

2017-06-03  花戦さ
2017-06-03  武曲 MUKOKU*
2017-06-10  昼顔
 

2017-06-10  22年目の告白-私が殺人犯です-

★★2017-06-17  TAP-THE LAST SHOW-  

2017-06-24  いつまた、君と 何日君再来(ホーリージュンザイライ)  

2017-08-26  関ヶ原
2017-09-09  三度目の殺人
2017-09-09  散歩する侵略者

 2017-09-23  ナミヤ雑貨店の奇蹟
2017-09-23  ユリゴコロ 
2017-10-06  エルネスト
2017-10-07  アウトレイジ 最終章
 

2017-10-07  ナラタージュ

2017-10-21  ミックス。
★★2017-11-03  ラストレシピ 麒麟の舌の記憶
 

2017-11-18  泥棒役者
2017-11-23  火花

 2017-11-25  光
2017-12-01  探偵はBARにいる3
 

2017-12-09  DESTINY 鎌倉ものがたり

★★2017-12-15  8年越しの花嫁 奇跡の実話  

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

王冠12017-01-28  『恋妻家宮本』 (2016年、遊川和彦監督&脚本、重松清原作)

 三人家族で平穏に暮らす宮本家で、たった一人の長男が突然結婚を宣言、独立して福島の新聞社支局へ赴任する。中学教師の陽平(阿部寛)と妻・美代子(天海祐希)は25年ぶりに、二人だけの新婚家庭を残された。シミジミと家の静寂を眺め、書斎の本棚「暗夜行路」に挟まった、妻の書いた古い署名記入済みの離婚届を発見する。何故どうしてーと困惑して、二人のできちゃった婚の新婚時代を回想する。いつもレストランのメニューを手に迷う優柔不断な宮本をじれったく思う美代子・・・、仲がよいのに、お互い変な齟齬感を感じるドタバタコメディー風の熟年離婚の危機を描いた家族映画『恋妻家宮本でした。
 

「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」「おとうと」「東京家族」「小さいおうち」「母と暮せば」「家族はつらいよ」など、数々の家族愛の映画とドラマと言えば、山田洋次独特の専売特許のように思っていましたが、脚本と監督も兼ねて製作する遊川和彦監督の持ち味は、何かしら創作のパターンが似てますね。テレビドラマの傑作「女王の教室」「家政婦のミタ」などの脚本を手掛けた遊川和彦流の映画は、シンミリじっとりと心を揺らしながらハートフルな脚色演出する家族愛の山田洋次流に対して、賑やかでゲラゲラ笑い、後ではればれするバラエティー風の遊川流家族映画は独特ですーネ。

最後に息子のいる福島へ飛び出し、家出した妻・美代子と再び壊れかけた夫婦愛を取り戻して大団円で終わるコメディーでした。最後にファミレスで、吉田拓郎のフォーク「今日までそして明日から」を合唱するフィナーレは、ナンカ宝塚歌劇の舞台を見ているようでした。あれは天海祐希を引き立てる脚色でしょうか…。ともかく青春応援歌のような歌なので、懐かしく面白かったです。

 



王冠12017-02-25  『彼らが本気で編むときは(2017年、荻上直子監督&脚本)

 

母としてよりも女としての「恋」に忘我して、11歳の小学生・トモを一人マンションに残してたびたび育児放棄、突然男と失踪する母親の代わりに、トモ(柿原りんか)を引き取り面倒を見る叔父のマキオ(桐谷健太)と、彼の恋人でトランスジェンダーのリンコ(生田斗真)との、3人の奇妙な共同生活を描いた人間ドラマ&家族&「LGBT」映画『彼らが本気で編むときは』でした。

   

母親の愛情を生まれてから一度も知らない孤独な少女・トモは、彼女の好きな切り干し大根などの美味しい夕食の手料理やタコウィンナーなどを詰めた手厚いお弁当を作るトランスジェンダーのリンコに対して、母以上に母親の愛と家庭の温もりを感じるトモでした…。108個の毛糸で編んだペニスを海岸で燃やし、リンコは、トモを家族の一員として迎えるために性転換手術を受けて、完全な女の肉体になり、マキオと夫婦になりたいー、トモを養子に迎えようと決心するのだが、再び突然母が戻ってくる…。

 

邦画にもとうとうトランスジェンダーを主人公にする、家族とは「何だ?」という問いを現代に突き付ける近代的家族論から一歩踏み出た映画が公開されたか…と、ビックリしました。しかも、原作小説などなくて、荻上直子監督みずからの脚本のようですーネ、凄い…。

   

この『彼らが本気で編むときは』の制作動機につて、何故今回、トランスジェンダー(出生時に診断された性と自分が認識する性が一致しない人)の問題を正面から取り上げようと思ったのかを、"荻上直子 × 桐谷健太インタビュー"の中で、・・・きっかけはすごく身近な経験というか、疑問で、前作『レンタネコ』(2012年)を撮り終えた後、文化庁の新進芸術家派遣制度でアメリカに留学させてもらったんですね。向こうで暮らすとLGBT、いわゆるセクシュアル・マイノリティの友人が普通に増えていたんです。もちろん環境にもよるんでしょうが、少なくとも私の周りではみんな、構えることなく当然のこととして受け容れていました。それが日本に帰国したとたん、視界からさっと消えてしまった印象があって。『え、これって何なんだろう?』と(疑問に思った)・・・テレビをつけると、“オネエ”と呼ばれるタレントさんがたくさん出演していて。日本でも何となくLGBTが市民権を得たような雰囲気もありますよね。でも、本当にそうなのかなって。で、そんな疑問を抱いていたとき、ある新聞記事を目にしたんです。そこにはトランスジェンダーの息子のため、胸に着ける“ニセ乳”を作ってあげたお母さんの話が紹介されていました。そのお話を読んだとき、自分のなかで新しい映画への思いが膨らんでいきました。トランスジェンダーの人がただ悩んでいるのを描くんじゃなく、ときには傷付きながらも、現実にしっかり生きてる姿を映画にできないか・・・と、きっかけを明かしています。詳細は下記アドレスのインタヴュー記事をお読みください。
http://www.neol.jp/culture/53819/2/ 

 

 まあー、言ってみれば浮気や不倫や離婚やシングルマザーは近代的な家族論を少しはみ出た、近代家族制度独特のトラブル、その手枷足枷に踠いてる男と女と(出産嫡子の)子の永遠のトライアングルの中のドラマですが、「LGBT」の映画『彼らが本気で編むときは』は、また突出した異色の作品でした…。明治の時代背景ならば、政治家や財界人や伝統芸能の師匠など、格式と地位を持つ金持ちの男は「妾」を持つのが当たり前、男は伝統と封建的な「家」を存続する為に、「女」はある意味で家督を譲る男子を出産する道具でもあったーのだがね。現代は未だ封建的家族制度の曲がり角の前にあるといってもいいです。荻上直子監督の他の作品も鑑賞したくなりました。「LGBT」は、その儒教的家族制度に対しての背信、或は、キリスト教文化圏などでは宗教的背徳なのかもしれません…ね。これについては、他の映画も含めてもう少し別の機会にコメントしたいです。

 

マキオ役の桐谷健太のこんな優しい演技を見るのは初めてでした、どちらかというと体格も容姿もがっちりとしていて、男らしい雰囲気でやくざ映画にぴったりのキャラクターですーネ。また、恋人でトランスジェンダーのリンコ役に、まさか二枚目俳優の生田斗真が女装して演じるとは尚更に驚きの名演技でした。もしも11月12月頃に早々公開されていたならば、日本アカデミー賞の助演男優賞に生田斗真を推挙し、荻上直子監督に優秀監督賞をノミネートしても可笑しくないよーナ。

 

蛇足かもしれませんが、チョット男の「ペニス」と女の「ヴァギナ」について、性のお勉強いたしましょう…面白い本をご紹介します。一冊は、『悩み多きペニスの生涯と仕事」(ポー・コルサート著、草思社)で、もう一冊は『ヴァギナ・モノローグ』(イヴ・エンスラー著、白水社 )です。大人のための性教育です、是非ご感想を聞きたいですーネ。



王冠12017-05-27  『ちょっと今から仕事やめてくる (2017年、成島出監督)



ノルマが厳しい広告代理店に大学新卒で入社した青山隆(工藤阿須加)は、部長の山上(吉田鋼太郎)から叩かれ誹られ怒鳴られ罵詈雑言を浴びされて、仕事のストレスは限界に達し、心身共に疲れ果て、意気消沈のタカシは、深夜まで一人続けたサービス残業の帰り、プラットホームで失意のどん底から正気を失い、寸前で電車に飛び込もうと体が線路に傾斜する…。寸前で線路に落ち、はねられそうになる瞬間をヤマモト(福士蒼汰)と名乗る青年に助けられる。明るく活発で屈託のないヤマモトは、タカシの命を支えた…。彼は小学校の幼なじみだと名乗り、仕事に疲弊して絶望の淵を彷徨、命を捨てようとするタカシのドン底の自殺願望を引き止める、そして、ヤマモトは青山との交流を通じて再び生き方を省察させ、生きる目的を探すことを諭し始める。チョット特異な自殺映画の『ちょっと今から仕事やめてくる』でした。

   

この映画は、2015年に第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞した北川恵海の小説を映画化した作品です。丁度、平成27年3月、24歳東大卒、電通に新卒入社した女性社員・高橋まつりさんが月130時間の残業を強いられ、1日2時間の睡眠不足が続き、「これが続くなら死にたい」「死んだほうがよっぽど幸福」と訴えた結果、自殺した事件をこの映画から私は連想しました。
 

広告業界ナンバーワンの「電通」までがブラック企業とは愕然とする…。、どんなに立派な大手企業も、ナント何と、「働く」ことと社員を金儲けのため、会社の利益のたの「道具」と思いこんでいる企業が多いことか…。どんな会社も、社員や非正規社員を会社の働く機械と看做した時に、ブラック企業に転落します。広告業界の企業間の競争も、社内での生き残りのための競争もますます激しいです…。ただ、私も過去に業界紙に身を置いた人間なので、新聞紙面を埋めるために企業をまわり営業したこともあります。或は、広告代理店を廻って企画書を渡しながら広告掲載を依頼していたこともありました…。そんな訳で、タカシと同じような苦労も味わい、失敗もミスも経験があります…ヨ。だから、こんな非人道的でバカらしい広告代理店は、早く辞めてしまえ…!!!と思いました。ホンマニホンマに「電通」って、最低の会社だな!!!

   

映画の終盤で「流山霊園」行の送迎バスに乗るヤマモトを偶然見かけ、ヤマモト純が既に自殺してこの世にいない事実を知ると、もしやヤマモトはこの世にいない「幽霊」ではないのか???と疑い、ネットニュースを糸口に純の来歴を調べ始める。最後に辿り着いたのが、養護施設長の大場玲子(小池栄子)であった。純と一緒に育ったもう一人の「山本純」に瓜二つの兄「山本優」が自殺したことが分かった…。でも最後に、ボランティアで、子供たちに勉強を教える海外の島国「バヌアツ共和国」の学校にヤマモトを追いかけていく青山隆のストーリは、いかにも蛇足だな…と思いました。でもこんな、ブラック企業の餌食にならないために若者を覚醒させ、滅私奉「会社」に疑いも持たない新入社員を増やさない為に、こんな映画は必要なのだろうーヨ。いいタイミングで公開されました。若者よりも、苦い苦しいサラリーマン生活を強いられてきた中高年の方が、この映画に共感する人が多いのではないでしょうかーネ。日本にはまだまだ日本独特の家族的企業精神「年功序列・終身雇用」はとうに崩壊していると思っていましたが、今だ若者を束縛しているんですーネ。


是非、あなたのコメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…


1月上旬特選映画【1】★映画のMIKATA「嘘八百」★映画をMITAKA

$
0
0




遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。いつの間にか1月7日の「七草粥」も過ぎてしまいました。昨今、TVで「今日は七草粥の日ですね…」などという話題を取り上げるニュースキャスターはいなくなりました。こんなことを言う私が古いのでしょうか?でも、古い習慣を守っている格式の高い家庭では未だにお膳を囲んで七草粥を食べる家があるかも知れませんね。芹(セリ)、薺(ナズナ)、御形(ゴギョウ)、 繁縷(ハコベラ)、仏の座(ホトケノザ)、菘・鈴菜(スズナ)、蘿蔔・清白(スズシロ)…の、 春の七草粥をすらすら覚えてる人は未だ絶対にいますーヨ。平安の昔は、寒いこの季節に万病のもとである風邪をこじらせて亡くなる人が多くいたのかもしれません。これを食べて邪気邪悪を祓う呪術的な意味もあったようです。この7種の野菜を包丁で刻んで入れた七草粥を、前日の夜にまな板に乗せて、「七草なずな 唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬ先に、合わせて、バタクサバタクサ…」と囃し歌を歌いながら包丁で叩き、当日の朝に粥に入れ、無病息災を祈願したいたようです。七草の中には解熱効果のある薬草もあるようです…。


毎年のようですが、今年も香川県さぬき市の養鶏場で毒性の高いインフルエンザ(H5N6亜型)に感染した鶏が約9万1千羽が殺処分されたようです。インフルエンザウィルスは大陸より渡り鳥によって日本に運ばれるのですーね。次第次第にウィルスは亜種が出現して「新型インフルエンザ」は、鳥から鳥、鳥から動物、動物から人、人から人へと感染は広がり、死亡する人もいるので恐れられています。

昨今、世の中では「インフルエンザ」が流行しているようです。他人ごとで新春を迎えたかったのですが、私も風邪をこじらせ、毛布の中で唸っていました。38℃を超える高熱ではないのでインフルエンザではなさそうですが、この風邪が原因で「映画ブログ」の掲載が遅くなりました。あー、前置きが長くなりました。


1月上旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、選んだ特選映画1本は、仕方なく『嘘八百』でした。正直言って、邦画2本洋画2本のなかで、これぞという作品がなかったので、仕方なく邦画を選びました。他にあちこちの映画館を除く余裕もありませんでした。「ネイビーシールズ」のナチスの金塊と同じく、利休の茶碗の贋作もまた手垢にまみれた凡庸な素材だろうよ…と呆れました。利休の贋作茶碗では、私にはとても笑えません!!!


1

3月14日の結婚式を3か月後に控えて、式場予約も済ませた尚志(佐藤健)と麻衣(土屋太鳳)でしたが、麻衣が突然、子宮の腫瘍を殺そうとした抗体が脳細胞を攻撃したという、30万人に一人と言う難病を発症、昏睡状態の植物人間になってしまう。1本目は、婚約者が何時眠りから覚めるのも予測がつかないまま、式場を毎年変更しながら回復するのを8年待ち続ける病妻映画『8年越しの花嫁/奇跡の実話』(2017年、瀬々敬久監督)でした。


2017年の映画納めに「8年越しの花嫁」を見ましたが、久々に泣ける人情映画を見ました。8年の長き時間の昏睡から突然に覚醒した麻衣でしたが、懸命なリハビリで身体機能は少しづつ回復した麻衣でしたが、目覚めた麻衣の脳は、過去の記憶を白紙のように消した記憶障害に陥り、尚志が誰なのか、結婚を約束した最愛の人であることもわからない状態であった。

 

何処が嬉し涙を誘うのかと言えば、ラストシーンで記憶は戻らないけれども尚志がベットで昏睡している間に麻衣に送信した携帯画像を見て、彼の深い愛情に応えて、記憶は戻らないけれどももう一度「あなたを愛します…」と囁き、予約した式場で結婚式を挙げる…。麻衣役の土屋太鳳のなんと清楚で美しいことー、こんな美人で性格がいい女性ならば私も8年位ジ~と待てますよ、ウハハハ、ヒハハハ。


病室のベットで生命維持装置の管を付けている土屋太鳳の植物状態の顔の表情と、車椅子に乗りで外を散歩するまで回復した生き生きした顔の表情の違いの、静かな沈黙の演技は素晴らしかったですーネ…!!!


所でーネ、この映画に涙した人はたくさんいたのではないでしょうか…もっともな作品です。でもーネ想像してみてください、若いのに治る見込みもない原因不明で治療の手立てもない難病のため生きているだけで精いっぱいの病人、髪の毛や爪が成長するのに、病院のベッドが生活の場になって老いるのだけの植物人間、そんな病人を支えるために、薬価や入院費や診察料の請求で生活のどん底にいる、世の中から隠れて苦慮している家族たちは、恐らくたくさんいるでしょうーネ。お涙頂だいの夫婦愛&病妻映画は、本当は映画のスクリーンの向こうの病人たちの「社会」についても想像力を巡らしてほしいんですーネ…!!!この難病の麻衣を支えた婚約者や家族の経済が余りに裕福すぎるよな…。それは、ハリウッドの優美でエロチックな演技の向こうに、監督やプロダクション関係者の「セクハラ」があったことなど、誰一人想像できなかったことと同じかな…。


2
千利休の出生地である大阪府堺を舞台に、うだつの上がらない古物商の小池則夫(中井貴一)は、占いの吉の方角を探し、蔵つきの屋敷に住む三流の陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)の案内する蔵にまぼろしの文化財級の利休茶碗の箱を見つける。が、全ては嘘であった。古い蔵のある屋敷も借りもの、蔵の中の茶碗も箱書も古文書の手紙もまがい物で、小池以上の贋物詐欺師であった。茶器のお品書きは本物めいていた、箱は見事に利休当時の箱に似せていた。ただ、茶器そのものがなかった…。そこで、三流の陶芸家・野田がそっくりさんを作る。2本目は、2人は結託して一攫千金の利休の偽物茶器を作るというコメディー映画『嘘八百』(2017年、武正晴監督)でした。偽物は文化財の大御所鑑定士、文化庁の役人までも巻き込んで、古美術商によってまんまと1億数百万円の値段で買いあげられる。


新春そうそうの映画なので、コメディーの傑作を期待していたのですが、ややガッカリしました。千利休にまつわる映画はたくさんありますーネ。趣向は違うが、私は『利休にたずねよ』(山本兼一原作、田中光敏監督、小松江里子脚本)が依然輝く作品と思いました。う~ん…だからね、坂田利夫、友近などのお笑いの顔ぶれを観て、吉本の新喜劇かと錯覚するほどの吉本所属の出演者たちのドタバタ喜劇に、余りにはしゃぎ過ぎた演技と演出だなー思いました。安藤サクラ主演の『百円の恋』の武 正晴監督と脚本家・足立紳の名コンビの作品ですが、余りにバカ騒ぎの作品ではないのかなー?!何を笑っているのか?笑いの先に何か風刺があるのかな?笑った後にペーソスも何も残らない後味の悪い作品でした。こんな喜劇映画は新春早々見たくないものでした。笑いの「質」が落ちている


3

3本目は、どこの国家にも属さないスパイ組織、ロンドンにある高級スーツ店「キングスマン」を隠れみのにしたスパイ組織の根城が、謎の組織「ゴールデン・サークル」によって爆破炎上して潰されてしまうシリーズ第一作「キングスマン」(2014年)の続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017年、マシュー・ヴォーン監督)でした。


キングスマン本部や諜報員の自宅がゴールデン・サークルのミサイル攻撃を受け、エグジー(タロン・エガートン)と、メカニック担当のマーリン(マーク・ストロング)だけが生き残る。今回の作品からキングズマンの主役は、新しい諜報員となったエグジーが活躍する。舞台は、イタリアの山頂にある麻薬密売組織「ゴールデン・サークル研究施設」に向ったり、悪の秘密組織の女ボス・ポピー(ジュリアン・ムーア)のいるカンボジア奥地にある本拠地「ポピー・ランド」に乗り込んだり・・・、ストーリも舞台も目まぐるしく変わり、映画そのものが支離滅裂です。スパイ映画としての推理もアクションもなく、まるでコメディーめいて、ちっとも面白くありませんでした。パート1の「キングズマン」の主役であったハリー(コリン・ファース)は、すっかり記憶を失って、秘密兵器を駆使した敵との激しい銃撃戦も、ダンディーなアクションもバイオレンスもありません、しかも途中からピアノを弾く本物のエルトン・ジョンが登場したり、シッチャカメッチャカで訳解りませんでした。これまでの紳士然としたこの作品独特のスパイの魅力は全くありませんでした。


4

4本目は、ボスニア紛争末期のサラエボに派遣されたマット(サリヴァン・ステイプルトン)が率いるアメリカ軍の精鋭部隊ネイビー・シールズの5人の部隊は、村に隠され湖底に沈んだナチス支配当時に隠匿された重さ27トン総額は3億ドルの金塊を引き揚げ、ボスニア避難民のために役立てようとする戦争映画&アクション映画ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』(2017年、スティーヴン・クエイル監督、リチャード・ウェンク&リュック・ベッソン脚本)でした。


ただの戦争映画に終わらずに恋あり冒険あり、おまけにナチスの金塊が絡んだ映画なので、娯楽性は満点です。が、でもね今更これまで繰り返しドラマに映画に繰り返し素材として使われた「ナチス」の強奪隠匿金塊というのは、リュック・ベッソン原案・脚本・製作にしては、創造性も想像性もないだろうよ…!!! 


是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…


1月DVD特選映画【2】★映画のMIKATA「ナチズムとホロコースト」★映画をMITAKA

$
0
0

(赤文字は既に映画館で、その他はDVDで観賞した作品と映画ブログで紹介した作品です。が、記入忘ればかりで申し訳ありません。映画ブログの中で必ず取り上げています。)

①『ミケランジェロの暗号』(2011年公開、ヴォルフガング・ムルンベルガー 監督)
②『黄金のアデーレ 名画の帰還』(サイモン・カーティス監督、2015年公開)
③『ミケランジェロ・プロジェクト』(2013年公開、ジョージ・クルーニー監督。)
④『アドルフの画集』 (2002年公開、 メノ・メイエス監督)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・映画ブログに掲載

⑤「顔のないヒットラーたち」 (2014年公開、ジュリオ・リッチャレッリ 監督)
⑥「スベャリスト/自覚なき殺戮者」(1999年公開、エイアル・シヴァン監督)
➆『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』(2015年公開、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督)
⑧『愛を読むひと』(2008年公開、スティーヴン・ダルドリー監督、ベルンハルト・シュリンク原作。デヴットヘア脚本)
⑨『ハンナアレント』(2012年公開、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・映画ブログに掲載

星の子供たち」 (2010年公開、ローズ・ボッシュ監督)
⑪「サラの鍵」(2010年公開、ジル・パケ=ブランネール監督)

⑫「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998年、ロベルト・ベニーニ監督)
⑬「縞模様のパジャマの少年」(2008年、マーク・ハーマン監督)
⑭「さよなら、アドルフ」 (2012年公開、ケイト・ショートランド監督)
⑮「悪童日記」 (2013年、ヤーノシュ・サース監督)
⑯「バティニョールおじさん」 (2002年公開、ジェラール・ジュニョー 監督)

⑰『ソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・映画ブログに掲載

⑱「あの日のように抱きしめて」 (2014年、クリスティアン・ペッツォルト監督)

⑲「シンドラーのリスト」 (1993年公開、スティーヴン・スピルバーグ 監督)
⑳「アンナとロッテ」 (2002年公開、ベン・ソムボハールト監督)

㉑「ヒトラーの贋札」 (2007年公開、ステファン・ルツォヴィツキー 監督)

㉒「ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼- (2002年公開、コスタ=ガヴラス監督)

㉓『ワルキューレ』(2008年公開、ブライアン・シンガー監督)

㉔『杉原千畝 スギハラチウネ』 (2015年公開、チェリン・グラック 監督)

㉕『ヒトラー暗殺、13分の誤算』 (2015年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)

㉖『帰ってきたヒトラー』 (2015年公開、ダーヴィト・ヴネント監督)

㉗『奇跡の教室/受け継ぐ者たちへ』 (2014年公開、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 監督)
㉘『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016年公開、スティーヴン・ホプキンス 監督

㉙『ソフィーの選択』(1982年公開、アラン・J・パクラ監督)

㉚『手紙は憶えている』 (2015年公開、アトム・エゴヤン監督)

㉛「わが教え子ヒトラー」(2007年公開、ダニー・レヴィ 監督)

㉜「ディファイアン」(2008年公開、エドワード・ズウィック 監督)
㉝「アイアン・スカイ」( 2012年公開、ティモ・ヴオレンソラ監督)

㉝「善き人」(2008年公開、ヴィセンテ・アモリン監督)

㉞「サウルの息子」 (2015年公開、ネメシュ・ラースロー監督)
㉟『戦場のピアニス2002年公開、ロマン・ポランスキー監督)
㊱『夜と霧』(1955年公開、アラン・レネ 監督)
㊲「灰の記憶」(2002年公開、ティム・ブレイク・ネルソン 監督)

㊳「謀議」 (2001年公開、フランク・ピアソン監督) 

㊴「ナチスが最も恐れた男」(2008年公開、エスペン・サンドベリヨアヒム・ローニング 監督)

㊵「囚われのサーカス」(2008年公開、ポール・シュレイダー監督)

㊷「アウシュヴッツ行最終列車~第三帝国ホロコースト」(2006年公開、 ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー監督)

㊸「消えたその声が、その名を呼ぶ」(2015年公開、ファティ・アキン 監督)
㊹『白バラの祈り』(2005年公開、マルク・ローテムント監督)

㊺「エリート養成機関 ナボラ」(2004年公開、デニス・ガンゼル監督)

㊻「ヒットラー最後の12日間」(2004年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル 監督)

㊼「カティンの森」(2007年公開、アンジェイ・ワイダ監督)

㊽「あの日あの時愛の記憶」(2011年、アンナ・ジャスティス監督)

㊾「誰がために」(2008年公開、オーレ・クリスチャン・マセン 監督

㊿「ブラックブック/ZWARTBOEK/BLACK BOOK」 (2006年、ポール・ヴァーホーヴェン監督)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

51≫「アイヒマンの後継者/ミルグラム博士の恐るべき告発}(2015年マイケル・アルメレイダ監督)

52≫「ナチス、偽りの楽園/ハリウッドに行かなかった天才」(2011年マルコム・クラーク監督)」

53≫「愛の嵐」(1974年、リリアーナ・カヴァーニ監督)

54≫ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』(2016年、ショーン・エリス監督)

55≫少女ファニーと運命の旅』((2016年、ローラ・ドワイヨン監督)

56≫ヒトラーへの285枚の葉書』(2016年、ヴァンサン・ペレーズ監督)

57≫「ローゼンシュトラック」(2003年マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)

58≫「敵こそ、我がとも~戦犯クラウス・バルビー」(2007年ケヴィン・マクドナルド&ケヴィン・マクドナルド  )
59≫「ナチスの犬」(2012年ルドルフ・ファン・デン・ベル&ルドルフ・ヴァン・デン・ベル監督)
60≫「聖なる嘘つき」(1999年ピーター・カソヴィッツ監督)
61≫「マラソンマン」(1976年ジョン・シュレシンジャー監督)
62≫「偽りの忠誠 ナチスが愛した女」(2017年、デビッド・ルボー監督)
63≫「やさしい本泥棒」(2013年ブライアン・パーシヴァ監督)
64≫「狼少女ミーシャミーシャ/ホロコーストと白い狼」(2007年ヴェラ・ベルモン監督)
65≫「シャトーブリアンからの手紙」(2011年フォルカー・シュレンドルフ監督)

 

66≫否定と肯定』(2016年、ミック・ジャクソン監督)

 

67≫ユダヤ人を救った動物園(2017年、ニキ・カーロ監督)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

68≫「SS-GB≪全3巻第1話~第6話≫」(2017年フィリップ・カデルバック監督)










1939年9月1日、ドイツのポーランド侵攻が第二次世界大戦の始まりとされている。9月1日早朝 (CEST) 、ドイツ軍はポーランドへ侵攻。9月3日にイギリス・フランスがドイツに宣戦布告した。1940年5月10日、ドイツ軍は、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランスを侵攻し、西ヨーロッパへの軍事行動を開始しました。ドイツに侵略された欧州の国々のユダヤ人迫害とホロコーストの惨状については、このブログでこれまで様々な作品でご案内してきました。今回DVDで鑑賞した「SS-GB」は昨年日本でもBSで放映されましたが、BSテレビを見れない私は、レンタルショップの棚に並ぶのを心待ちに待っていました。


 この作品では、1940年代のイギリスの歴史を完全にフィクショナルなストーリで設定してあります。「SS-GB」では、1941年2月に英国はナチス・ドイツに降伏し、チャーチルは銃殺され、国王ジョージ6世はロンドン塔に幽閉されました。英国民はドイツ軍の強制収容所に入れられ、ポーランドやフランスのように労働力としてドイツへ連れて行かれました。映画ストーリの核心は、ロンドンで闇物資の取引上のトラブルに関係のある殺人事件が発生、この捜査に当たったロンドン警視庁殺人課の警視ダグラス・アーチャー(サム・ライリー )と、相棒の部長刑事ハリー・ウッズ(ジェームズ・コスモ)と共に捜査を始める。が、ベルリンから親衛隊情報部(SD)の連隊指揮官フートがロンドン警視庁にやって来て、捜査に介入する。抵抗組織の犯罪ではないか―と疑う親衛隊に対して、ロンドン警視庁は政治に中立です…と言いながら、ラストでは、国王ジョージ6世を逃亡させる。



DVD3巻の長編ドラマですが、ストーリの山場がなくて、確かにイギリスがドイツ軍によって侵略されるという歴史の設定は奇抜で斬新なのだけれども、ラストの国王ジョージ6世を車で逃走させるシーン以外、長々と続く映像は退屈そのものでした。


これまで映画館で見逃した「ナチズムとホロコースト」作品、例えばナチスから降伏を迫られたながら激しく抵抗したノルウェー国王ホーコン7世 の3日間を描いた『ヒトラーに屈しなかった国王』(エリック・ポッペ 監督)や、ナチスの戦犯を祖父に持つホロコースト研究研究者のトトと、ナチス犠牲者を祖母に持つザジを主人公にする『ブルーム・オブ・イエスタディ』(クリス・クラウス監督)なども、私はDVDを待っている作品です。最近、妙に«ナチズムとホロコースト»の映画が多いですーネ。何故なのかな…。しかも今この時期に、第90回アカデミー賞作品賞に『ウィンストン・チャーチル
 /ヒトラーから世界を救った男
』(ジョー・ライト監督)がノミネートされています。名優ゲイリー・オールドマンがイギリスの政治家ウィンストン・チャーチルを演じ、首相就任からダンケルクの戦いまでの知られざる4週間を描いた歴史ドラマです。やはり、日本でも昨年に既に公開された、
連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡のフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる映画でした、リストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』 とクロスする作品ですーネ。





来月2月9日から17日間、冬季オリンピック「平昌オリンピック」が開催されます。これに伴い、安倍総理が開会式に出席するかどうか…、北朝鮮の核開発に対して世界中が政治制裁を表明している中で、韓国選手と共に競技枠に参加するとか…、北朝鮮の「美女応援団」モランボン(牡丹峰)楽団が平昌五輪に応援として派遣され華々しくデビューするとか、美人楽団長の「玄松月」(ヒヨン・ソンウォル)が南北会議に出席する…など、日本でも話題が沸騰しています。「平昌オリンピック」のここ数週間のニュースを見ると、スポーツが完全に国威発揚の場になっている、スポーツ選手が政治の場の広告塔に演出されているナ、スポーツが政治宣伝に利用されている…ナ、と、痛感します。2020年開催の東京オリンピックの経済効果が、今から32兆円など皮算用が発表されていますが、もう既に今現在から、東京オリンピックの国内のスポーツへの興奮の裏側で、憲法改正の政治表明が安倍自民党総裁から出されています。完全に、東京オリンピックの経済効果とスポーツへの賑やかな興奮が、政治の隠れ蓑になっていますーヨ。




こんなオリンピックの政治宣伝の現状を見ると、私にはどうしてもナチスが、1936年のベルリンオリンピック大会をプロパガンダ目的に開催した歴史をどうしても想起しました。ヨーロッパとアメリカがボイコットを呼びかけたましたが、オリンピック開催委員の絡繰りで開催された内実は、栄光のランナー/1936ベルリン』(2016年公開、スティーヴン・ホプキンス 監督 )で描かれています。序に是非ご紹介したい映画です。 


1月下旬特選映画【3】★映画のMIKATA「デトロイト」★映画をMITAKA

$
0
0




1月下旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、今月1月は『8年越しの花嫁/奇跡の実話』、『嘘八百』、『キングスマン:ゴールデン・サークル』、『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』、等々通算で8本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、『デトロイト』でした。やはりオスカー作品賞に十分ノミネートされてもイイ映画ですーネ。邦画の『祈りの幕が下りる時』も見応えがありました。TVドラマを制作している監督は、映画監督を超えているのかな…とどうしても思ってしまいます。ドラマの山場と感動に盛り上がる観客の心理を良くつかんでるーナ、と思わざる負えません。正直いうと、年末年始終TV白い番組がないので、竹内結子主演の『ストロベリーナイト』全巻と映画版を次々に、風邪で伏せている布団の中から見ていました。あー、面白いな…、何度見ても飽きがありませんでした。『ストロベリーナイト』の続編を求めます。日本の刑事ものドラマは永遠ですーネ。犯罪の裏に人間と社会の歪みと影が描かれていますーネ。





1

1本目は、天候を自由に操作できる気象宇宙ステーションが何者かの陰謀によって、バラしてしまうと実はアメリカ大統領の側近によって気象コントロールタワーにコンピュータウィルスが感染させられ、地球気象に天変地異を起こす暴走、地球に異常気象を発生させ、地球のあちこちに人類を滅亡させる巨大災害を発生させる地球壊滅寸前の災害を描いた『ジオストーム』(2017年、ディーン・デヴリン監督)でした。


近未来には、科学技術によって地球の気候が宇宙ステーションによって左右できる時代が来るだろうなーと予測できる映画でした。地球温暖化によって南極の氷河が溶け初め、永久凍土が溶解しているー。それによって海水の水位が上がり、地球のある地域や島が水没したり、台風やサイクロンによって自然災害が地球の各地を襲い、日常生活か破壊されています。こんな地球の気候変動と天変地異は、恐らく解決されるのだろう・・・ね。


過去にこんな宇宙から天候を左右する宇宙ステーションが「悪」のテロリストによって略奪されてしまうストーリは既視感がありました。が、そんな予感を裏返して、暇を持て余した映画ファンには楽しい時間が過ごせる作品でした。


2

混雑した駅で体調を崩して蹲り立ち往生していた食品メーカー勤務の川原由加利(長澤まさみ)は、たまたま近くを通りがかった親切な小出桔平(高橋一生)に介助された。それをきっかけに、同棲をはじめた。男女の偶然の出会いと、男の存在そのものがサスペンスめいて謎に満ちた男と女の関係を追いかけた『嘘を愛する女』(2018年、中江和仁監督&脚本、近藤希実脚本)でした。2本目は、5年にわたって愛情あふれる同居生活を過ごし、結婚も夢見ていた恋人を母親に紹介しようとした日に、病院の研究医の恋人・小出桔平は、くも膜下出血で突然倒れ、寝たきりの植物人間になって警察から連絡を受ける。しかし、桔平の所持していた運転免許証も、病院勤務の医師免許証もすべてが偽造されたものであった。今まで自明のことのように理解していた「名前」も「職業」もあやふやで雲をつかむような人格になってしまう。小出桔平は誰なのか…、小出桔平はどんな過去を持っているのか…、謎の人間を求めて川原由加利は、探偵の海原匠(吉田鋼太郎)と共に桔平の素性を求めて瀬内を歩き回る。手がかりは、いつも座っていた喫茶店で書いていた桔平のノートパソコンに残された執筆中の小説と、その中の故郷の風景だけであった。


中江和仁監督という存在はCMディレクターと言う経歴をもった映画監督。しかも初監督作品のようです…。作品も、第1回「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」でグランプリに輝いた作品を映画化したラブストーリーのようです。でもーネ、誰の企画なのか、原作者も脚本家もはっきりしません。近藤希実という脚本家の正体もはっきりしません…。何だかネットで調べれば調べる程、映画の存在そのものが実体の掴めない、まるで映画の主人公の小出桔平のように曖昧模糊とした存在になってしまいました…。

国民一人一人が12桁の番号を持ち、税金、年金、保険、給与などの手続きに「マイナンバ―」で処理されるよって以来、最早、存在の分からない個人の謎など、過去のロマンになりつつあります…。この映画を見乍ら、私は一時代昔の古臭いラブストーリめいた推理小説を読んでいる錯覚になりました。

映画の最後に、桔平の指が動き、意識を回復するシーンで、ハッピーエンドになるのですが、2人の同棲生活はこの先どうなるのかな…???心配したくなりました。長澤まさみ演じる川原由加利の女ごころー、男の過去の全ての謎が解けた後も、尚、ベッドに植物状態で横たわる男の髭を剃る献身的な愛情に、女の心の空洞を埋める男と女の「愛」という異常心理、相互依存の高い愛の幻想に、改めて女の愛は不思議に満ちているナ…と、私の中の女心の謎はますます深くなります。


3

 

東京都葛飾区小菅のアパートで、滋賀県に住む40代女性・押谷道子の腐乱遺体が発見された。アパートには越川睦夫と名乗る男性が同居していた形跡があった。さらに事件は、焼死事件の現場に近い新小岩の河川敷でホームレスの焼死体が発見される。押谷道子の腐乱死体と焼死体事件から、警視庁捜査一課の刑事たちが事件の解明に動き出す。加賀恭一郎(阿部寛)が子供時代に失踪した母・田島百合子(伊藤蘭)が、彼女が失踪後に努めていたスナック「セブン」の客で、女川原発の作業員ジプシーで、彼女の恋人・綿部 俊一(小日向文世)が捜査線上に浮かぶ…。3本目は、明治座の舞台演出家の浅居博美(松嶋菜々子)などの登場人物の縦糸の過去の時間と人生、加賀恭一郎に結びつく横糸の濃密な人間関係が、殺人事件の緊密に絡んだ謎を解きほぐす本格的な刑事もの映画『祈りの幕が下りる時』(2017年、福澤克雄監督、 - 東野圭吾原作『祈りの幕が下りる時』、李正美脚本、主題歌 - JUJU「東京」)でした。
 

私は刑事もののTVドラマも映画も大好きです。はみ出し者の若手刑事・青島俊作役を織田裕二が演じる湾岸署刑事課強行犯係の『踊る大捜査線』(フジテレビ系)シリーズは、あのカーキ色のコートが印象的でした。老齢な刑事役の和久さん演じるいかりや長介の渋い演技がよかったですーネ。一時期を風靡した刑事ドラマの傑作でした。田村正和が演じる古畑任三郎』(フジテレビ系)シリーズもまた、刑事コロンボとシャーロックホームズを足して2で割ったような独特のパーソナリティーと推理は面白い刑事ドラマでした。依然、続編と映画版が制作されている息の長い水谷豊が演じる杉下右京の『相棒』(テレビ朝日系)シリーズは、未だに人気があるようです。刑事もののドラマが、単に殺人事件の謎の解明ばかりを追いかけるのではなくて、事件そのものが警察組織の軋轢や、政治家の絡んだ政治性や、社会的な問題を孕んだ作品とテーマが多くなりました。刑事役に女性が活躍する雪平夏見役の篠原涼子の『アンフェア』(フジテレビ系)シリーズもユニークなTVドラマでした。何よりも、刑事そのものの内面性が描かれる警視庁捜査一課殺人犯捜査係に配属される姫川玲子役の竹内結子演じる『ストロベリーナイト』シリーズ(2013年映画公開、佐藤祐市監督)も面白かったですーネ。阿部寛が演じる加賀恭一郎が一貫して主役の『新参者』シリーズは、犯罪の影に人間の悲しい運命を感じさせる刑事ものになていますーネ。久々に作品に没入して鑑賞しました…。

 

誉田哲也の描く姫川玲子の女刑事、東野圭吾の描く加賀恭一郎

の2作品は、刑事ものドラマの最高傑作です。私はどちらかと言うと、竹内結子主演で映画版『ストロベリーナイト』の続編を見たいです。

4

1967年7月23日から27日にかけてアメリカ合衆国ミシガン州デトロイトで白人優位の街、警察の横暴に対して黒人たちの不満が暴動の引き金となった。暴動は商店の放火、略奪が横行した。その鎮圧のためデトロイト警察、ミシガン州警察、陸軍州兵、地元の警備隊やデトロイト警察が、大挙出動されたが、黒人と警官の衝突と発報で43人が死亡し、1189人が負傷した。2日目の夜、州兵の警備する一角で銃声が鳴いたので、窓際で狙撃の怪しい動きのあるアルジェ・モーテルの別館に武装した地元警備隊が傾れ込み、捜査のためにに入る。黒人青年がモーテルの窓からオモチャの銃を鳴らしたことで、狙撃されたと勘違いした白人警官たちは、そこに居合わせた黒人男性6人と白人女性2人を、人権を無視した暴力的な尋問で建物に拘束、捜査の行き過ぎと人種偏見と、その事実を隠蔽しようと黒人青年を二人射殺した。4本目はデトロイトの暴動と、そのアルジェ・モーテル事件の告発裁判まで映画化した『デトロイト』(2017年、キャスリン・ビグロー監督)でした。


今月初めに開かれたゴールデン・グローブ(Golden Globes)賞の授賞式では、俳優ら出席者が黒い衣装でレッドカーペットに登場しセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に対する抗議の姿勢を示してわだいとなったが、、ニューヨークで開かれた28日の米音楽界最高の栄誉とされる第60回グラミー賞(Grammy Awards)の授賞式では、が音楽シーンをリードするレディー・ガガ(Lady Gaga)からケリー・クラークソン(Kelly Clarkson)、スティング(Sting)、カリード(Khalid)まで多くのアーティストが男女問わず白いバラの花を身に着けて「ジェンダー(社会的性別)の平等」への支持を訴えた。更に、会場にヒラリー・クリントンがビデオで登場、米ドナルド・トランプ政権に関する暴露本「炎と怒り」を朗読した。朗読は、ジョン・レジェンドやカーディ・Bらも参加し、会場を多いに沸かせました。
  https://youtu.be/DjbysQgJ64Y


この「デトロイト」は、アメリカのトランプ政権の人種差別政策への批判から、環境問題よりも経済成長や雇用創出を優先する政策を打ち出したトランプ大統領の経済政策まで引きずった映画ですーネ。石炭産業の復活を掲げたトランプ政治に期待するケンタッキー州や、鉄鋼業が衰退した「ラストベルト(錆びた帯)」と呼ばれるオハイオ州と並んで、ミシガン州デトロイトもまた、フォードなどの自動車産業で活況を呈した町だったが、今は衰退している…。


この作品の最後で教会の聖歌隊に参加してゴスペルを歌うラリー役のアルジー・スミスの讃美歌がよかったですーネ。私は少なくても感動しました。「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー監督に50年前の戦慄の一夜を描く最新作「デトロイト」についてインタビューした下記サイトがありました。
https://gigazine.net/news/20180125-detroit-kathryn-bigelow-interview/


◆映画『デトロイト』の可能性をどのようにお考えですか?


ビグロー:・・・ 芸術(映画)の目的が変化を求めて闘うことなら、そして人々がこの国(アメリカ)の人種問題に声を上げる用意があるなら、私たちは映画を作る者として、喜んでそれに応えていきます。この映画が、少しでも人種に関する対話を促すための役に立つこと、そしてこの国で長きにわたって根強く残っている傷を癒すことができることを願ってやみません。
◆時代背景や土地が違ってもかなり普遍的なことをテーマにしていると感じましたが、監督が今作で一番表現したかったものが詰め込まれているなと結果的に感じたシーンはどこでしょうか。


ビグロー:・・・たくさんあるけれど、最後にラリーがゴスペルを歌うシーンはその一つね。あのシーンは、芸術的精神は、何があっても生き残るんだということを示している。彼にあんなひどい夜を経験させたとしても、アーティストとしての精神は死なないの。あのせいで、彼の人生が永遠に変わったとしてもね。私にとって、それはとても大きな意味を持つことだった。…と述べています。「アーティストとしての精神」というよりも、一人でも人間がこの地上で苦しむ限り、それを癒やす黒人音楽ゴスペルは死なない…と言うことだろうかーナ。もう一つ、映画をこんな風に明確に発言できるというのは素晴らしいですーネ。日本の映画監督には皆無ですーヨ。
 






是非、コメントを一言お寄せください。必ずご返事させていただきます。尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…

Viewing all 323 articles
Browse latest View live